はち
すぐにゲームを始めるのかと思ったけど、先ずはパルム先輩と僕のアルジェ、2Dキャラが並んで挨拶。
背景は取り敢えずアルジェの部屋という設定の壁紙を使う。
これもかなりハイテクで、顔認証をしているデバイスをコラボ相手のパルム先輩とリンクさせるだけで相手の顔もこちらの画面に表示される。
当然あちらにも僕の顔が写っているはず。
そのまま今日の動画について説明したり、雑談。
アルジェが初めてのプレイだって事や、今日はいつものサーバーではなく、新しいサーバーでニューゲーム状態で始める、などを説明。
コメントは初心者ってのでかなり盛り上がってるんだけど、何でだろう?
むしろ初心者って説明の手間とかがあるからテンポ悪いって思われそうなものなのに。
「ふむふむ…早くゲームをするアルジェちゃんをみたいって声も多いから始めようか!」
「はい。パルム先輩、よろしくお願いします」
「任されたよー!」
起動してあったゲーム画面に切り替えて、パルム先輩の立ててくれたサーバーに繋ぐ。
画面の右端に来るようにキャラと見ている人達のコメントが小さく表示される。
このあたりの設定も、初配信の前に社長ちゃんからしっかりと教わった。
ゲームによってはキャラの配置も変えたりするようだけど、基本は見る人から右側に配置するよう言われてる。
とはいえ、一度設定してしまえば会社独自のアプリでオート対応なんだけどね。
少し待つと、一人称視点で広大な草原に放り出された。
試しに入ったニューホープのサーバーとは大違いの景色に圧倒される。
「お、無事に入れたみたいだね」
「はい、えっと、パルム先輩はどこに…」
「今、あなたの後ろにいるの…」
ゾワッとした。
慌てて振り向くと、パルム先輩のキャラが可愛らしくデフォルメされた三頭身キャラが。
「酔いそうなら視点切り替えてね」
事前の打ち合わせでも聞いていたキーボードのキーを叩くと、三人称視点に切り替わった。
「ありがとうございます。振り返った時に少し気持ち悪かったので…」
「初めは結構そういう子いるから、無理しないでね。気持ち悪くなったら遠慮せずに言うように。そのまま配信を終わっても大丈夫だから」
「はい、ありがとうございます」
視点を変えて、尚かつ急激な視点変更とかしなければ余程平気かな。
元々ゲームをしないわけではなかったし。
「このゲームはサバイバル、建築、戦闘、探検と色々とできるんだけど、まずは何をするにも木を切らないと始まらないの」
「あの遠くに見えているやつですか?」
「うん。今回は草原っていうエリアから始まったから、まだ平和だけど…場所によってはモンスターや凶暴な動物もいるから気をつけてね」
「…はい。運が良かったんですね」
「そうとばかりは言えないのがこのゲーム! 敵や動物がいないとそれを倒して手に入れるアイテムは手に入れられない」
「困りますね、どうするんですか?」
「まぁ、まずは木を切ろう」
少し離れた場所に森のように沢山の木が生えてるから、そちらへ移動。
森の中はしっかりと暗く、不用意に入るのがためらわれるくらいに不気味。
「先ずは木を殴ろう!」
「殴るんですか!?」
「初めはそう思うよね」
そう言って笑うパルム先輩。コメントも”本当の初心者リアクション!“って盛り上がってる。
手本だと言ってパルム先輩が木をポコポコと殴りだした。
可愛らしいキャラがとんでもない事をしている…。
真似をして木を殴ると、木に傷がついていく。
「殴って木が削れてますよパルム先輩!」
「そのまま続けて〜」
言われるままポコポコポコポコ…。
やがてすぐ近くからパキパキッと嫌な音がして、ドドーンと地響きが。
びっくりして振り返ったせいで殴っていたターゲットがズレてしまい、木についていた傷がきえた!?
コメントを見ると、“途中で止めちゃうとリセットされるよー”と。
なる程。ありがとうとお礼を伝え、とりあえずパルム先輩の元へ。
「すごい音がしてびっくりしました」
「殴り倒したからね!」
「…パルム先輩は怪力ですね」
「みんななるから!! それよりこの木を見ててね」
言われたとおり倒れた木を見ていたら、パルム先輩がポコポコってまた殴る。
そうしたらまさかの丸太ブロックに…。更に殴ると板目の木材に。
「これ、倒れた木に対して丸太の本数おかしくないですか?」
「あははっ! それ私もはじめ全く同じ事思った!」
「葉っぱは無くなってしまうんですね」
あんなに豊かだった緑の葉っぱは跡形もない。
「葉も回収する方法はあるのだけど、今は無理かな」
「細かいですね」
「うん。でも驚くのはまだまだ早いよ!」
とりあえず自分でも木を殴り倒してみるよう言われて、再チャレンジ。
ポコポコポコポコ…バキバキっドドーン…。
倒れた木をポコって殴ると丸太ブロックに。
「今度は今倒した木を拾い集めて、アイテム欄からついにクラフトだよ」
「タイトルにもなってるクラフトですね」
殴った時とは違うキーを叩くと手持ちに仕舞われた素材が一覧で見える。
「カバンを開くキーはわかる?」
「はい、パルム先輩に教えて頂いたのをメモしてあります」
「偉いねー。みんな聞いた? この子、私の教えた事きっちりメモしてるんだよ?信じられる!?」
「せっかく先輩に教えて頂いた事を忘れたら申し訳なくて…」
「真面目だなー。あいつらに聞かせたい!」
パルム先輩の言うあいつらって言うのは、3期生の人達らしい。
キャラの濃ゆい人達だけに、かなり自由人みたいで、苦労したと愚痴を聞かされたっけ。
パルム先輩曰く、”うちの会社は色んな意味で変態ばっかりだよ“と。
「ま、可愛いアルジェちゃんはそのままでいてね! よし、じゃークラフトを教えるよ!」
「お願いします!」
「何をするにも必ず必要になるのがクラフト台。初めは木のクラフト台を作るよ」
詳しく説明してもらい、さっき切り倒した木から作った木材を4つ並べると完成。
「出来ました。これも四角いんですね」
「そうだね。基本的にキャラクター以外は四角いよ。 完成したクラフト台を設置してみて?」
クラフト台を選んでワールドに設置。
「いいねー。ここからがいよいよ本番だよ!」
なんだかワクワクしてきた。サバイバルやクラフトって難しそうで避けてきてたけど、実際に遊んでみるとすごく楽しいかも。