表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/20

なな



パルム先輩に連れられてきたのは個人用の配信部屋。

二人で入るにはちょっと狭い…。

大人の女性と二人きりで密室とか緊張するけど、今は教えてもう内容に集中しなくては。


パソコンを立ち上げ、ゲームを起動。

そのままキャラスキンの設定や、実際にオンラインに入るところまで見せてもらって、メモを取りながら手順を記憶。

ゲームの内容は先輩達の動画で多少知ってはいるけど、実際にプレイするのは初めてだからちょっと楽しみ。


「えらいね。しっかりメモ取るんだ?」

「記憶力に自信がないので…」

「後輩達に聞かせたいね」

何かあったんだろうか…。


ニューホープのサーバーには物凄い建築物があるみたいで、チラッと見えた。

今はあまり見ないよう言われたから今後の楽しみにしておこう…。

「配信用の通話アプリは大丈夫?」

「はい。そっちは社長ちゃんから詳しく教えていただきました」

「へぇー珍しい。あの面倒くさがりな社長ちゃんが? 相当気に入られてるね」

多分、僕がイレギュラーな存在だからだと思う。

とはいえ、細かいところまでしっかりと教えてもらえたから大丈夫。

メモもとってあるし!

ニューホープが独自に開発している特殊な機材の扱い方もイチから教えてもらったからね。

通話アプリもその一つ。

幼い見た目とは違い、責任感が強く、頼れる大人なんだよね社長ちゃんって。



夕方には会社を出て、暗くなる前には帰宅。

早速パソコンをつけて、プレゼントとして貰ったブロッククラフトをインストール。

キャラスキンも適用したし、後は明日のコラボの時にパルム先輩が作ってくれるオンラインサーバーに入ればいい。

ゲームの起動だけは確認したけど、名前の通り、キャラクター以外はブロック状。

なのに、やたらキレイに見えるのは何故だろうか。

明日が楽しみ。



「アルジェちゃん、おかえり」

相変わらずこよみは僕の部屋にノックもしないで入ってくるんだから。

「こよみ、家でもそのよび方なの?」

「うっかりお兄ちゃんって呼ぶよりいいかなって」

確かにそれは不味い。配信に音声が入ったりなんかしたら大惨事だ。

僕も慣れるように気をつけよう。

うちは元々、近くに飛行場がある関係で完全防音なのはこういう配信にはうってつけらしい。

過去に、選挙カーやらで自宅を特定されかけた人とかもいるらしいから…。


「大丈夫?やっていけそう?」

「頑張るよ。こよみを養わなきゃだし」

「ふふっ、期待してる。 という訳で、はいこれ」

手渡されたのはこよみ愛用のタブレットPC。画面にはカラーで描かれたアルジェの服装バリエーションが描かれてる。

髪型やらも全部違うのはもう脱帽もの。

「因みに全部2Dキャラはできてるし、3Dも着替えられるような設定にしてあります!」

「…仕事早くない?」

「だって楽しくて!」

無理してないならいいけど…。

因みに普通はかなり高額な報酬を払ってママやパパに依頼するらしい。

それがぽんっと払えるくらい、先輩たちは稼いでるって事だよね…。

僕もこよみに払えるよう頑張らないと。ただ、こよみ自身も会社と契約して、アルジェのキャラを用意した分で高額な報酬を受け取ったから、機材で使った分なんてもうとっくに元は取れたって喜んでた。


この服装とかの案は既に社長ちゃんへ全部のデータを送って許可も貰っているらしい。

ただ、暫くは初期キャラで覚えてもらうようにって止められてるそう。

これは僕もわかる。普通は登録者数が一定をこえた記念、とか…イベントの時にとか…。

そういった特別な時に追加されるって話だし。

こよみ曰く、前もって準備しておいたってだけみたい。

「アルジェちゃんならすぐに登録者数も増えるだろうからね!」

そこまで僕は楽観視してないけどね。今はあくまで先輩達の威光を借りてるだけに過ぎなんだから。




翌日はひろみ姉さんから貰っている仕事を午前中に終らせ、午後は色々と前準備の確認の確認の確認…。

シロの時と違って配信にスマホを使わないから、それにも慣れないと。まだ使うのが二回目だし。

会社から支給された機材がいくつかあるけど…そっちも確認しておこう。


一つは大きいから自宅に持ってくるものではなく会社に設置したまま。

一人一つ必要で、床に置く半畳くらいのもの。一度その上に立ってスキャンすると僕の体型やらを記憶する。

一度これをしてしまえば本社の収録スタジオでも自宅でも3Dキャラがぬるぬる動く。


自宅で3D、2D配信をする用の機材は、スマートウォッチくらいの小型サイズ。

2Dの時は、カメラの様に顔へ向けて設置すると、目には見えない網目状のセンサーが僕の顔に向けて照射されているそう。

それが顔の動きを正確に読み取り、キャラの動きに反映させるというハイテクなもの。

因みに、渡された最新のデバイスは顔だけじゃなく上半身…つまり腕の動きやなんかも反映される。

下手に鼻をほじったりしたら大変な事になるな…。

最初期はスマホだったりしたみたいだけど、この機材に変わり、顔だけじゃなく腕の動きまで拾えるように進化してきたそう。

一番の安心点は、スマホカメラで読み取るのとは違い、配信画面にリアル顔が映り込む、なんて言う事故が起こらない事か。

3Dの時は設定を2Dから3Dへ切り替えるだけで対応できるから、本当に簡単。


後は細々としたもので…。スマホもその一つ。通話アプリもニューホープ独自のものがインストールされてるし、会社の人の連絡先は全て入ってる。



どれもニューホープが開発、特許もとっている特殊機材で、会社を辞めるときは返却する決まりだといわれた。

どれくらいお金がかかってるのか想像もしたくない…。壊さないようにしないと。

因みに、もし壊れてもすぐ交換してもらえるそう。先輩に何度も壊してる人がいるとかいないとか…。



ゲームに機材、これでもかってくらい同じ確認をした。

初めてのコラボだし、なにより先輩に迷惑をかけられない…。

「アルジェちゃん、もう少し力抜いたら?」

学校から帰ると当たり前のように僕の部屋にいるこよみに心配されるくらい、僕は緊張してるらしい。


早めに夕食の仕度をして、こよみと先に食べてしまう。

両親にも説明してあるから大丈夫。

「よし…」

「洗い物はしておくよ。 がんばれアルジェちゃん。ママが見てるからね」

そう言って自分のスマホをひらひらさせるこよみ。今日はタブレットじゃなくてスマホで見るって事ね。

身内に見られるのってなんとも言えない複雑な気持ちではあるけど、僕にとってはキッカケをくれたのもこよみだもんね。


「頑張るよ…」

自室に戻り、しっかりと施錠。

うちのお母さんはちょっとおっちょこちょいだから、配信中にガチャっと部屋に来かねない。

そう言って鍵をつけたのもこよみ。

よくわかってらっしゃる。そのこよみだけはキーを持ってるのは何でだろうね?

“中でお兄ちゃんが倒れたら誰が助けるの?”って理由らしい。

倒れた事なんてないのに。心配性だなぁ。


今は17時半。予定は18時からだから、最終確認。

通話アプリも起動して、待機。

動画サイトを見たら、配信を待機してる人が既にすごい数…。

いちじゅーひゃくせん…

「万!? 嘘でしょ…」

”早いねー。寝坊もしてなくて偉いよ“

「あっ…お疲れ様ですパルム先輩」

”お疲れ様ー。ちょうどいいから最終確認ね”

パルム先輩と通話アプリで最終的な打ち合わせをして、いよいよ配信開始。

SNSにも、配信の告知はしたし、大丈夫。


いざ、ゲームの世界へ!





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ