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引きこもりの僕が男の娘ヴァーチャルライバーになった話 ~スカウトされた大手事務所には〇〇しかいませんでした~  作者: 狐のボタン


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よんじゅーご



目が覚めたのは医務室のカーテンで区切られたベッドの上だった。

「あら、起きたみたいね。大丈夫? なにがあったの?」

「あの…それが…」


先生に説明したら大爆笑された。泣くほど笑わなくてもいいと思うのですが…。

「おーおかしい。本当にそんなことで気を失ったりするのね?」

「僕もびっくりしました…」

「あの子達にも注意はしておくけど、アルジェちゃんも慣れなきゃダメよ?」

「妹と姉もいるので免疫がないわけではない筈なんですが…」

「家族とは違うわよ。あの子達、本当にアルジェちゃんが可愛くて仕方がないのね。まぁわからなくはないけど…」

先輩方に可愛がっていただけるのはありがたいけど、なんていうか…身が持たないかも。

なにより僕の存在が先輩達の迷惑になってないのかと不安になる。今まではああいう事をしてても誰も気にしなかったんだろうから…。


「アルジェちゃん。 お姉さんと少しお勉強する?」

先生はそう言って顔を近づけてくるからびっくりして…。

「ふふっ…なんてね。本当に可愛い反応するわね」

からかわれた…。先生も人が悪いです!


「これはあの子達にもいい機会かもしれないわね」

「…?」

「ほら、いくら会社内には殆ど女性しかいないとはいっても、業者だったりの出入りもあるわけだし、何より仕事として外に行くと当然男性もいるでしょ?」

「はい…」

「なのにいつもいつも女同士のノリでいたら困るじゃない」

「先輩方なら仕事は仕事ときっちりこなされてそうですが…」

「そうかもしれないわね。 ねえ…アルジェちゃんは自分がいるせいで…とか思わないようにね」

「…でも…」

僕がいなければああいうノリでも笑って済ませられてたんだろうし…。


「むしろあの子達にはいい刺激だと思うわ。身だしなみに気を使うようになったり、ちゃんとお風呂に入ったりね?」

「お風呂入らないんですか!?」

「そういう子もいるわねー。こんな仕事してるとね、生活がどうしても不規則になるのよ。色々なことを後回しにして配信して、寝て、起きたらまた配信して…ってね。何度気をつけるように言っても聞かないのよ。食事とかも適当に済ませちゃったりするし。今回はアルジェちゃんが色々用意してくれたから本当に助かったのよ。ありがとうね」

「お役に立てたならそれで…」

先輩達、普段から結構無茶されてるんだなぁ…。健康にだけは気をつけてほしい。


「私がアルジェちゃんを叱るとしたら…そうね…。無責任に何人もに手を出して何股もかけた! とか言ったら叱るかもね。それも本人達の同意があるなら私は何も言わないわ」

「そんな失礼なことしません! むしろそんなことしたら追い出してください!」

「ほら、それよ。無責任なことを平気でする人は自分で追い出せなんて言わないものよ。だから大丈夫。私としては、アルジェちゃんの年齢なら誰かと付き合って青春してほしいくらい」

無理です! そんなの考えたこともないのに…。


「会社に気になってる子はいないの?」

「…わかりません。恋愛とか無縁だったので」

一番身近にいて話してたのは妹のこよみだし…。なにより妹を異性としてカウントするのはどうかと思う。本人に言ったら確実に怒るだろうけど。普段から女扱いしろってうるさいからね…。

別に男扱いしてるつもりもないんだけど、妹心も難しい…。



「じゃあ好みのタイプとかは?」

「それもわかりません…。あっ、でも…」

ガタッて後ろで音がして、振り返ったけどカーテンで何も見えない。誰かいるの…?

じぃーっとみてたらカーテンが揺れてる。やっぱり誰かいる!


「だそうよ? みんなチャンスはあるんじゃない?」

「え…?」

先生によってシャーっと開かれたカーテンの向こうには先輩達が…。全部聞かれてた…!?


「わ、私はそういうのじゃ…」

「じゃあパルムは外行ってて…」

「うんうん! パルムゴー!」

「わかった! 認めるから! 仲間はずれにしないでよ…」

「私は弟かなぁ〜。姉として守らなくちゃダメなのぉ」

先輩達はなんの話をされてるのですか…?


「みんなアルジェちゃんが大好きなのよ?」

「えーっと…?」

後輩としてって意味ですよね…?


「それより! さっきなんて言おうとしてたの?」

「はい…?」

「好みのタイプを聞かれた時…」

「あっ…。 えっと…」

「アルジェちゃん言いかけてやめるのはだめだよ?」

えー…。先輩達の圧がすごい。


「そのー…。この会社の人達はみんな優しくて温かくて、大好きです…と」

先輩達がガックリされてしまったのですが!?何が悪いこといいました?

「あははっ。いいわぁ。若い子の恋路とか」

「そういう先生もまだ若いですよね?なんで他人事なんですか! 大人の余裕見せてます?」

「私はいいのよピノ。見てるほうが好きなの!」


ガラガラっと音がして、誰か入ってきたみたい。

「ん?騒がしいな…。医務室で何をしてるんだ」

真っ黒の服にサングラス姿のアトラ先輩。

この声…?それにスラッとしたスタイル。 やっぱりどこかで…。 


あ……。思い出した。


「副社…」

僕がそうボソッと呟きそうになった途端、アトラ先輩にすごい速さで捕まり、口を塞がれ抱えられて攫われた。

え?え?何これ…。

後ろから先生の笑い声と、先輩方の叫び声が…。ここ防音で良かったね。事件かと思われるよ…。


なんて冷静に考えてる場合じゃない。

僕はなんで攫われたの?



アトラ先輩に連れてこられたのは社長室。

医務室と同じ階だもんね…。

「アトラ?ノックもなしにどうしたの。それにアルジェちゃんまで…まさか緊急事態!?」

「はぁ…。どうもないわよ〜」

「…あれ?いいの?」

「ええ。アルジェちゃんにはバレてたみたい」

「うそ!? 何処で見破ったの!?」

やっぱり…。


アトラ先輩…ではなく副社長ちゃんは僕をソファーに降ろしてくれて、サングラスを外す。

「本当にどこで見破ったの?」

「スラッとした背の高さと、声の雰囲気でしょうか…。それもなんとなくでしたけど」

「それだけ!?」

本当になんとなくでしかなかったから、それ以上答えようがないんです…。


「今までバレたのなんてナオミくらいなのよ?」

「ナオミ…?」

「医務室の主よ」

ああ! 先生ってそんなお名前だったんですね。先生としか呼ばないから知りませんでした…。


「ナオミもいい加減とはいえ医者の端くれだからなぁ。そういうのには敏感だよね」

社長ちゃんからの評価がとんでもない事になってますけど大丈夫ですか?先生…。


「ええ〜。でもまさかアルジェちゃんにバレるなんて予想もしてなかったのよ〜」

僕もまさか副社長ちゃんが素性を隠して4期生という中途半端な所に籍を置いてるなんて思わなかった。むしろ立場的には1期生とかでしょ…。


「隠されていたのにごめんなさい…」

「バレてしまっては仕方ないわ。バレない自信があったから驚いたのよ…」

「でもどうして副社長ちゃんが…?」

「元々予定していた子が理由があって契約直前でキャンセルになってしまってね。でも4期生って勇者パーティーって設定じゃない?」

「はい」

副社長ちゃんが設定とか言っちゃうんだ…。その通りなんだけどね。


「美咲は元々声優だったから、急遽穴埋めという形で入ってもらったんだよ」

「いつまでもデビューを遅らせるわけにはいかなかったの。3期生の暴走を止めるにもね」

「なるほど…。え、声優!?」

「あまり売れはしなかったのだけどね…」

やっぱり声優も厳しいんだ…。でも副社長ちゃんは声に関するお仕事のプロだって事だね。すごい…!


でも、4期生を早くデビューさせたかったという話には、なんだか納得してしまった。現在進行形でイベント中に暴れてるマリー先輩がいるから…。

勇者様達の存在が早く必要だったと言われれば頷くしかない。


「早い段階で人が見つかればこっそりと入れ替わる予定だったんだけど、思ってた以上に人気が出ちゃったのよ〜。それで辞めるにやめられなくてね。色々考えた上でクールで無口なキャラにしてたのに」

「美咲が楽しんでるならいいじゃない。私としては仲間にはできるだけやりたい事をやってほしいからね!」

そう言って笑う社長ちゃん。かっこよすぎる…。



「あーまずいわ〜」

スマホを見ながら困り顔の副社長ちゃん。

「今度は何?」

「ピノ達が“アトラがアルジェちゃんを攫った!”って大騒ぎしてるらしいわ」

「あははっ!」

「笑い事じゃないわよ…」

本当にごめんなさい…。


「仕方ないわね。アルジェちゃん?手を貸してくれる?」

「は、はい!」

元はといえば僕のせいだし…。









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