よんじゅーさん
先輩方が集まってたのもあり、一緒に朝食を食べながら僕が休んでいた間の話を聞かせてもらった。
「アルジェちゃんのアルザードが大活躍だったよ。おかげで地上の拠点も取り戻せたからね」
「フレンドリーファイアがいなかったのも大きいよね。制空権をこっちが一方的に取れていたわけだし」
僕がいない間に頑張っててくれたんだ…。たくさんご飯あげてお礼言わないと。
「また同じ事が起きないともいえないから…資源の回収に備えて空中拠点と地下を繋ぐゲートを開いておいた…」
「仮に地上の拠点がまた落ちても、資源だけは集められるってわけ」
「万全なんですね」
「最悪の場合は空中拠点も落ちる可能性があるから、その場合の脱出経路も兼ねてるんだよ。今はピノが地下にも拠点を拡大してる」
色々な可能性を考えて対策がしてあると…。さすがです。
「あと気になるだろうマローネだけど、今のところ動きはないね。顔を見た子もいない。唯一フレンドリーファイアだけはずっと空中拠点の上を飛んでる」
「攻撃は…」
「ないよ。だからアルジェちゃんの説が濃厚だね」
「聞いた時は驚いたけどね! でも納得した!」
「うん…下から見えないところを飛んでて、攻撃してるようにカモフラージュ…あり得なくもない」
やっぱり!
「この戦いも今日の夕方までだから、最後まで頑張ろうね」
「はい!」
先輩方は今日は仮眠も取らずにこのまま配信を続けられるそうで…。
せめて眠気覚ましになればと、紅茶やコーヒーを用意した。
今日からは個人配信部屋になるから、すごく寂しいけど…他にもグループ配信部屋を使いたい人は多いんだからわがままは言えない。
イベント中、最後の食事になるお昼ごはんをどうしようか悩んで、疲れている時には甘いものやフルーツがいいとお母さんに教わったのを思い出して…。
紲さんにお願いしてまたお買い物をしてきてもらい、キッチンエリアで用意した。
「クレープですか!」
「はい。多分皆さんお疲れだと思うので、チョコバナナや他にもフルーツをたっぷり包んでみました」
「家庭のキッチンでクレープ生地とか焼けるものなんですね」
「フライパンで適当に焼いているので、生地が分厚かったりとムラも多いなんちゃってクレープですけどね」
「いえいえ! まさかでした。フルーツの盛り合わせくらいを予想してましたから…」
材料を買ってきてくれた紲さんには本当に感謝しています。
紲さんがまた写真を撮っていたから、先輩方にも伝わって食べてもらえるといいな。
今回は一人分のお皿だけ抱えて、個人配信スペースへ向かう。
紲さんはこのイベントの後に予定している案件の打ち合わせがあるそうで、この後は別行動。
エレベーターを待っていたら一番早いのが下から上がってくる。
キッチンエリアより下っていうと、地下の大浴場とか会社の玄関ホール、来客用の応接室や倉庫くらいだっけ。
もし外部からのお客様だといけないと思い、少し離れて待機。
チーンっと音がして止まったエレベーター。中にはお客様じゃなく見知った方がいてホッとした。
「お疲れ様です、エセル先輩」
「おつかれさまあ〜。アルジェちゃん確保ぉ〜!」
エセル先輩に抱きしめられてしまい、頭が真っ白に…。シャンプーのいい香りと包容力で力が抜ける…。
「せ、先輩!?」
「あのねえ〜。私の部屋に来ない〜?」
「エセル先輩のお部屋ですか!? だ、だめですって…」
「あ、違ったぁ。私達のグループ配信部屋だよぉ〜」
「はい…?」
先輩から詳しい話を聞かせてもらったのだけど、今日はエセル先輩、エリーゼ先輩、僕の同期でもあるヴィオラさんのグループが部屋を取れていると。
三人なのは寂しいよね?と誰か誘おうと探していたのだけど、皆さん既にグループ配信だったり個人配信スペースに籠もられていて中々見つけられなかったんだとか。
そこにたまたま僕が居合わせたから捕まったと…。
「嫌かなぁ?」
「とんでもないです! 一人は寂しいなと思っていたところだったので…。でも僕はなんだかんだとずっとグループ部屋を使わせてもらっているのにいいんでしょうか…」
「部屋をとってる子に誘われたりしてるんだから問題ないよぉ。今回もそうだからねえ〜」
「ありがとうございます」
「ところでそれ、なにをもってるのぉ?」
「クレープです。お昼用にとキッチンエリアに沢山用意してありますので、よかったら…」
「……戻らなきゃ」
「え…! エセル先輩! エレベーターは急には止まりません!!」
”開“ボタンを連打しても止まりませんから!
今移動している階のすぐ上の階を指定して降り、別のエレベーターでキッチンエリアにUターンする為に降りてくるエレベーターを待つ。
エレベーターが3基もあるからこそ出来る事だね…。一つは機材とかを優先して運ぶ大きなものだから、余程じゃなきゃ乗らないように言われてる。
場合によっては工事や業者の方が大きな荷物とかを持って乗ってたりするみたいだから。
それにしても…。
普段のんびりしているエセル先輩が豹変するのを見てしまった…。
「甘いものお好きなんですか?」
「うん〜。そのせいで太っちゃったんだけどねえ…」
「そうですか?包容力があるなーってくらいでは…?」
「かなあ…」
実際にさっき捕まった時に一瞬頭が真っ白になったけど、その後は安心してしまって抵抗するなんて考えもしなかったくらいだったから。
そう伝えたら嬉しそうにまた抱きしめられてしまい、離してもらえなくなった。
「アルジェちゃんは可愛いよぉ〜。ずっと弟が欲しかったから…」
やっぱりエセル先輩も気がついてたんですね…。
「騙すような形になってしまってすみませんでした…」
「うん〜?そんなの気にするような子、ここにはいないよぉ。みんな自分ではないキャラを演じてるんだからねぇ」
パルム先輩達と同じことを言われるんですね。これも一つのプロ意識なんだろうか…。
経験の浅い僕にはまだわかりませんが…。いつか理解できるのかな。
チーンとまたエレベーターの止まった音。
これに乗ってキッチンエリアに降りなくて…は…!?
開いた扉の中にはよく知っているお二人。でも、笑顔から一瞬で修羅のように…。
「エセル!? 何してんの!!」
「ちょーっと話し合おうか?」
「ええー…ピノとパルムが怖いよぉ」
僕も怖いです!! 何かお怒りですか!?
引きずられるようにエレベーターに連れ込まれて、扉が閉まる。
え、ちょ…助けてーー!




