さんじゅうはち
空中にピノ先輩が拠点を作成した影響か、次々と先輩方が集まってきた。
人数が多すぎるから挨拶だけした後、会話はチーム毎に別になってるけど、ちょくちょく話しかけてもらえるのは嬉しい。
食事のお礼とかも言ってもらえたから、皆さんにお昼も食べてもらえたようで何より。
もう少ししたら夕食の準備に行かなくちゃ。社長ちゃんとの約束もあるからね。
でも…僕の命の恩人でもあるドラゴン娘のマリー先輩には未だ会えてない。チームリーダーのサシャ先輩とユリウス先輩は合流したのに。途中ではぐれたまま行方不明で…。グループチャットに返事もしないんだとか…。
お二人は今も探しに行かれている。改めてお礼を言いたかったのにな。
ヴィオラさんのチームも来てないし、まだ会えてないチームの人も半分くらいはいるのかな。
みんな拠点内外を動き回ってるから正確な人数を僕では把握できない。リーダーのメルティ先輩は同盟を結んでるから把握しておられるだろうけど…。
空中拠点に改めて植えられた同盟の木も数が増え、証の傷もそれぞれにつけられている。
あ、これを数えたら人数がわかるのか!
今後ゾンビが強化されたとしても、空中拠点にこれだけ人が増えたなら戦力は十分に思える。
なんせ4期生の勇者様たち御一行も何人かいるから。マリー先輩を探しに行かれているユリウス先輩以外は今も敵の殲滅にと夜なのに地上へ行って、戦闘をしている。
僕がメルティ先輩から任されたのは武器や防具の生産や修理。手が空いたら畑の収穫、と裏方作業。
まだなれてない僕にはぴったりだし、任せてもらえたのが嬉しかった。
定期的に戻ってくる先輩方に供給していたのたけど、勇者様でもあるユリウス先輩が何やら慌てた様子で戻られ、先輩方になにか話してる。
少しだけ聞こえてくる会話から、なにか大変なことがあったんだろうってのは予想できた。
「アルジェ! これから武器防具が大量に必要になる! 大変だろうが頼めるか?」
「はい!」
ユリウス先輩は僕の作業場に寄ってそう言った後、装備を整えてすぐにまた出かけていった。
何があったんだろう…。大変そうなのは雰囲気からわかるけど…。まさかマリー先輩に何かあったとか…?
戦いに行っていたメルティ先輩も戻ってこられたから、武器の補充かな?と思ったら僕のそばに。
「アルジェちゃん…。ゾンビになった時のこと教えてもらえる…?」
「噛まれたときのですよね?」
「そう…」
「えーっと、時間切れが来た途端、ボイスチャット類は何も使えず、キャラが勝手に動いてマリー先輩に噛み付いてしまいました…」
「ふむー…。操作できなかったんだね…?」
「はい。その後、直ぐにパルム先輩が投げてくださった薬のおかげで元に戻ったので、それ以上のことはわかりません」
「わかったよ…。ありがと…」
メルティ先輩はそれだけ言うと、完成した武器防具を収めている箱から剣を取ると、
「マリー! 覚悟しやがれ! この裏切りは高くつくぞ!」
そう叫びながら出かけてしまわれた。
マリー先輩が裏切った…?どういう事だろう。
不安になり、誰かから情報を貰えないかと手の空いてる先輩を探すも、皆さん忙しそうで…。
「何があったんだろう…」
そうつぶやいたら、コメント欄に流れていく一文が目に止まった。
“ゾンビ化したマリーがゾンビ軍団を引き連れて攻めてくる準備をしている!”と。
え…。まさか僕が噛んだせい?絶対にそうだ…。あの時は平気だって言ってたのも僕に気を使ってくれた結果だとしたら…!
もしもに備えて武器防具をラージサイズボックス2つ分一杯にして、薬を作っているはずのパルム先輩のもとへ向かった。
「パルム先輩!」
「アルジェちゃんどしたー?武器防具の材料なくなっちゃった?」
「いえ! それどころじゃないんです! 僕のせいで…」
「うん?なんの話?」
パルム先輩は落ち着いてるからまだ知らないのかな…。
「あっ、もしかしてマリーのこと?」
「ご存知なんですか!?」
「そりゃーね。コメント欄にも流れてきたし、メルティ先輩からも聞いたよ」
「僕のせいでゾンビになってしまったんです!」
「え? それってもしかして地下で噛み付いたときのことを言ってる?」
「はい!」
「あははっ! 違う違う! あいつ、地下で迷子になってね、空腹に耐え兼ねて、手持ちのゾンビ肉を食べたらしいよ」
「…はい?」
確かゾンビ肉を食べたら確定でゾンビ化するってメルティ先輩が言ってた。
「しかも、運営が仕込んでた隠し要素がまさにそこでね? ゾンビ肉を食べてゾンビ化した場合、普通にキャラの操作ができる上に、ゾンビを使役できるらしいんだよ」
なんですかその恐ろしい隠し要素は…。
「今は高笑いしながら大量のゾンビを引き連れて移動してるとか。…まさかとは思うけど戦いに行くつもり!?」
「僕が噛み付いてしまったせいなら助けなくてはと思って…」
「違うから大丈夫。仮にマリーがあの時に感染していたとしても、私が投げたのは範囲用の薬だったから治ってるよ。 単にアイツはこの状況を楽しんでるんだと思う」
「ではどうしたら…」
「武器防具をきらさない様にする事と、アルジェちゃんには強い味方がいるじゃない」
「あっ!」
「そう。もう大きくなったでしょ?」
「はいっ!」
アルザードはアッという間に大きなドラゴンになって、今は城の庭で休んでもらってる。
マローネさんのファイアドラゴン…フレンドリーファイアっていう名前をつけられてるのはコメントしづらいものがあるけど…。
そのフレンドリーファイアをつれてマローネさんも遊撃にでかけたらしい。
「ペットへの指示の仕方は覚えてる?」
「はい! 結構細かいのでしっかりメモしてます」
「えらいね。 じゃあ戦闘指示を出してあげるといいよ」
「わかりました!」
「あ! アルジェちゃんは行ったらだめだよ!」
「え…」
「武具や食料の供給が途絶えたら終わりだからね。任された役割をこなすのも大切!」
「そう…ですね。わかりました!」
パルム先輩の言われるとおりだ。メルティ先輩に任せてもらった仕事を放りだしたらいけない。
広場で待機してるアルザードに細かい戦闘指示をだして、お肉もいっぱい持たせておく。
「お願いね。もしマリー先輩を見つけたら助けてもらえる?」
遠吠えのように吠えたアルザードは広場を飛び立つとすごい速さで飛び去った。
「お知らせがいくつかあるんだよね?」
「はい! パルム先輩。 まず一つ。誤字報告ありがとうございました。助かります。 それと来週はクリスマスの週になりますので、専用のお話になります」
「クリスマスかー。なんか他にも投稿している全てのお話がクリスマス仕様になるとか聞いたよ」
「えーっと何の話ですか?」
「多分、ただの宣伝…かな」




