さんじゅーいち
「アルジェちゃん、男の子でしょ?」
「こらピノ! アンタねぇアルジェちゃんにもなにか事情があるかもなのに、不躾に切り込むな!」
「アホの子はこれだから…」
バレてたの…?うそ…。紲さんも驚いてるみたいだからどこでバレたんだろう。全然わからない…。
「皆さんご存知だったのですか!? 私がヘマをしてしまいましたか…?」
「いやいや。紲ちゃんもアルジェちゃんも何もしてないよ。 これに関しては、説明付けするとしたら“女の勘”だね。 んー例えば…」
パルム先輩は突然ご自身の大きなお胸を腕で持ち上げた。
びっくりして慌てて目をそらす。
「ほら…ね? 昔、同じ事をピノにやったら鷲掴みされたし…」
「当たり前でしょ?あてつけみたいに! どうせ私はちっちゃいよ…。アルジェちゃんも大きいほうがいい…?」
「え…いえ…えっと…」
そういう話題はどうしたらいいかわからなくなるので…。女性とそういうお付き合いをしたこともないですし…。
「ほら…こんな可愛い反応されたら嫌でも気がつく…。女同士だと遠慮もないし…。 アルジェちゃんはこういう時ちゃんと目をそらしてくれる…」
「はぁ…。皆さんを甘く見てました…」
わかってたのに気が付いてないないふりしててくれたんだ。
本当に優しい先輩……。
……あれ?気がついてたのに僕はお風呂とかに誘われてたの!?
えー………。どう思えばいいの!?
「直接対面した子はみんなほんの些細なところから気がついて、順に社長ちゃんへ確認に行ってね。見破ったのなら…と普通に話してくれたよ。始まりは社長ちゃんのミスだった、っていうのもね。そんな訳だからみんなと相談して、気がついてないふりしてようって話てたのに…このバカがいらんことを言うから!」
「いや、でも…ヴィオラのって単なる女の嫉妬だし、違うってわかればてっとりばやくないかな?と」
「まあ…。アルジェちゃんって、パっと見ただけでは男の子だとは絶対にわかんないからね…。 でも、うちの子たちにはない純粋さや初々しさがあるから、そこでわかる…」
「すみません…先輩方を騙すような事をしてしまって…」
「そんなの誰も気にしてないって」
「だよね。アルジェちゃんはアルジェちゃんだし、素直で可愛いのも変わらない! 嫁にしたいのも変わらない!」
「うんうん…。だいたい、ここにいる子はみんな本来の自分ではないキャラを演じてる…。もうどちらが本当の自分かわからなくなってるくらいにね…」
「ですね。私も本名より“パルム”と呼ばれたほうが反応してしまうくらいには同化してますし」
「私はもうピノだから!」
「はいはい。ストーカーのピノね」
「うん!」
「いや、せめてストーカー部分は否定しなよ!」
「まぁそんな訳だから、アルジェちゃんは今まで通りここで過ごしてね…? 変に意識しなくていいから…」
「むしろ私を意識してくれても… いったぁ! パルムのそうやってすぐに手が出るのはやめたほうがいいよ!?」
「未成年だっつってんでしょ。愛でるだけにしときなさい!」
「うんうん…。アルジェちゃんは将来私の嫁にするし…」
「メルティ先輩!? 独り占めはよくないです!」
明るい先輩方に本当に救われます。騙していたのに、何一つ責めもしないなんて…。
「本当にありがとうございます。優しい先輩方にいつまでも隠し事をしているというのはやっぱり後ろめたかったので…。バレてたとわかって、驚きよりもなんだかホッとしてしまいました」
「そっか…! 改めてよろしくね?」
「はいっ! 社長ちゃんからどこまでお話を聞いているかわかりませんが、僕からも話しておきます」
「無理はしなくていいよ?」
「いえ、この際ですし…」
先輩方は言いたくない事は言わなくてもいいから、とそう言ってくれて。
だから僕はここまでの経緯を先輩方にすべて話した。
この年齢で高校に行ってない理由から始まり、料理をお母さんに習った事や、妹に背中を押してもらって実況を始めて…それで社長ちゃんに見つけてもらえたってところまで…。
「嫌な思い出だったのに、話してくれてありがとね。ここでは私達が守るから!」
「可愛いからいじめるとかガキみたいな事を何時までもやってるようなのは相手にしなくていいよ!」
「ちょっと武装して殲滅してきていい…?」
「メルティ先輩のは冗談に聞こえないのでやめてくださいね!?」
「むー。ここでは絶対守るから…」
「ありがとうございます…。でも、僕自身ここにきてから自分の見た目や声が前ほど嫌いじゃなくなりましたから。ここにいると、僕にもできる事があって、認めてもらえる…そう思えたのは皆さんのおかげです」
「そっかそっか! ここだとおっさんみたいな女ばっかりだから幻滅するかもだけど許してね?」
「代表みたいなピノがいうな…。私はおっさん化はしてない…」
「メルティ先輩は武器持っても同じこと言えます?」
「それは…!」
「え、私もピノみたいにおっさん化してる!?うそでしょ…」
「誰もおっさんになんてなってませんよ! 皆さん優しいお姉さんばかりですし…。意識しないように気をつけていたくらいなので…」
妹や姉がいた分、多少なりとも女性に慣れていたからマシだったってだけだし…。
「聞いた!? 意識してたって。よかったぁ…女として自信なくしてたからホッとした」
「というか、ピノは幼女専門じゃなかったの?」
「アルジェちゃんなら全て満たしてくれる稀有な存在じゃない?」
「何でもいいのかアンタは…」
「ちがうね、アルジェちゃんじゃなきゃ無理」
「ピノから守らなきゃ…」
「すみません…。みなさんが今後息苦しくなったりしないよう気をつけます。なので先輩方も今まで通りでお願いします」
女性しかいないからと気を抜いてたりしてた部分もあるだろうし…。そんな安心感を壊してしまいたくはない。
やっぱりここに住もうなんてのは間違いだね。バレてしまっているのならなおさら…。
今回のイベント中、ここで過ごしたのが楽しくて…本来なら自分がイレギュラーなのをわすれかけていた。
「私達だって普段から気をつけてたから。たまにだけど業者で男性の出入りもあるし。みんな化粧だってしてるからね」
「それは歳をごまかすため…」
「メルティ先輩、そこは触れてはダメな一線です。すっぴんでも平気なメルティ先輩にはわからないかもですが!」
「ピノは年下のくせに生意気…。私だって最近はメイクくらいしてる…」
「うそ…。あのメルティ先輩が!? うわ…ほんとだ! メルティ先輩がアイラインひいてるよパルム!」
「最近というか、昨日からですよね?」
「パルムにはバレたか…。少しくらいいいでしょ…」
「悪いなんて言ってませんよ。びっくりはしましたけど」
「事件だよ! みんなに言わなきゃ!」
「落ち着きなってピノ。今は先にやる事があるでしょ?」
「そうだったね。 アルジェちゃん、私達に任せて。ちゃんと解決するから」
「お願いします…。僕にもできることがあったら言ってください」
「言質とった…。行くよ、パルム、ピノ!」
「待ってください、メルティ先輩!」
「騒がしくてごめんね。でも、安心してていいから。戻ったらまた一緒に配信始めよう?」
「はいっ!」
パルム先輩は部屋を出る前に僕の頭をポンポンってして二人を追いかけて部屋を出ていった。
部屋に残されたのは僕と紲さん二人…。
「びっくりでしたね」
「はい…。でもさすが先輩方だなってちょっと納得してしまいました」
「これは前以上に護衛を強化しなくては…」
「え…?」
もうバレてしまってるのなら別にいいのでは…?
違うか…僕が女性の先輩方に何かしないようにっていう監視かも…。
大丈夫。尊敬する優しい先輩方を裏切るような事は絶対にしません!
なによりここへ招き入れてくれた社長ちゃんに顔向けできないもの…。




