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引きこもりの僕が男の娘ヴァーチャルライバーになった話 ~スカウトされた大手事務所には〇〇しかいませんでした~  作者: 狐のボタン


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さんじゅー



朝の時点で大鍋一つ分カラになってしまい、不安になって作り足しておいた。ギリギリ材料も足りてよかった…。


まだ配信している先輩方もいて、全員が食べに来た訳じゃないのに無くなってしまったという事は、絶対に足りないって意味でもある。

もちろん要らないという人も居るかもしれないけれど、足りないよりはいいかな?と。


僕が作っている間、食べ終わった先輩方はお休みになられたり、また配信に向かわれたけど、社長ちゃんだけはキッチンエリアにノートPCとかを持ってきて、お仕事を始めたみたい。

そんな社長ちゃんを探してか、副社長ちゃんもキッチンエリアに。

「社長ちゃん、こんなところにいたの…?探したわ〜」

「美咲! ごめんごめん、ちょっと守らなければならないものができたから、ここで仕事をしようかと」

「えーっと? アルジェちゃんの事かしら? それなら紲ちゃんがいるじゃない」

「私ではご不安ですか!?」

「いやいや。紲ちゃんの事は頼りにしてるよ。私が守ってるのはアレ!」

「アルジェちゃんを“アレ”呼ばわりは失礼よ〜?」

「違う違う! アルジェちゃんが作ってくれてる鍋!」

「ああ〜。この香り…カレーね?」

「朝から一鍋無くなったから、心配になって…」

「あははっ。本当にそんな理由でここにいたの!?」

「美咲も食べたらわかる…」

そこまで気に入ってもらえたのは嬉しいけど、お仕事に支障がないか不安になってしまう。


「気持ちはわかるけど、今日は来客もあるのだからずっとここにはいれないわよ〜?」

「打ち合わせもここで…」

「ダメです!」

社長ちゃんは副社長ちゃんに抱きあげられて、連れて行かれてしまった。ご本人は抵抗しようとずっと暴れていたけど…。



入れ替わるようにキッチンエリアに顔を出した先輩方。

「…さっきの何だったの…?」

「おはよー!」

「お二人ともおはようございます」

メルティ先輩とピノ先輩はもう起きられたんだ。本当に二時間そこそこしか寝てないけど大丈夫でしょうか…。


「うぅ…まだ眠い…」

お二人の後ろからフラフラと歩いてきたパルム先輩はまだ眠そう。

ちょうど調理も一段落して手も空いてたから、コーヒーを淹れて…。

「ありがとう…ちゃんとミルク多めにしてくれたんだね…」

メルティ先輩のは紲さんがいつもミルク多めだったのを見てたから。


「社長ちゃんと副社長ちゃんは何を揉めてたの…?」  

「実は…」

先輩方に朝からの出来事を話していたら、“食べたい!” と言われて、社長ちゃんの置いて行ってくれたナンと一緒に三人にも食べてもらった。


寝起きなのに、こちらが心配になるくらい食べてくれて、嬉しいやら心配になるやら…。

「これは社長ちゃんが見張りたくなる気持ちわかる。このソースも美味しいし、目玉焼きとか欲しくならない?」

パルム先輩もしっかりと目が覚めたみたい。

「わかる! ご飯だったら絶対にほしい!」

「夜にはおつけしますね」


黙々と食べていたメルティ先輩がパッと顔を上げて、僕の手を掴む。

何事!?

「…アルジェちゃん、私の嫁に来ない…?」

「ちょっとメルティ先輩!? アルジェちゃんは私が貰うんです!」

嫁って…。色々と逆な気がします。言えないけど。


「二人とも落ち着いて。アルジェちゃん困ってるから…」

「パルムもそんな事言ってて実は狙ってるんでしょ!?」

「わ、私は…」

「怪しい…」 

「正直に言えー!」

「ピノ、首に入る! 痛い痛い!」

荒ぶるピノ先輩がパルム先輩を羽交い締めにしてて、もう大騒ぎ。


明るくて、楽しい職場だなぁ。皆さん本当に優しいし…。とか考えながら現実逃避してたら新たに通りかかった人が。

「おはようございますヴィオラさん」

「ええ、おはよう」

「ヴィオラさんも朝食にいかがですか?」

「いらないわ」

「そう…ですか…」

みんながみんな朝からカレーを食べられるわけないもんね。

「じゃあコーヒーを…」

「いらないって言ってるでしょ!」

「ご、ごめんなさい…」

そんな怒鳴らなくてもいいのに。なにか悪いことしてしまったかな…。カレー嫌い?


物凄く不機嫌そうなヴィオラさんは冷蔵庫から水のボトルを出すとすぐに立ち去ってしまった。

「何アレ…。感じ悪っ」

「ピノ、言い方!」

「だってアルジェちゃんに一方的に怒鳴り散らしてさ。先輩の私らに挨拶すらないし」

「まだ慣れないだけかもだから、大目に見たら…?」

「メルティ先輩がそう言われるのなら…」

初めてあった時は優しい雰囲気の人だったし、それ以降も顔を合わせてもあんな冷たい人じゃなかった。

やっぱり気がつかないうちに、僕がなにかしてしまったのかも…。


「僕、謝ってきます…」

「アルジェさん、お待ちください!」

「でも…」

「あまり仲間の事を悪く言いたくはないのですが…私にはマネージャー仲間から昨夜からの一連の出来事の報告が来てまして…。もちろん社長ちゃん方も把握しておられます」

「何かあったんだね…。紲ちゃん、説明してくれる?今後どう対応するべきか考えるためにも…」

「わかりました…。ここではアレですので場所を変えましょう」

僕と紲さん、メルティ先輩とパルム先輩にピノ先輩の五人で、キッチンエリアを片付けてからグループ配信部屋へと移動した。



グループ配信部屋のテーブルを囲み座る。

「これからお話する内容は、ヴィオラさんの個人情報になりますので、口外はされないようお願いします」

「それくらいは理解してるよ。でも、問題を解決する為には知らなきゃいけないんだよね?」

「ええ。何も起きなければ私達マネージャーの胸のうちに仕舞っておけば済んだのですが…」

「私達に話すのは社長ちゃんの許可はでてるんだね…?」

「はい。もし何かしらの問題が起きた場合、かかわったメンバーには話をして協力を仰ぐようにと…」

「りょーかい…きかせて…」


「先ずは一番はじめから話さなくてはいけません。 元々アルジェさんのマネージャーである私には社長ちゃんから情報の開示はされていたんです」

「それってアルジェちゃんの同期の二人について?」

「はい。アルジェさんが未成年なのもありますから………」

紲さんが聞いていた情報というのは、僕も顔合わせの時にご本人や社長ちゃんから聞いた話、それに少しプラスしたものだった。


……………

………



「つまり、ヴィオラはバツイチで、別れた理由が家事ができないから?」

「はい。元々料理が不得手のようで、料理のできる女性に旦那様が浮気をし、それが原因で別れたそうです」

「だからってアルジェちゃんに八つ当たりする!?」

「ピノ…ちょっと静かに…」


「今回のイベント、ヴィオラさんはエセルさん、エリーゼさんとチームなんですが…お二人のマネージャーから昨夜の報告が来てまして」

「何かやらかしたの?」

「昨夜、アルジェさんが皆さんに食事を用意してくださり、社内にいたみなさんが頂いたと思うんですけど、ヴィオラさんだけは頑なにいらないと言われてコンビニで購入したものを食べていたそうなんです」

「別に食べる食べないは自由でしょ?そこは問題なくない?」

「食べないのはもったいないよ! あんなに美味しいかったのに」

「ピノはちょっと黙ろうか。話が進まないから」 


「世間でもトレンドに上がるほど話題になり、皆さんアルジェさんにお礼を伝えたりと、社内でもかなり話題になりましたよね?」

「そうだね。アルジェちゃん本人の登録者数やフォロワーも一気に増えたし、会社内での株も上がってるはず」

「ええ。それが気に入らなかったようで、エセルさんとエリーゼさんが配信しながらその話題で盛り上がっていたところ、不機嫌になり配信を突然終わらせていなくなったと…」

「トラウマを抉っちゃったわけか…」

「ただの逆恨みじゃん! 自分ができないだけでしょ」

「ピノ、アンタも私も出来ないんだから。 まあ逆恨みなのは間違いないけど…」

「エセルとエリーゼはどうしたの…?」

「お二人も驚いたようですが、なんとかフォローして配信は続けたんですけど、悪態をついて配信をぶつ切りにしたせいで、ヴィオラさんご本人のSNSが炎上しかけてます」

「配信に悪態を乗せたの!?」

「はい…。直接誰かを名指しで悪口を言われたとかではないのですが、察しのいい方も当然みえますから」

まさか夕食を用意したのが悪い方に働くなんて思いもしなかった。お口に合わない人がいたらごめんなさい、くらいは覚悟していたけど…。



「うーん。解決するにはヴィオラ本人と話すしかないね」

「もう本当のこと話しちゃえば早くない?気がついてないのなんてヴィオラと多分マローネくらいでしょ?」

「ちょっとピノ!」

「なんにせよ、アルジェちゃんは何も悪いことはしてないから責任を感じないようにね…?」

「だね、そこだけは間違いないから。二人のことはしっかりと私達がフォローするよ」

「はい…。でも僕自身もヴィオラさんとお話したいです…」

「それも大事…。でも今は火に油を注ぎかねないから、いったん私達に任せて…?」

「わかりました。ご迷惑をおかけします」

「私達は仲間だって言ったでしょ? もちろんヴィオラもそう。だから任せときなって」

先輩方が頼もしすぎます…。


「あの…。ピノさんの仰られた“本当の事を話しちゃえば”とはなんのお話しですか?もしかしてアルジェさんの事でしょうか」

「あぁもう、ピノのバカッ!」

「迂闊すぎる…」

「どういうことですか!?」

「「「………」」」

まさか…。










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