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引きこもりの僕が男の娘ヴァーチャルライバーになった話 ~スカウトされた大手事務所には〇〇しかいませんでした~  作者: 狐のボタン


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にじゅーきゅう



大鍋に、素揚げした野菜類を入れてからカレー粉を投入。

カレーの香りがすっごいけど、怒られないよね?

「アルジェちゃん、それ、まさか!」

「カレーです。夜にお出ししようかと思いまして…」

「今はもらえない?」

「炊飯器が全部お昼の炊き込みご飯用に稼働してますから…すみません」

ここ、業務用の大きな炊飯器と家庭用の普通のと、合わせて3つもあるんだけど、全部稼働中。元々みんなが料理できるようにと揃ってるんだけど、使う人が殆どいなくて保管されていたのを使わせてもらっている。


「ちょっとナン買ってくる!」

社長ちゃんはそう言うと走っていってしまった。

少し時間をおいたほうが美味しいと思うのだけど…まぁいいか。


「社長ちゃんはカレーとハンバーグ、それとラーメンに目がないんですよ」

「ハンバーグカレーにしたほうがいいですかね?」

「喜ばれるかと…。甘口なんですよね?」

「はい。調整できるようにと、甘口にしてます。辛いのが好きな方にはこちらを用意してきました」

家から持ってきたのは小瓶に入った赤いソース。

「それは…?トマト系でしたら嫌がられますよ?」

「シラチャソースというもので、唐辛子やにんにくの効いた、少し辛いソースです。タバスコよりマイルドで甘辛いので美味しいですよ」

「初めて見ました…」

これ、うちでよく使うんだけど、何にでも合うんだよね。僕の主観だけど…。

マヨネーズと混ぜてもいいし、そのまま何かにかけてもいいし、使い勝手がいい。


気にしている紲さんにも、串にさしたソーセージを渡して、小皿にシラチャソースを出して勧めてみた。

「ホットソースの一種ですので、辛いと感じるかも…少しずつつけてみてください」

「ありがとうございます。   …おいしいです! タバスコは酸味が強すぎて苦手ですけどこれはクセになりそう」

紲さんは残りのソーセージでお皿のシラチャソースを拭うように食べしまった。

「いくつか用意してきたので、辛いのがお好きな方にはかけてもらおうかと思うんですが…」

「いいと思います! そちらのソースは、どこでも買えますか?」

「うちの近くでなら売ってましたけど、この辺はどうでしょうか…」

「調べてみます!」

紲さんはスマホを手に調べ始めた。よほどお気に召したらしい。うちも家族みんな好きだからなぁ。

常に予備をストックしてるくらいに…。



「ただいま! カレーもらえる?」

大きな袋を抱えた社長ちゃんが帰ってきた。

「おかえりなさい。お待ちくださいね…」

カレーの鍋を確認。野菜も一度素揚げしてるから大丈夫なハズ。


深めのお皿によそって手渡したらものすごい笑顔。

こうやって見ると社長ちゃんって本当に年齢がわかんないなぁ。僕より年下に見えるくらい。

近くのパン屋で焼き立てのナンを買ってきたからと、僕ももらってしまい、折角だから一緒に少しカレーの味見。


野菜も柔らかいし大丈夫そう。

「うっまぁ〜…。 カレーは正義だね」

美味しそうに食べてくれて良かった。


僕は少しシラチャソースも足してみる。

「それ何…!?まさかトマト…?」

「トマトは使ってないです。シラチャソースというホットソースですよ。辛いのが大丈夫でしたらどうぞ」

「めちゃくちゃ辛い…?」

「甘辛いくらいでしょうか…。心配でしたら少しだけつけてみるといいかと思います」

社長ちゃんはソースのボトルを手にとると、トマトが入ってないのを確認したいのか、パッケージを見てる。赤いから疑うのはわかります。

それからナンにかけて、一口。

「美味しい…」

それはなにより。


「ありました! 近くに売ってましたよ! ってもう食べてるんですか!?」

「紲ちゃんもハイ…。多めに買ってきたから分けてあげよう」

「ありがとうございます!」

社長ちゃんからナンを受け取った紲さんにもカレーをよそって手渡した。

早速ソースも足してるから、本当に気に入ったみたい。


「すごくいい香りがすると思ったら…アルジェちゃんじゃん」

「お疲れ様です。サシャ先輩」

「お疲れー。昨日は美味しいのありがとうじゃん。もしかして今日も…?」

「はい。カレーは夜の分なんですが、朝から匂いがキツかったですか?」

「ううん。むしろいい香りでつられて来ちゃった…少しもらっても?」

「はい!」

「サシャにもナンを分けてあげよう」

「ありがとうじゃん…って社長ちゃん!? お疲れ様です!」

「お疲れー。ここでは気をつかわなくていいよ。食事くらいお互いゆっくりしたいでしょ」

「はい…」

サシャ先輩にカレーを渡していたら、次から次へと人が増えてきてませんか!?


「朝から何してるのだ!? みんな美味しそうに食べててズルいのだ!」

「ソフィリナ先輩が迷うから遅くなったんですって…」

「マローネが死ぬからなのだ!」

「斬ったのはソフィリナ先輩ですよ!?」

お二人も配信を終わらせてきたらしい。話の内容から察するに、大変だったんだろうなぁ。

他にも先輩方が次々と集まってきてる。もしかして社内にカレーの匂いが行ってしまった!?換気扇をちゃんと回してるのだけど…。



何とか匂いを換気扇の方へ送れないかと、パタパタと無駄なあがきをしていたら、社長ちゃんは食べ終わったのか、とてとてとこちらに来て鍋を覗き込む。

「むむっ…」

「社長ちゃん…?」

「朝の分のカレーは品切れ!! 夜まで禁止!」

「ひっでーのだ…。こんないいによいしてるのに…食べられないのだ?」

「あの…社長ちゃん?」

「アルジェちゃんももう出したらだめ!」

鍋を守るように両手を広げた社長ちゃん。無くなりそうって心配なんですね。

そこまでお気に召してもらえて何よりです。でも…

「もう一鍋仕込んでますから大丈夫ですよ?」

「え?」

「こちらの鍋もあとカレー粉を入れたら少し煮込んで寝かせるだけです」

「それを早く言ってよ…」

「ごめんなさい!?」

「じゃあ新しい鍋は夜まで手を付けないこと! いい?」

「わかりました。でもご飯もナンももうないですけど…」

「仕方ないなぁ。私がポケットマネーで出してあげるから、紲ちゃん?ナンをみんなの分多めに買ってきてあげてもらえる?」

「わかりました!」

社長ちゃんから可愛らしいがま口財布を受け取った紲さんは直ぐにナンを買いにでかけた。


「すっげー掌返しを見たのだ…。マローネ、見たのだ?今の…」

「私にフルのやめてもらえませんか!?対応に困ります!」

「アルジェちゃん。ソフィリナのカレーは無しで」

「横暴なのだ! セクハラなのだ!」

「それを言うならパワハラでは…?」

「マローネ! そんなのどっちでもいいのだ! カレー…」

ソフィリナさん、泣きそうなんですが…。


「社長ちゃん…あの…ソフィリナ先輩にも助けていただいたんです。ですから…」

「何?そんなことを言ってもソフィリナのは… え?ほんとに!?約束?」

「はい。夜に必ず…」

「仕方ないなぁ! アルジェちゃんに免じて許してあげる!」

「アルジェちゃんはカレーの神様なのだー!」

泣きながらすがり付かないでください! 嬉しいのはわかりましたから…。

先輩方も苦笑いしてないで止めてくださいませんか!?


僕が社長ちゃんに何を言ったか…。

“夜にはハンバーグもつけますよ?”って言っただけ。それで許してくれる社長ちゃんは寛大だね!









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