表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/28

じゅーなな



いよいよイベントの開始。

まずはそれぞれ個人で配信開始の挨拶をして、大まかなイベントの内容説明。

殆どのリスナーさんが公式発表の動画なりホームページを見て把握してるとは思うけど、一応ね。

「今日は同じチームになる先輩方と同じ部屋から配信していますから、楽しみなんです!」

リスナーの人達は当たり前にグループ配信スペースを知っててびっくりする。他の先輩の配信で知ってるんだと思うけど、みんなすごい。

「“チームメンバーは誰ですか?”という質問ですが、もうすぐわかりますからお楽しみに! 心強い先輩と一緒ですから」

何人かは的確に予想をしてきてる。パルム先輩は僕の教育係をしてくれているから当てられるのはわかるけどメルティ先輩まで当てるのはすごい…。


「それでは、先輩方と合流したいと思います!」

みんな早く早くってコメントしてるしね。



今回、ゲームにログインすると、チームメンバー毎にランダム位置に配置される。

スタートがどこになるかで、この先の作戦も変わってくる。

一応、スポーン地点だけは安全地帯になっているらしいけど、そこから動いたら…。

ビクビクしてても仕方がないし、通話アプリを先輩方とリンク。


「お、アルジェちゃんいらっしゃーい。声の大きさ確認したいから挨拶してもらえる?そっちも調整してね」

「こんばんわー! アルジェです! パルム先輩のリスナーさん、今日からよろしくお願いします」

「うん、大丈夫そうね! そっちは?」

「大丈夫です!」

会社のアプリだから一目で音量に差があるとわかるのは本当に楽。


「おっと、みんな最後の一人が誰か色々と予想してるね! あたってる人はいるかなー? さぁ我がチームのリーダーの登場でーす!」

「待たせたな…?」

「というわけで、メルティ先輩でした! 結構みんな当ててたね」

「ええ。びっくりしました!」

「ふふっ…二人は私が守る…」

メルティ先輩の音量も大丈夫だね。


「さて、そろそろ現実と向き合いましょうか」

「まさかの地下…」

「初期の配布アイテムに一通りのツールはありますね」

「おおぅ、アルジェちゃんが冷静だ! ほんとだ…これならなんとかなりそ…う?」

「ふっふふ…オラお前らー! とっとと地上を目指すぞ! ついてこい!」

「あっちゃー…早速武器持っちゃったか」

「パルム先輩、急がないとメルティ先輩が行ってしまいます!」

「追いかけるよ!」

「はいっ!」

石製の剣を持って性格が一変したメルティ先輩。

同じ部屋にいると迫力がすごい。背後からヘッドホン越しにでも高笑いが聞こえるんだもんなぁ。


メルティ先輩は薄暗い地下洞窟を行き先がわかってるかのように的確に、しかも後ろをついていく僕たちを気遣いながら進んでいく…。ふらっと現れる敵なんて一刀両断。

必要なものは堀りながら、上へ上へと洞窟をすすむ。


途中、モンスターハウスみたいなエリアにぶち当たり、あふれるゾンビ。

僕とパルム先輩を守るように立ったメルティ先輩は、湧き続ける敵を余裕で倒していく。

でもその先は突き当り…。掘るしかない!


「ここで突き当りだ! 背後は守るから地上へ掘り進めーー!」

「らじゃーです!」

「アルジェちゃん、適応能力高すぎ…。私ついてくので精一杯だったよ!?」

「パルム先輩は沢山資材の確保もしてくださってましたし! 僕はあまり見つけられなくて…」

「それに気がついて止まってくれるあたりいい子だよー」

僕も止まればメルティ先輩が確実に気がついてくれるから…。


「口じゃなく手を動かせー!!」

「「はい!!」」

パルム先輩と、いわゆる階段掘りという掘り方で地上を目指すんだけど、掘っても掘っても地上に出ない。

「私ツルハシの修理するね」

「わかりました! 先輩の後は僕もお願いします」

「了解!」

掘った石があれば直せるからね。色々と掘って集めてくれてたパルム先輩のが当然壊れるのが早い。

てことはそろそろ…


「武器の予備をくれ!!」

「はいっ!」

手持ちから石の剣をメルティ先輩にめがけて投げる。

「ナイスだ、アルジェ!!」

ツルハシも限界だったからそろそろかな?ってカバンじゃなく手持ちに持ってて正解だった。


「アルジェちゃん、交代!」

「はい!」

パルム先輩がおいてくれたままのクラフト台を使ってツルハシの修理。

「メルティ先輩、剣の修理しましょうか?」

「任せた!」

メルティ先輩は追ってくるゾンビ軍団と戦いながらも武器を投げてくれたからすぐに修理。メルティ先輩は掘ってないから修理する材料を持ってないだろうからね。

修理の終わった武器も直ぐにメルティ先輩に投げ返し、パルム先輩に合流して掘る作業に参加。

コメントで、“手持ちに剣を移したのはこのため!?“とか、”タイミングナイス!”って言われて、嬉しくなる。


「アルジェちゃん、しっかりまわりを見てるね」

「パルム先輩が教えてくださいましたから!」

「ふふっ、可愛い上に素直な後輩…いいわぁー」

「先輩! 地上が見えました!」

「おっと…。 私が先に出て周囲の確認するね」

「お願いします!」

外へと繋がった穴から飛び出したパルム先輩は、直ぐに大丈夫だと声をかけてくれた。


「メルティ先輩! 外へ出れます!」

「行け! すぐに追う!」

「はい!」

僕が外に出たあと、追うようにメルティ先輩が。直後にパルム先輩がブロックで穴を塞ぎ、やっと一息。



「開始直後から大冒険だったね」

「でもお二人がいてくださったので心強かったです」

「アルジェちゃんもサポートばっちり…」

メルティ先輩が元に戻った!

「メルティ先輩の武器が壊れるかってタイミングで間髪入れず武器を投げたのはちょっと鳥肌物だったよね!」

「準備してた…?」

「えっと…はい…。自分のツルハシが壊れそうだったので、もしかしたら…と」

「すごっ…まだ初心者だよね!?」

「パルム、この子…弟子にする」

「やめてください!? アルジェちゃんまで武器を持ったら性格変わるようになったらみんな泣きますよ!」

「むー…」

「あははっ」

「ふふっ…」

「あーおかしい! 大変だったはずなのに楽しかったね! よしっ、メルティ先輩、そろそろ仮でもいいので拠点作りましょうか?資材はありますから」

「ん、任せた」

「アルジェちゃんも手伝ってね」

「はいっ!」

また昼間だし、建築する間は雑談しつつのんびりしたもので。

メルティ先輩は拠点周りをぐるっと掘ってて、何してるのかな?と思ったら、あれってお掘りだ!


「相変わらずメルティ先輩は対敵用の対応だけは手早いなぁ」

「だけって…」

「建物とかは作らないんだよ」

「そうなんですか? じゃあ僕達がしっかり作らなくちゃですね」

「うん。 アルジェちゃんは建築も少しは慣れた?」

「そうですね…。でもパルム先輩みたいにすごい速さで積んでいくとかは無理ですし、四角い家くらいしか作れないです」

「お豆腐ハウスだね」

「四角いからですか?」

「そうそう! でも、こうやって…三角の屋根を乗せるだけでもマシになるよ」

「おおー…。屋根付き豆腐…」

「あははっ、何それ!」

少しの工夫でちゃんと家っぽい! 面白い…


「もう中にはいっていい…?」

「大丈夫ですよーメルティ先輩」

メルティ先輩はお疲れなのか、まだガワしかない拠点の中に入っていった。


扉やトーチなどを置いて、明るさも確保。

「仮ならこれくらいでしょうか?」

「そうね…。メルティ先輩と合流しよう」


仮拠点内で、それぞれが拾い集めた物を収納ボックスに入れて確認。

「結構色々と集まってるね」

「ん…普段落とさないようなものを敵がドロップしてたから」

「あーそれで…。野菜類の種とか宝石もありますから、調合台を作れば治療薬も作れそうですね」

「うん。でもいつまでも落としてくれるかはわからないから大切に使おう…」

すごいな。お二人は敵が何を落とすかとかまで把握してるんだ。


その日は仮拠点で畑を作り、野菜の種を植えて食料の確保、暗くなって溢れ出てきた敵がお堀に落ちたのを、メルティ先輩がわざわざ殲滅しに行ったり…。

ゲーム内での一日はそうして終わった。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ