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じゅーろく



朝食後、紲さんに服を選んでもらい、やたら可愛いフリフリのスカート姿になって…。

「アルジェさんのロリータ…最高ですっ!!」

紲さんは大喜びで写真を取りまくってた。今日は色々と紲さんのイメージが変わる日だなぁ…。と、寝転がってローアングルで写真を撮る紲さんをみながら現実逃避。


正直、他の服に着替えたかったけど、紲さんが”せっかく可愛いのにだめです!“って許してくれない。

もう色々と諦めて、そのままグループ配信をする部屋に案内してもらった。

途中でピノさんに見つかり、襲われるんじゃないかって勢いで奇声を発しながら走ってこられて、驚き過ぎて固まっていたら、紲さんがブロックしてくれた。


「可愛いものは愛でるだけにしてください! 触れるのはご法度です!!」

「ものすっごい正論…! じゃあ写真! それはいい?」

「ネットに上げないとお約束いただけるなら」

「やんないよ! そんなのは業界の常識! 私が個人的に使うだけ!」

あの…僕の意思は? 使う…?どういう事でしょう。意味がわからないから誰か説明を…。 そんな思いも無視するかのように廊下で写真を撮りまくるピノ先輩。

ついには寝転がってローアングルから撮りだすものだから、たまたま近くにいたらしいパルム先輩に踏まれた。

「うぐえっ…ちょ…パルム重い重い…死ぬっ!」

「誰が重いだ!! いい加減にしなさい。普通に撮るだけなら見逃したけどそれはアウト!!」

「だからって踏むのはやり過ぎだと思う…ぐえってしたよ!?」

「後輩のスカートの中を撮るのはやりすぎじゃ無いと?」

「うっ…」

「貴女もアルジェちゃんのマネージャーなら止めなさいよ…」

「は、はいっ! すみません…」

止められる訳ないよね。同じことしてたから。

別に撮られてもパニエっていうふわふわのスカートみたいなのでガッチリガードされてるし、そもそも僕のなんか撮って誰得なの?って思うんだけどなぁ。


廊下で騒いでたから、流石に防音がされてるとはいえ人が集まってきてしまい、色々とバレたピノ先輩はスタッフさんに社長室に連行されていった。

「はぁ…。 アルジェちゃんも嫌なら嫌ってちゃんと言わないと」

「はい…。でもビックリして…」

「あーもう純粋かわいいなぁ。 その服もすごく似合ってるよ!」

「ありがとうございます…」

複雑なんですが…。最近はちょっと可愛いと言われるのに慣れてきてる自分がいて、不安になってくる。


「朝からおもしろいことやってるね…。 部屋は確保しといたから行くよ」

「メルティ先輩はいつ部屋の確保したんです? 私が昨日の夜に申請しようとしたときには埋まってましたけど」

「メンバーが決まった通知の直後。受付の開始もそのタイミングだからね」

「流石です…」


お二人と一緒にエレベーターに乗り、向かったのは個人用配信スペースのある階の一つ上。

この階にグループ配信スペースがあるらしく、前にパルム先輩が案内してくれた時には、まだ利用するのは先になるだろうと思って後回しにしてたと教えてもらった。

「丁度いいから説明するね」

「お願いします」

「今のところグループ配信スペースは五部屋で、今も追加する工事が進行中。この三日は工事も止まってるけどね」

「意外に部屋数が少ないんですね」

「初めはテストとして作っただけらしいからね。利用する人が多かったから追加中なの」

なるほど…。多人数のコラボって結構見かけるし、そのときに使っているのかもしれない。

皆さん会社で配信する人も多いって聞くし、3D配信なんかは会社のスタジオを使うのが基本だってきいてる。

家でもできるのだけど、会社のがスタッフの方もいるから、何をするにしても対応が早いからと。

何より最新の機材が揃ってるからっていう理由も大きい。



「今日から明日の朝までは確保してあるから、仲良くやろうね…」

「はいっ! 明日には交代なんですね。やっぱり人気なんですか?」

「うん…。他の子達も一緒にやって仲良くなるいい機会だから…」

そっか、個人用だと会話はアプリでできたとしても、相手の顔までは見えないから寂しくはあるかも。


室内には配信用の設備が六セット壁際に並び、真ん中にはテーブルやクッションがあって寛げるようになってる。

「疲れたらここでゴロゴロしてもいいし、飲食もできるからね」

「泊まりの合宿みたいですね」

「そうそう。だからこういうイベントのときには人気なの」

「お菓子や飲み物等は会社で用意させていただいてますから、後ほどお持ちいたしますね」

「やった! 結構いいもの用意してくれるから期待していいよアルジェちゃん」

「楽しみです!」

「甘いもの…ある?」

「勿論ですよ。メルティさんのお好きなチョコレートも各種揃えています」

「楽しみ…」

そういえば…僕のマネージャーをしてくれている紲さんはいつも一緒にいてくれてるけど、先輩のマネージャーさんは見たことないなぁ…。きっとすごく忙しいんだろうね。

なんせ今回のイベント中にも、別の仕事でしばらく抜ける先輩もいるって聞いてるし。



「じゃあ最終確認するよ…」

リーダーでもあるメルティ先輩の一声で真ん中のテーブルに集まり、大まかな作戦会議。

「どこから始まるにしろ、先ずは資材を集めてね…。二人は拠点用を、私は武器用の物を集めるから」

「わかりました。地底だった場合はどうします?」

「資材を集めつつ外を目指そう。それも難しいようなら一旦地下で拠点を作るしかないね…」

「あの、なにか気をつけることはありますか?」

「なによりゾンビからの攻撃に警戒する事かな…」

「あ、治療用の材料も初めから集めておきませんか?」

「そう…だね。地下で取れる各種宝石が必要になるから、枝掘りが必要かも」

「縦3横2のトンネルを3マス間隔で掘る…でしたっけ」

「そう! 覚えてて偉いよアルジェちゃん」

「初コラボで頑張ってたね…」 

まさかメルティ先輩にも見てもらえてたとは…。


「後は臨機応変に各自で判断して。わからない事があったらいつでも聞いていいから」

「わかりました! メルティ先輩、パルム先輩。これから三日間よろしくお願いします」

「ん。よろしくね」

「生き延びようね!」


ちょうど紲さんが飲み物やお菓子類を持ってきてくれたから、それを頂きながらも色々と作戦が立てられていく。

お二人の足を引っ張らないようにがんばろう…。

「アルジェちゃん、緊張しなくていい…。絶対に守るからね」

「は、はいっ!」

さすが先輩…。お見通しですか。しかもセリフがかっこいい…。









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