きゅー
クラフト台を使って、木の斧やツルハシを作成。
斧は木を切る時に使うと早く切れるらしい。ツルハシは石が掘れる。
「リアルですね」
「こういうツール類は耐久度があって、使っていると壊れるから、都度作り直すのが基本」
「わかりました。使ってみてもいいですか?」
「勿論! まずは木をいっぱい集めて簡易でもいいから家を立てよう。夜になると危ないからね」
「暗いからですか?」
「それも当然なんだけど、モンスターがわくの。ゾンビやスケルトン、爆発するスイーパーなんてのもでるよ」
爆発…!?
コメントをチラッと見たら”先に言ったら駄目じゃん“ってのも。
パルム先輩もそれが目に止まったのか、
「こんなかわいい後輩が爆発に巻き込まれて死ぬのなんて見たくない! みんなもそうでしょ!?」と。
対してコメントは”確かに!“ってのや、”それも醍醐味“なんてのも。
爆発オチとかヤダなぁ…。
とりあえず木を集めるために森の木を切っていく。
何本目かを切り倒したらパキンって音と共に斧が壊れた。
「壊れたら教えてあげた通りにもう一度作るか、修理もできるからね」
「はい。修理のが必要素材が少なく済むんでしたよね」
「その通り。覚えが早いね」
「ありがとうございます」
そんな会話をしていたらスコンっと聞き慣れない音が。
なんだろう?と思っていたら、グサッと痛々しい音と共に赤に染まる画面。
「ひにゃっ!?」
びっくりしすぎて変な声が出た。
「ふふっ、かわいいリアクションするねぇ。森の中みたいに暗いと夜にしか出ない敵が潜んでたりするんだよ」
「先に教えて下さい! イタっ…どこから攻撃されてるの!?」
会話をしている間にもなにか飛んでくるものが当たり、その度に画面が赤に染まる。
画面中央下部に表示されている体力を表す赤いゲージがもどんどん削られる。
「最初から教えたらつまんないでしょ?」
楽しそうに言うのは酷い!
なによりさっきと言ってることが違います先輩!
慌てて森から離れたんだけど、背後からの攻撃が直撃。
真っ赤になった画面には”ゾンビに弓で射抜かれて死亡“の文字が。ゾンビって弓矢使うんだ…。
器用ダナァ…。
「あははっ。 リスポーンしておいでー」
言われた通りリスポーン。
どうやら一番最初に始めた場所に戻ってきたらしい。しかも…
「苦労して集めた木が無くなりました…」
「うん。やられちゃうと、その場にアイテムを落としちゃうの。倒された場所へ戻れれば取り返せるよ」
「その辺は親切なんですね」
「今回はリスポーン地点が近いからよけいにね。遠いと迷ってたどり着けない、なんてこともあり得るから」
たしかにさっき居たのは目の前に見えてる森の近くだし、迷わないけど。
これがあの森の奥、とかだったらたどり着けないかもしれない。
うまく考えられてるなぁ。
「仇は討ってあげたから戻っておいで」
「了解しました!」
走って戻ると、パルム先輩の隣に初めて見る物が。
「これがアルジェちゃん初めてのお墓になります!」
言われたらたしかにそんな形。
「これを殴ればアイテムも回収できるからね」
「なんかちょっと罰当たりですね。自分のお墓ですけど」
「確かに! そういうものだって思ってたからその発想はなかったよ」
そう言って笑うパルム先輩。
お墓を壊すと持っていたアイテムが飛び出てきた。
なんか…墓荒らしをしたようななんとも言えない気分。
でも今は、せっかく集めた素材が無くならなくて良かったと思おう。
「ある程度の木材が集まったら家を立ててみようか。クラフト台を置いたときの要領で木材を設置して、自由に家を作ってみて」
「わかりましたー」
試しに置いた木材を起点にして、まずは四角く壁で囲う。
「室内の高さはブロック三つ分は確保してね」
「はい。では屋根は4段目…」
「そうそう。飲み込み早いな!」
褒められて嬉しくなった僕は7×7、高さ4の見事に四角い建造物を作り上げた…のはいいんだけど真っ暗になった…。
「真っ暗で見えなくなっちゃいました…」
「窓も扉もないからだよ」
そう言いながらパルム先輩が二つブロックを壊して室内へ。
「ここに扉と、後は明かりを置かなきゃね」
扉や窓枠、明かりになるトーチの作り方も教えてもらった。
「窓ガラスは、まだガラスがないから諦めてね」
「トーチで明るくなったのでとりあえずは大丈夫そうですね」
危うく配信画面が真っ暗、なんていう放送事故が続くところだったし。
「そろそろ夜になるからここで一緒に夜を明かすよ!」
「外に出たら危ないんですよね」
「うん。まだ武器も木の棒くらいしかないし、ベッドも作れないから」
夜の引きこもってる間に、ベッドの作り方、食べ物の確保、どのアイテムにも素材違いの上位互換がある事など、色々と教えてもらった。
ベッドは羊やアルパカみたいな動物の毛か、綿花の綿が必要だし、窓ガラスには砂…など…。
メモ帳には教えてもらった内容がびっしり。
後で纏めなきゃ…。と思っていたらドカーーーン! とすごい音。
「ひっ…!」
びっくりして変な声しか出なかったけど、アルジェの顔もしっかり僕の驚きを拾っていたらしく、コメントやパルム先輩から”ナイスリアクション!“と…。
「あれがスイーパーだよ。プレイヤーに近づいて爆発するの」
窓代わりにパルム先輩がブロック一つ分空けていた外で爆発したらしい。
部屋の壁が壊れたけど、すごい速さでパルム先輩が修復。さすが手慣れてる…。
「あれって何のために爆発するんですか!?」
「え?」
「ですから、どうしてわざわざ寄ってきて爆発するんですか?一応生き物なんですよね?」
「あはははっ! その疑問は初めてだわ。確かに何で自爆するんだろ?みんな知ってる?」
無為に爆発して命を散らすモブって意味がわからないよ…。
コメントにも“そういう物としか思ってなかった”とか、”そこ気にする!?“とか…。
でも一つ。なる程…と思ったのは“スイーパーは掃除機とか清掃するっていう意味があるから、世界に対してイレギュラーな存在のプレイヤーを掃除しようとしてるのでは?”って話。
いろいろな人が見てくれているからこそ、こういう意見が聞けるんだなぁと素直な感想を漏らしたら、パルム先輩も…
「本当にそのとおりだね。だからこそ楽しいし、やめられない!」って。
2時間ほどパルム先輩とゲームをプレイして、基本的な事は覚えられた。
ブロッククラフトは会社規模のゲーム内イベント企画もあったりするから覚えておいて損はないと。
2時間があっという間に感じるくらい楽しかったし、初めてのコラボだけど途中からは緊張もほぐれて純粋にゲームを楽しめたのはパルム先輩おかげだろう。
配信終わりに、お礼を伝えたらパルム先輩も楽しかったって。
またコラボしようって言ってもらえたし、見ていた人達も楽しかったってまたおひねりがたくさん飛んでた。
みんな安易にお金を投げ過ぎでは?と思ったのは、僕がまだ慣れないからかなぁ。