基本、攻め手が強いタイプ
今更ながらの登場人物紹介。
家主
大企業グループの末席の末席辺りの会社員。アラサー
年一に海外旅行に連れて行ってもらえる程度の割と良いとこの生まれで、上昇志向がまったくないため、本気を出して努力しないで生きてこれちゃった口。生まれのせいか割りとすごい人が周りに多かったのもあって、負けても相手がすごいのが普通で改善する気が起きなかった負け犬以下。
要領が悪いけど仕事や勉強は(最低限)真面目にする。一言で言えば馬鹿だが補修は受けないタイプ。つい先日まで素人童貞だった。
自分はわりかし強めだが、女性の性欲は『オタクに優しいギャルの家出』程度の、ファンタジック着火剤だと思ってる。
姫様
さる傾国の美姫。この場合傾きが先に来ている。大抵の国で酒が飲める年齢。
周囲にかけられた期待に答える程度には頑張ってきたつもりだったが、本質的には面倒くさがり。幼少期は自分の性別もよくわかってないほどに姫だった。正直周りの人間がどうなろうがどうでもいいと思っているが、面白いならみていたいとも。
周辺国家の地理や経済資源の位置、主要な交易から文化にマナーまで。覚えなければと思ったことは、多少の労力でサクッと覚えてこれた天才タイプで、自尊心は高いけどひけらかすのは疲れるからしない。
一言で言えば家庭の都合で進学を諦めたクラス一の天才少女で。経験人数は国家機密と記されていた。
三大欲求は全部強めで、ごはんはいっぱい食べるタイプ。
姫様とそういう関係になった。
俺は……いや失敬。私は負けてしまったということだ。
彼女の国はこの地球上にはないが、それでも一国の姫に手を出したということになる。しかも亡国の姫という、結婚そのものが国家戦略敵に最大の切り札になるという姫様をだ。いやまぁ何度も繰り返すタイプの謀略もあるが。
最近のエロゲーは純愛もので、他国の正真正銘の姫ってあんまないよな。王位継承者とか高位な貴族とが多いような。そも、EDまで行かないタイプのソシャゲにそういった需要がとられているからだろうか? そんな現実逃避にも似たことを考えてしまう。月からホームステイ来たお姫さまも結局帰ったのを無理やり迎えに行ったっけ。
とにかく、経緯はともかく着地点として合意がある状況でそうなった以上、もはや自分は彼女の拠り所になるのは権利ではなく義務になった。そういうわけだ。
まず考えたのは、あの狭い家からの脱却だ。一先ずなんとなくでまだ持っていた、レトロゲームやら、ゲーセンのプライズフィギュアなど、二束三文でも売れるものは売り払った。
本当に大事なものはコレクションとして持っておきたいが、そうでないものは割と自分でも驚くくらいに輝きが消えていた。であれば、これがまだ輝いてみる人のところに行ってもらいたいのがオタクの人情というものだ。
10年後にどうして手放してしまったと後悔しても、泣きながら集める羽目になっても。それはまた乙なものだ。趣味というのはのたうち回るのも楽しみである。簡単に手に入って終わりではつまらない。
まとまった金というほどではないが、最低限の金はボーナスと残業代とでまかなう形で引越しをした。
さすがに前の家の近所は私基準で選んでいるため治安があまりよくない。というより、野郎の一人暮らし基準の物件の一階に、か弱い姫様を済ませるわけにもいかなかったから。
彼女の希望を聞いて、やや古い基趣はある、2Kの物件でオートロックのものと想定より値が張るところになった。
その結果、さすがに今の給料じゃ無理だと思ったが、それはまぁいろいろあって解決した。親からの仕送りとか、まさかの収入源とか。まぁそれは今は置いておこう。
ともかく新居は共有スペースのキッチン等に、お互いの個室がある作りで、当然今までのように、四六時中彼女がいることもなくなった。
彼女の縮尺や筋力を考えた家具などもしっかり用意したために、わざわざ私を待って食事をとってもらうこともなくなった。同棲からルームシェアになった感じか。それもあって、会社でも給料泥棒から、多少の出世欲がある動きをするようになった。頑張る目的ができたこともあって、上司から表情が変わったと褒められた。
仕事も目標というか、お金を貯めたい目的も理由ものおかげか多少は楽しくなった。
ようやっと一人の安心した時間を姫様が手に入れた以上、欲望に負けた家主である私は、なるべく彼女の負担にならないように。帰る時間も遅く、家を出る時間もはやくするようにした。
一度一線を越えてしまった以上、私の意識的にもブレーキが緩むのは確実であったゆえに。私は姫様を前にした私の理性を信じられるほど耄碌してない。経験が生きている。
彼女が少なくとも私の見る限り本心でこの国に、私の家に居たいと言ってくれているのはわかるが、それでもその選択肢の一つを私がつぶしたのと。彼女が居たいのは【私】の家ではなく私の【家】であることは重々承知しているからだ。
だから、彼女の個室を用意したというのは、私の贖罪でもあったし。この後も彼女の生活を支えるという意思表示であり。まとめてしまうと、言い方は悪いが彼女との一晩の代金代わりの意識がなかったと言えば嘘になる。
まぁ引っ越してからはわざわざビデオ個室に行かなくても、部屋に一人になれるので気が楽だった。生活すべてに彼女の姿がちらついていた前の家の生活ではないために、正常な鎮静化サイクルを組むことが出来た。
元より私は映像や、絵が無くても自分の妄想だけで処理できるスキルは当然習得済みだ。人間としてソロプレイをする上では、有用なスキルをかなり伸ばしているつもりだが、たまには映像と共に、それも自分のコレクションしたもので処理したくなるのが人情。
エロ動画のサブスクはいくつか試したが、あまり肌に合わなかったのだ。毎回変わる海で素潜りをして探すというのは。私は自分の小さな釣り堀で充分だ。
HDDの中のお宝達は映像も画像も全て、姫様と生活するうえで外付けの物に退去してた。一日中家にいれば、そのうち姫様のインターネッツスキルが上がっていくのはわかったので、物理的にカギのかかる引き出しにしまった。つまるところ外付けの物に入れるトラディショナルスタイルだ。クラウドに保管してないのはいろいろな面で安全だろう。
取り出した時代遅れの1TBのそれをつないで、過去15年間で集めて4.3比の映像物もある中から、気分にあったものを見ようとフォルダを開いたら
「え、ない、なんで、全部、消えてる!?」
一瞬で開いたフォルダの中身がごっそりと消えていたのだ。
隣の部屋と付けていたイヤホンから聞こえてきた《《二重》》の悲鳴。
そろそろかと思っていたが、やっといくつか仕掛けたた網にかかったようだ。彼女はイヤホンを外すと、ナイトガウンを羽織って姿見の前に立つ。
いつものと変わらない自分の姿だ。ガウンの隙間から覗くのは、最近知己となった、侍女のようなお友達のような『彼の妹』から貰った、少し大きめの『寝るために着る寝巻き』ではない、『寝る』ために着る寝巻きだ。
彼女に整えてもらった、ミニウルフというらしい、子を生んだ貴人がするような短さの髪を撫でる。水のように抵抗なく指が滑るのを確認する。
彼女より送られた、花の香りがする石鹸やら、化粧水やら等で体は既に磨き上げている。一部の隙もない。さらにはもらった化粧道具で、薄く化粧まで纏っている。臨戦態勢だった。
彼の部屋に置いた収音機を頼らずとも聞こえる狼狽と驚嘆の声。それを耳朶に響かせながら、彼女は自身の部屋を後にして、お互いの部屋から繋がるキッチンへと躍り出る。
彼女の中に燻っているのは言語化が難しい激情だが、大まかなところは怒りであった。
前の住処ではさんざん誘惑した結果手を出した。そう、こちらの誘惑を家主はそれなりの期間耐えたのだ。だがそれは良い、何せ彼には良心があった。
こちらとは体の大きさも文化も背景も随分違う。それによって時間はかかった。
事実、その時は翌日までまともに体が動かなかったこちらを見れば、確かに彼の良心が正しいかったことも、その後暫く躊躇うのもわかるであろう。
だからその後責任をとると、まんまと術中にかかったことも彼女の想定通りだし。手狭な部屋を引き払う事になった際も、彼女の要望通りの部屋に引っ越したことも。
想定よりも大分早く、オフシーズンとやらでスムーズに居を変えることが出来たのも。全ては喜ばしいことだった。
引っ越しまでには、色々と出来事はあったが、念願の個室に暮らすようになった。そこで彼女は違和感に気づく。
そう、家主はあの夜にただ一度こちらに手を出したきりであったことを。
確かにあの夜の後は一気に慌ただしくなった、彼はただでさえ仕事が忙しい中、転居することになったのだ。
そしてこちらので生活が始まったこともそうだ。勝手が違えばなれるまでに時間を要するものだ。
部屋を分けた事により、日々の触れ合いが減った。それは事実だ。
だが、これだけ近い寝室であるのならば、すぐに彼に呼ばれるか、彼から彼女の寝処へ訪ねてくるであろう。《《彼女の常識的に》》そう判断したのだ。何せ彼女の父親は寝室の近くに、最も寵愛する愛人の部屋を置いていたのだから。
それが、全く呼ばれない。深夜に彼の部屋のドアが開いた音でピクリと体が起きるのに、高鳴った動機で鋭くなった聴覚が、そのまま通り過ぎる足音が浴室に向かうのがわかるとモヤモヤとしたものが日々つもるのだ。
部屋の距離は情愛の距離であるというのは、まだ払拭できていない彼女のカルチャーギャップであった。
目覚ましであった彼のスマートフォンが別の部屋になった結果、朝の彼の出勤前に起きることもなくなり。彼女が起きぬけて共有スペースに行けば、冷えかけたトーストが置いてある始末だ。帰りも遅くなったし、不規則になった。
わざわざお土産を買ってくることも減り、節約も兼ねて週末か郵送でのまとめた買い物で、果物などが買われ、自由に食べてよいとされるところに置かれるようになった。
かといって休みの日はその分一緒にいるというわけでもなく、彼女の始めた仕事が土日に時間を多少使うようになった。きつくもないし簡単なものだが、それでも時間はかかる。
結果、彼とのんびりボードゲームやら、雑談をして過ごす時間は少なくなった。
そして問題の夜。重ねて言うが、夕餉をともにする機会も減ったうえに、食事が終わってしまえば、気でも使っているかのように彼はこちらを待つことなく自室に戻る。
適当な所用を作って訪ねに行っても、こちらとの会話を膨らまそうともせず、要件を速やかに処理するだけだ。
彼の書架にある本が読みたいといえば、本と場所を貸すだけで。就寝時間になると部屋までもっていきますと、本を運び出し追い出す。
暇だといえば、話し相手になるが、飲み物が尽きたあたりで部屋に返される。
一緒に映画を見れば、濡れ場のシーンがあろうと特に反応もなく、見終わったらいつものように会話を楽しむべくもなく家事に戻る始末。
最も、行動の多くは一重に彼が、家族以外と同棲したことがない故に、距離の離し方は前の小さい部屋での生活で覚えたが、近づけ方がわからないのが主要な原因なのだが。そもそも。
それでも、これは彼女の心を燃やす程に由々しき事態なのだ。
なにせ、そう、彼は一度姫を抱いたのにである。
その行為によって確かに彼女のこの家での生活は保障された。そういう契約だと、彼女は思っているし、彼もそう考えているのであろう。つまり、そこでイーブンになっている。そういう合意があったはずだ。行動とは言葉より重いのだから。
だが、彼は、この傾国の美姫と称えられる女をただ一度抱いただけで! まるでもう充分だと、飽きてしまったかのように寝処にくる事も、呼ぶこともしなくなったのだ。
望んだところに嫁げるわけもないまま、それでもどんな状況にでも耐えうるように自身の価値を高めて。そして嫁いだ先は祖国への絶対的なパイプにするよう、その相手からは一番の寵愛を受けるようにと。
不承不承ながらもそういった君命を受けて育ち、それに応えられると自信を培ってきた姫を。ただ一晩……ではなく一日抱いただけで、である。
その事に気が付いた際の彼女の屈辱は相当なものであった。
そう、ゆえに彼女は怒りで動いた。色々と手を尽くし、状況を整えた。今回実ったのは、あの大量の裸婦画達を隠しフォルダ属性にして、別のフォルダに隠した件だろう。
勝手に旦那のコレクションを捨ててトラブルになる話は当然、古今東西にあるわけで、彼女も復旧が可能な手段しか講じていなかった。
彼女は全く気づいていなかった。彼から見た彼女は『今は』ただの同居相手でしかなく、であれば、寝処を訪ねる可能性を想定するはずがないことも。
それを当然あるであろうと考えている彼女の認識が、この国でどの様に呼ばれるのかを。
「家主様? いかがなさいましたか? そんな声を上げて」
白々しく内心を覆い隠しながら、心配そうに訪ねて、許可を待つことなく部屋に入る。
「あぅ ちょっと!」
慌てたような声、それも当然だろう、ズボンも下着も膝までおろした情けない姿なのだから。足錠をされたような姿勢で無理やり立ち上がって、こちらに手を伸ばしていたのだろう。見事にバランスを崩して、そのままうつ伏せに倒れる。
「まぁ、家主様、大丈夫ですか」
「あ、いや、その、すみません! すみません!」
丸出しの彼の尻に一瞬目を向けて。彼の観察を続けタイミングを図る。
芋虫のように地面に這いつくばったままでいるのは、今立ち上がると何も着ていない下半身を目の前に晒すことになるからで、その姿勢のまま無理に履こうとしているのは、狼狽しているからだろう。
ゆっくりと彼に近づいて顔の横に立つと、羽織っていたガウンを目の前で脱いで床に落とす。
どこにも恥じらうところもない肉体を彼の前にさらけ出すが、顔だけはしっかりと恥じらっているものを作っておく。先程チークを薄くつけているので大丈夫のはずだ。
「その、如何ですか?」
紅い寝間着は、体を覆い隠すという基本的な職務を放棄しているネグリジェで。言葉をなくして固まる彼をしっかり視界に入れながら、彼を横切って、彼の寝台に腰掛ける。
彼の視線が、首が、ついには体が、自分を追うように動いていく間抜けな様に愉悦を覚えながら。
「どうぞ、こちらに……」
「え、あ、あの」
「これ以上、恥をかかせるのですか?」
そういってほほ笑むと、あっさりと、この策を弄するのに要した時間の1000分の1ほどの時間で、こちらに這い寄ってくる。
立ち上がった彼から肩に手をかけられて、その大きな掌を感じつつ。彼からまるで捕食されるかのように、唇に貪りつかれる。
彼の口から伸ばされた、大きな舌が入ってくるのを感じて、抵抗せずに受け入れる。規格が違う故に口の中すべてが彼のもので埋まり、両の頬を同時になぞられるような甘い痺れがやってくる。
肩に回された手が動き、こちらの髪を愛おし気に梳きながら項のあたりまで延ばされたのを確認すると、彼女はそれに体重をかけるように寄りかかれば、自然と彼もつられてこちらを押し倒すように寝台に右膝をついて寄ってくる。
未だに続いている接吻で、彼から渡される唾液を無理に飲み込んでから、お返しとばかりに顎が外れそうな大きな舌へ自分のそれを絡めてから。えいと足でまだ床についている彼の左足を蹴れば、バランスを崩して何時かの繰り返しのような形の完成だ。
甘くくすぐる痺れで浮かんできた涙を堪えながら、とんとんと彼の肩をたたいて、もう息が続かないのを教えると。最後に名残惜しげに唇を舐め取られてから顔が離れていく。
荒れた息を整えながら、今の行為で恥ずかしくて顔を直視できないという仕草を見せて。顔を背けながらも、くぃと視線を投げかけながら彼の首に腕を回して、顔をよせる。
「明かりを消して」とささやけば。
あとはもう言葉はいらなかった。
切ることを忘れ去られたパソコンのモニター達からの白い光に照らされて、彼女は彼の手中で踊り狂う一晩がはじまる。彼もまた彼女に溺れていくだけなのだから。
最も、彼女がここまで行動を起こしているのは、彼のパソコンに残っていた検索履歴の、『女性 指輪 大きさ 下限』という文言を見たからだというのは。
彼には知る由もなかったのだ。
「一回抱いただけだ、彼女に相応しい男になってその先がしたい」
「一回抱いただけで、もう自分のモノ扱いどころか嘆きの家送りですか!? 男の人っていつもそうですね…!」
とまぁ、はい。どっちもクソボケです。
当初はここまでで最終回だったのですが、間の話を後回しにしたかったので、前話が最終回でした。
後日談になり、熱量のギアが上がっております。その分走る距離も短いですが。
若干時系列が前後しますがフィーリングで読んでいただければ幸いです。
ちょろっと出た妹ですが、次回少しだけ出番があります。
ここ2回の姫様の策謀
・引っ張られて外れる程度にボタンを付け直した。
・家主の服を掴みやすいものにすり替えた。
・彼のバッグから避妊具を回収して、手の届きやすい位置に再配置しておいた。
・賭けに負けるための口実の軍曹を捕まえて隠していた。
・視線を誘導したタイミングで口実を放し、仕込みをもって致命的局面を作った。
・無線マイクを彼の部屋にセットし、HDDのしまってある鍵付きの引き出しを暴いて細工。
・彼の妹から彼好みの衣装を提供させた。




