もしも現を抜かし引越を後回しにしたら
本作を書くにあたって、所謂肉体付きオ●ホ(約7kg)(5桁円)を購入して、
顔手足は100均のバルーンアート用の風船クラフトで調整して、
女児用の中古洋服も下着から購入して
1/1姫様を作って常に体勢やスケール感等を考慮しながら書いてました。
なので、姫様のスリーサイズはその商品の規格と同じということになります。
執筆ははかどりましたが、嵩張ってます。現在進行系で。
ある日いつものように昨晩の余韻を感じつつ朝起きて、朝食を食べて、身支度をして。
今日も給料泥棒頑張るぞと、狭いワンルームの我が家を姫様からお見送りのベーゼを頬に受けながら後にしようとした時。
気が付いたら、森の中にいた。
瞬く間にとは読んで字のごとくで、玄関から外の明るさに一度気持ち長めの瞬きをしたタイミングだったと思う。
「はぇ?」
完全に固まってしまい、握っていたドアノブから指がほどけて、ドアが閉まっていく。
「きゃっ!?」
そう小さい声が聞こえて、後ろを振り向くと、そこにいたのは
「あら、この家は確か……」
まず視界に入ったのは尻もちをついている美女だった。いつの間にか木目むき出しのドアになっていることも、埃っぽい見たこともない部屋になっていることも、全く頭になく。
その美しい女性に思考リソースの全てを奪われた。
つやつやの肌、麗し気な瞳、白魚のような指。暴力的なまでに顔が良い。
可愛いくて、私を魅了してやまない美しい顔。彼女さえいればよいのだとまで思ってしまう。
ドレスの上からでもわかるほどしっかりした肉付きの尻と胸。揉みしだけば指が沈み込むほどの厚さがそこにあった。
「あら、家主様?」
「姫様です……よね?」
そう、立ち上がった彼女の背丈はいまの私と大差無いほどになっており、何度も腕に掻き抱いた腰回りの曲線は角度そのままに伸びており。
はちきれんばかりに実っていた双丘はとんでもないことになっている。
「……もしかして家主様、縮みました?」
「否定はできませんが、私の体感だと、姫様が大きくなっている可能性が高いかと」
何せ、私のYシャツが事実上のワンピースでなくなっており、健康的な御御足が太ももの付け根ギリギリまで見えているのだ。
繰り返すが、胸囲もきつそうで。クリーニング要らずで皺伸ばしをしているように見える。嘘だろあれ紳士物のLだぞ……
彼女はぱちぱちと目を瞬かせて、そのままこちらにゆっくりと歩いてきて私の顔にその美しい手が触れる。いつものように冷たい手を頬で受けつつ、いつもとは全く違う触られる領域の広さに戸惑うが、その悪戯気な撫で方が彼女のそれだ。
少し冷静になった私は周囲を見渡す、彼女も釣られるように私から視線を外して、何かに会得が行ったように声を漏らす。
「やはり、この家は以前の」
「……なるほど」
ここで私は、持ち前の経験という名の知識で結論をはじき出した。というよりも彼女と話しているうちに、トリガーが不明な以上有り得ると想定はしていたというのが正しいか。
「今度は私が呼ばれたというパターンですね」
異世界召喚されたけど、最後に元の世界に帰った主人公に付いて行ったお相手というと。伝説の宗教団体及び感染者団体の主流派閥が思い出される。やけに軽い体と周りの良い頭でそう納得すると。
彼女の手が目元周りや、首元とどんどん広範囲を広げている。そんなに触るところがあるのだろうか?
「家主様?」
「おそらくもう、家主ではないかとは思いますが、はい」
「ああ、やはりそうなのですね」
そう、つまりは────
「姫様の世界に来てしまったと」
「私の世界に転生してしまったと」
どうして姫様の方が、テンプレな回答になるのだろう。いや確かに同行者が要るのならば隕石かガス爆発パターンも濃厚だが。
ともかく、そう。私が居るのは彼女が我が家に来る直前に居た、謎の小屋である。たぶん。
さて、事実上ダイナミック退職届をぶん投げてたあと、まずは状況を落ち着いて整理することとなった。
まず、姫様に関しては
「何故か家主様の服が小さくなった以外に、何も変わってません。でもいつもより調子が良い気がします」
とのことである。前までは良い勝負だった、私の指1本での腕相撲では歯が立たなくなっていた。つまり、ほぼ確実に元の体のサイズに戻ったというわけで
「そうですね、そうなるかと」
まぁ、元の世界に戻ったら、それはそうなってしかるべしだ。もともと付けていた耳飾りはずっと縮尺が変わっていないのに、私の服だけサイズが据え置きなのは、もしかすると転移のポイントが我が家のクローゼットだったからとかそういう理屈だろうか?
そして私はというと
「なんか、体が軽いです」
「別に大きくもなっていないようですね」
なんかすごく体調がよい。肩こりもなければ腰痛も和らいでいる。
失われし10年が戻ってきた感覚だ。その多くは仕事にいかなくて良くなった精神的高揚な気がするが。
「この家は、確かにあの時逃げこんだ家です」
彼女がそう言いながら指をさすと、そこら中の床には埃が積もっているが。一部に姫様の靴と同じ足跡が残っている。履いて踏んでもらった時に私の肌にできたものと同じだからわかる。
これが示すことは
「戻ってきたようですね」
原因も不明、理由も不明。結局彼女が我が家に来た理由は全く分からずじまいだった。そんな僥倖に甘えて生きてきて、その結果思いが通じ合ったりもした。
その後は、完全に私がお猿さんになってしまっており、貯蓄を少しずつ減らしながら、将来のことなど考えずに、あの狭い家に二人で暮らしていた。
それがまた、今度は姫様の世界にこんにちわというわけだ。
これはもう、確率的には目覚まし時計がプールの水流で完成したのではないだろうか?
「少なくとも、数日以上は経っております。私の足跡にも埃が積もっておりますから」
「直ぐ様に追われているということはないわけですね……数ヶ月ってとこだと思いますし、世界同士でそのまんまの時間が経過してるかんじですね」
我が家のあらゆる場所で埃を積もらせた経験なら、充分以上にある私の見立てはそう大きく違わないだろう。
忘れがちだが、一応姫様は亡国のお姫様である。最近はそういうプレイをするための姫要素とかしていたが、革命をおこした民衆に追われているという、よくあるテンプレファンタジー異世界より、数百年タイムテーブルが進んでいるイベントが起きている不思議なところの。
「追手ということでしたら、そもそも私の顔を知るものはそこまで多くないのです」
「なるほど」
貴人の顔を見るのは失礼とかそういうやつであろう。指紋とかDNA鑑定もない以上、同一人物かの認定は、知人を介することになるだろうし。
魔法があったら知らん。ステータスとかそういうの。
「貴人の証の手入れされた長い髪も、今はばっさりと切ってしまってますし」
「その節はすみません……」
誰かに頼るわけにも行かず、市販の道具だけ勝ってきて、見様見真似で私が切ったのだが正直大分ひどいことになった。結局姫様が最後に整えていた。妹にだけでも相談するべきだったか。
「この格好はさすがに、下腹部が落ち着きませんね」
かろうじて下着が隠れる程度に、Yシャツを着ているのみの姫様はまごうことなき彼シャツであり、普段ならば大変興奮するのだが、今は横においておくしか無いだろう。
「改めて状況を考えましょう」
そう切り替えるように姫様が言う。いつもより背丈が大きいためか。より様になっているように見える。ただでさえ美しく立派なのに、輪をかけている。
「現状、お互いまた着の身着のままというところですね」
「まぁ確かに」
今私はYシャツとスラックスに、仕事用のカバン(衛生用品と水筒と筆記用具)くらいのみだ。いや、下着一式をだいぶ前に入れたっきりで鞄の底にあるがそれだけか。
スマホは圏外で会社で充電できるのでモバイルバッテリーすら持ってない。電波時計は電波を探し始めて上を向きっぱだ。チートはついてなさそうですね。
元の世界にPCやらなにやら多くの物を置いてきたが、今の私は彼女と一緒にいれない方がつらい、だから後悔なんて全くな……な…いや、姫様と将来いい感じの家に暮らしたりするために、頑張ってためていた残業代が無に帰したのは、正直切れそうだ。
あと家族に会えないのも多少は辛いか。
「その為、まずは先立つものを確保しましょう。ここは別に私の家でもありませんし。仮にこの家に戻る『何か』があるとしても、条件などはわかりませんから」
「そうですね」
別に彼女の家でもない、ボロ小屋にしか見えないただの掘っ立て小屋だ。恐らく1年の内一部のシーズンしか使わないタイプの場所なのだろう。毎週土曜日に洋食屋につながる扉でも開けば助かるのだが。いやあれじゃ帰れないんだったか。
「なのでまず。あの夜の逃避行の際に行けなかった、王族が知る隠れ家に行きます」
「そこも包囲されてたと言ってましたよね」
たまに彼女の故郷の話を聞く機会はあったから覚えている。
「進路を塞がれていたので向かえなかっただけです、見つけるのは難しい場所にあります。仮に見つけても、私にしか開けない鍵もありますので」
「なるほど」
まぁ王族の隠れ家で、あと魔法もある世界だし、血統とかに反応する魔法やら結界でもあるのだろう。そういうもんだと思う。
元よりファジーな頭だったのに姫様との経験が生きて、既に悟りでも開いているかのように、状況を受け入れることが出来る。
「念のため、移動は夜にするべきですので、それまではこの家で休んでいましょう」
「まぁ、姫様にお任せします」
土地勘も常識も資金もなにもないのだ。そもそ姫様以外と言葉が通じるかすら怪しいぞ。即急に確認するべきかと思う。
今困っていないのは、もし姫様が日本語を完全に習得してそれをしゃべっているから。とかだとしたら、もう自分の耳すら信用できないという少しホラーな状態になる。
なぜファンタジー異世界の言語で自己意識の形成まで悩みが飛躍するのか、やはり自分でも混乱しているようだ。こういう時は姫様の小さくも美しい肢体でも見て落ち着きたいが。
「家主様?」
「あ、いえ」
目の前にいるのは、自分とほとんど身長が変わらない、ゴージャスなお姫様である。同じものを見ていたが、今までのが等身大フィギュアだとしたら、今のは、本物という程に存在感が違う。
何より恰好が問題だった。私のYシャツの胸元をはち切れんばかりに持ち上げているせいで、恐ろしいことに寸胴のような体型になっている。首にネームカードを掛けるとへそに触らないタイプということか。どんな理屈だ。まるで意味が分からない。
「隠し部屋にある多少の資産を回収したら、そうですね。南西の方に山岳地帯で、家でも買って暮らしましょう。湯治などに利用される温泉地ですので、ある程度人の流動もあります。ですのでお忍び貴族の振りでもすれば不審がられませんし、代筆業でもやれば十分食べて行けるでしょうから」
「そんなに見つからない物なんですか?」
ものすごい勢いで計画を立て始める姫様。頼るしか無いので、頷くしか無いのだが、そんなにうまくいくのだろうか。
「ええ、私の顔を知る物なんて、傍使えは死ぬまで抵抗し続けるでしょうからもう死んでいるでしょうし。突き上げしてきた者たちでも、王である父や継承者の兄はともかく。殆どは遠目で見たことがある程度でしょうから。何度も申し上げますがこの国では、貴人は髪の長さがステータスですので」
「まぁ、バッサリ行ってますすからね」
「ですので、ゆっくりお話ししましょう。最近、お引越しに向けてお金を貯めるとおっしゃってましたから、あまり話せてませんでしたし」
「まぁ、2LK以上の家を計画してましたからね」
姫様にそう言われれば断れない。既に秋になったが、まだクールビズなわが社ではジャケットも着てないので、適当なタオルを椅子に敷いてエスコートする。
自分はつい癖で床に座ってしまう。しかし今は同じ体格なので、普通に彼女の足の少し上あたりに視線が来てしまう。いや、太ももも太いな……眼福だ。
「それで、家主様はお気づきになられておりましたか?」
「…んぇ? 何を? ですか?」
かろうじて下着を隠しきれてない程度しかないYシャツ1枚の彼女の足に視線が完全に奪われてしまう中、質問に何とか答える。あ、この下着は来るときにはいてたやつだ。なんて再発見を得ながら。
「いえ、どうやらまだのようですね。私が、厳密には王家が国を追われた理由です」
「……貧乏だったからじゃないんですか?」
あまり詳しくないが、姫様は、周辺に峡谷が並ぶ小国の姫で、婚約というカードで外交をしてるという、ストラテジーシミュレーションのストーリーモードでありそうな立場だったはず。
現実でも女王陛下の国の偉大な女王陛下が似たようなことやってるし、勝手に納得してたが、特別な理由でもあるのだろうか。
「簡単に申し上げますと、祖父の世代が簒奪者なんです」
「なるほど」
ま、まぁ歴史を紐解けばその手のことはあるであろう。正統後継者ではないものがさくっとライバルを事故に見せかけたりするのは。
海を挟んでお隣の世界の中心の国も、それを防ぐ為にいろいろな方法を試していたし。秘密立儲とか。
「それで人気がなかったので、他派閥に追われたと」
「あ、いえ。周囲には一切バレないようになり替わりましたので」
「ん? 魔法的なものですか?」
「ある意味では、はい」
王位簒奪を、誰にも気づかれずに!? できらぁ! とはすぐに言えない気がする。でも替え玉が入れ替わって王様になる話って、最近すごい流行ったような気が。いけない、どんどん思考が変な方向に。
意識を集中させるため、一度姫様のその名の通りのふとももに目線を向けると。姫様は、いたずらっぽく、目の前に座っている私の太ももをフットレスト代わりに足を置いてくる。役得だ。
「まんまと王になった祖父は、息子、つまり父にもなり替わりをさせまして。その結果、優秀だった祖父はともかく、おこぼれで王になった父は凡庸で、代替わりしてからはだんだんと上手いこと行かなくなっていきまして」
「それで姫様の婚約者を作ってという流れですか」
まぁ、血統で支配者が決まるシステムは、代替わりのたびに、指導者特性が変わって、安定した戦術が取れないことは多い。戦略とか国家の主義とかは安定するけど。っていうのはシミュレーションゲームでよくあった。
「……まだ、お気づきでないようですね」
「いや、納得はしましたが」
これ以上何を気づけというのだろうか、似たような歴史をたどった国があって、実はお互いの世界が一部リンクしているんだよ!! みたいなことではないと思う。
散々話してのどが渇いたであろう彼女に、鞄から水筒を取り出して渡す。前までは持つのに苦労してた重さだが、楽々受け取っているのを見て。本当に状況が変わったんだとふと納得してしまう。
一通り嚥下する姫様の喉の小さな動きを目に焼き付けてから外を見れば、先程より太陽がだいぶ低いところにある。出勤の時間だったので朝だと思っていたが、夕方だったようだ。時差かなにかがあるのだろうと適当に納得することにする。
「……ねぇ、家主様」
「はい、姫様」
いつもよりもどこか砕けた声音でそう言われると、むしろこっちは畏まってしまう。なにかやってしまったのか、何かを欲しいのか。そんな疑心があったりなかったりもする。
「今後なんてお呼びすれば良いでしょう?」
「……あぁー、そうですね。ご自由にどうぞとしか、貴方でもお前でも」
習慣か文化なのか、姫様が私の名前を呼ぶことを閨で以外聞いたことがない。私に最初名乗ったのは家名みたいなものだと、閨を共にした時にようやく本名と共に明かしてくれたくらいだ。
まぁうちの国の将軍様もなんか沢山呼び方あったし、そういうものだろう。三男の新之助さんとか。
「はい『あなた』」
「……おっと、では一度だけ失礼して。わかりました『おまえ』」
思わずそう返して、二人で笑い合う。またなにかに影響されたのだろう。でも、私も少しだけ不自然にそう返せた。それがどこか嬉しかった。
こんな状況になっても、彼女といれば変わらずに楽しいのだと再確認が出来て。
「もうすぐ逢魔時ですね、出立の準備をしましょう」
「はい。ところで一晩走った距離を歩くんですよね」
残念なことに革靴で、ここは山である。憂鬱な気持ちになるがぼやいても仕方がない。
「いえ、あなたの世界では使えませんでしたが、実は得意な魔法があるんです」
そう言いながら姫様は立ち上がって部屋の反対側へとゆっくり歩いて行く。窓までたどり着くとくるりと振り向き。ふわりとシャツの裾が捲れて下着がちらりと見える。
「ああ、でも飛行魔法は出力は足りないから出来ないと言ってましたね」
教養だか、護身用だかで少しだけ使えますと言っていたのを思い出す。というかどういうタイプの魔法形態なのだろうかこの世界。
「ええ。でも散々絞らせて『貰い』ましたから、蓄えが充分に。今ならあなたを抱えながら飛べると思います」
「それはすごい」
空を自由に飛びたいな。それは高所恐怖症でない日本人すべての夢だ。欲を言えば明るいうちが良かったが。それはまた今度で良いだろう。
今後の楽しみが増えたななんて思うと、姫様は再びこちらに背を向けてYシャツのボタンを外し始める。いきなりのストリップに裸にならないと魔法が使えないのかなんて考えが浮かぶが、全てのボタンを外してはらりと彼女が脱ぎ捨てた時に見えた『ソレ』に私の視線は釘付けとなった。
「あなたの世界では、隠すどころか現すことも出来ませんでしたから、久しぶりです」
「え、あの、姫様……?」
「ふふっ、本当に、にぶい人」
そんな彼女の言葉が耳を抜けていく。
最早何度目かもわからない彼女に見惚れて動けない私だが、今回は事情が違う。私の視線は、背中をはみ出して脇の下から見える双丘の端に固定されているわけではないのだ。
それよももっと、見るべきものがあった。
「私の得意魔法は『魅了』です。一度に数人にしかできませんが。あの激動の夜はただの側仕えを命さえ捨てる忠臣にできました。『魅了』なんて闇魔法は覚えてるはずないと思ったのか、当時の私の拙い魔力でも充分でした」
黒い『それ』は彼女の意思を表しているのか、笑いを堪えるかのように小刻みに震えながら。それでいて独立した生命のように蠢いていた。
「ま、まさか……姫様の言う簒奪って」
「あ、やっと気がついていただけました?」
そう、違和感はあった。周辺国家に囲まれて弱った国の民が反乱を起こしたと聞いた時。なんでそこまで民がまとまって王家を排斥できたのか。聞く限り割りと全うな政治手腕だったのに。
外の太陽はついに赤い色を保てなくなって、紫と青の光が広がっている。この家に差し込んでくる窓の光は当然透明なはずなのに。青い色に見えるのは。
「青肌に蝙蝠羽、太め悪魔しっぽ!」
「魔族なんです、私の家」
そう、姫様の尾てい骨がある当たりから尻尾が伸びてて、背中には少し小さめな羽が生えていて。肌は不健康そうな青いそれだ。黒目が反転していないのが、個人的には少し気になるが。
「ふふっ。やはり全然気になさいませんね、あなた」
「まぁ、今更ですし。こうなるのわかったから明かしたんでしょう?」
同じ家にもう少しすれば半年も見えてくる付き合いだ。姫様の考えている事はここまでくればわかる。つまり、姫様の王家の滅亡した理由は。民衆の革命ではなく、魔族の排斥、人と魔の戦いの一環だったわけだ。
「はい。もう『あなた』になって頂いたので」
そう言われると悪い気が全くしないのだから、自分は単純だと思う。逢魔時まで待ったのは、彼女の茶目っ気なのだろう。
「では、行きましょうか?」
「一つ良いですか?」
ふわりと浮遊しながらこちらに近づいてきた姫様。近くで見ると更にそのまさに魔性だった美しさが際立つから恐ろしい。
「何でしょうか?」
私を抱えようと肩に手を回してくる姫様の触り方が、さらに怖くて気になっているのを横目に、しっかりと思ったことを伝える。
「シャツ、穴開けて良いので着て下さい。おまえが私以外に見られたら我慢できません」
「ふふっ、あなたを前に抱いて隠すつもりでしたが、承知しました」
ノリノリな姫様がシャツに指を当ててから着直して。二人でついに空に飛び立つ。
山の匂いが、どこか故郷の野山のソレと違うのは、気分の問題なのだろうか?
「では、行きましょうあなた? 逃避行ですね」
「はい、私のお姫様。どこまでも一緒に。『今は』二人で」
笑顔でそう交わした私たちは、闇夜に為りつつある空に消えていく。
あの狭い部屋での生活なんかより、ずっと大変だろうけれど。
全てを晒し合える二人なら、怖いものなんてもう無いのだから。
なお、老いた彼の死因は腎虚であった。
姫様には青い血が流れてますし、夜目がとても効きますし。
言葉ではなく契約と対価を重視しますし、人を娯楽半分でからかいますし。
沢山の人の血が流れる娯楽作品や、人外と人が結ばれる話が好きで。
容赦なく搾り取るし、割りと人の心ないのかと思うようなことする。
そして、皆さんに名前を知られてないわけですね。
そもそも、下着があんな短時間で穴が空くわけ無いだろう。
というお話でした。
だからなんだと言われればそれまでのフレーバー設定ですが。




