93話 無駄なこだわり
鍵を集めて来いと言われた私は現在地から最も近かった北の遺跡に行った。
「巨大遺跡って言ってましたけど、小さくないですか?」
『その遺跡は地下に広がっているタイプだ。』
「なんですか急に。」
『魔宝石を通じてになるが、できるだけのサポートをやってやろうとしているんだろうが。』
「そういうの先に言ってくれません?」
『人生は驚きがあった方がいいと言うだろう。』
「それはそういう意味じゃないと思います。」
『そんなことはどうでもいい。ほら、早く行くが良い。』
相手がめんどうになってきたので、無言で遺跡の中に入っていった。
「真っ暗ですね。」
『明かりをとるための窓すらないからな。』
遺跡の中は地上部分にもかかわらず闇が広がっていた。
『灯りをつけなくて良いのか?』
「私は暗闇でも問題ありませんから。」
暗視の魔法を使いながら奥へと向かっていく。
『この遺跡は三つの中で最も難易度の低い遺跡だ、少し経験を積んだ人間なら簡単に攻略できるだろうな。』
「ちなみに一番難易度が高いのはどこですか?」
『中央の遺跡だ。あそこには特別な仕掛けが施してある。凡人が攻略するのは無理だと言わざるを得んな。』
「へー。」
そうこうしていると、
「罠ですね。解除は面倒ですし、正面突破しますか。」
『力技すぎんか?』
「ゴリ押しが最もシンプルで強い作戦ですよ。」
結界を張り、罠が大量に仕掛けられた通路を進む。
罠は、落とし穴や毒矢、落ち天井や壁がせり出し推し潰そうとするものなど、たくさんの種類があった。
「これで罠ゾーンは終わりですかね。」
『本当に全部の罠に突っ込んで行くとは…、ただのバカなのか?』
「あの程度では問題ないと判断しただけのことです。」
『…そうか、勝手にやってくれ。』
奥へ奥へと進んでいくと、大きな扉があった。
その中には、
「牛の頭の人間?」
『あれはミノタウロスとかいう魔物だ。門番にはミノタウロスだと聞いてな、わざわざ捕まえてきたのだ。』
「なに無駄なことしてるんですか。」
『我なりのこだわりというやつだ。』
「そうですか。」
部屋の中に入ると、ミノタウロスはこちらに気づいたようで、持っていた斧を振り上げて突進してきた。
突進してきたミノタウロスの足を切り落とし、倒れ行く相手の首を切り落とす。
強靱な肉体から繰り出される強力な攻撃と鋼鉄の刃をものともしない防御力が強みらしいのだが、私にとって防御力なんてものはなんの意味もなさいないものであるため、攻撃速度が遅く、隙の大きいミノタウロスはまったく脅威ではなかった。
『もうちょっと苦戦してもいいじゃん…。』
「子供みたいに拗ねないでくださいよ。」
ミノタウロスを倒した後、台座がせり上がってきて、そこに宝石が置いてあった。
『これが鍵だ。』
「魔法の力は感じないのですが。」
『これではなく封印の方にこの宝石を鍵として記憶させておるのだ。』
「ふむ、そんなことをしているとは面倒じゃないですか?」
『我だってそう思ったわ。だが、魔宝石などそう簡単に手に入るものではないだろうが、だから純度の高い宝石を使ったのだ。』
「なるほど、そういう理由ですか。確かに魔宝石は私も今持っているものを入れても二、三個程度しか見たことないですね。」
『貴様、かなりの名家の生まれなのか?庶民では魔宝石など一度も見ることはないと思っておったのだが。』
「まぁ、色々あったんですよ。」
『まぁこれであと二つだな。励むが良いぞ。』
「なんなんですかその急に偉そうになるやつ。」