89話 謎の存在
大森林に入る準備を整え、ようやく大森林に入ることができる。
何故か今まですごく遠回りしてたような気がするが、気のせいということにして行こう。
逃避というものは大事なときもあるのだよ。
大森林の中は巨大な樹木が密集して大量に生えていた。
しかし、森の中は妙に明るかった。
「これが、天然の罠になるんですね。」
恐らくこの暗さは人間が暗いと感じないギリギリの薄暗さなのだろう。
暗いと人間は警戒するが、明るいと警戒を怠る。
この明るさはまだよく見える明るさだと誤認させ、草の陰などに隠れている魔物を見落としてしまうのだ。
「まぁ、私には効きませんが。」
草の陰に隠れていた魔物の群を魔法で串刺しにし、その場を離れる。
数時間歩いたが、龍の姿はおろか気配すら感じることができない。
「本当にいるんですかね?」
そのまま森の奥に入って行くと、何かの視線を感じた。
「これは…魔物の縄張りに入ってしまいましたね。」
戦闘をしに来たわけではないので元来た道を帰って行く。
縄張りを出るまで数十匹の視線を感じた。
「さっきの魔物と戦うとなると、面倒くさそうです。」
襲ってきた魔物を倒しながら森の深部まで行くと、遺跡のような物があった。
「こういうのがいくつかあるんですかね?」
遺跡ってなんかワクワクするよね。
少し調べてみようかな。
うん、知ってた。
こんな浅いところにある遺跡に重要な物があるわけないよね。
遺跡を調べて分かったことは、この遺跡は壁画などのヒントになりそうなものが何も無く、何も分からないということだった。
気づいたら時間だけが過ぎていた。もう夕方だよ。
とりあえず、今日はここで野宿かな。
おやすみ〜。
翌朝、起きるとなんだか周りが騒がしかった。
周りを見ると大量の魔物が結界の周りで待機していた。
どれだけ私を遅いたいんだよ。
魔物を処理した私はさらに奥に進んで行った。
強そうな魔物の気配はするんだけどな。
龍はいないんだよな。
それから数日野宿をしたが、龍は見つからなかった。
本当にいるの?
ダメだ、まったく見つかる気配がない。
もう少し粘っていなかったら一旦帰ることにしよう。
どこだ〜。もう帰るか…ん?この気配は…まさか。
ようやく見つけた。絶対に逃がさない。
全速力で気配の方向に移動していく。
え!気配が消えた!
突然龍だと思われた気配が消えてしまった。
混乱しながらも気配が消えた地点まで移動すると、大きな足跡を発見した。
「なぜ、気配が消えた?生物であるならある程度の気配は必ず出すはずなのに。」
その場を調べてみたが、手掛かりになりそうなものは何も無く、とりあえず一度街に戻ることにした。
帰って行くメイの後ろ姿を眺めている存在がいた。
『あれが龍殺しか。あんな小娘だとは思っていなかったが、凄まじい力を持っている。あの人間がこの森を解放するものであれば良いのだかな。』
低い声で威嚇するようにそう呟いた。