86話 再戦
魔宝石の波長は魔石と違う点がいくつかある。
その波長を辿って行けば居場所の特定もできるだろう。
緑の魔宝石は風か植物の属性なので、早くしなければ自然のものに紛れてしまう。
痕跡を辿って行くと、森に着いた。
ここは大森林のすぐ近くではあるが、大森林ではないらしく、魔物はほとんどいないようだ。
アジトにはこれ以上ないほどの好条件だ。
森に入りしばらく進むと、大きな洞窟があった。
その洞窟は人の手が入ってはいるものの自然に出来た洞窟のようだった。
洞窟か〜。なんだかゴブリンを思い出すな。
罠に気をつけないとな。
見張りはいなかったので、
無属性魔法«気配隠蔽»
を発動して入っていく。
どうして見張りがいないのだろうか?
あんなに見つけやすいんだから見張りは必須だと思うんだけどな。
もしかして罠?
でも、人間の気配はこの洞窟の奥からしてるんだけどな。
一人くらいは生かしておいて情報を聞き出すのもいいかもしれないな。
側近みたいなやつなら情報を持ってそうだしちょうどいいかも。
倉庫から出てくる黒フードを発見したが、まったく警戒している様子はなかった。
罠かと思ったけど違うのか?
もしかして囮?
跡を付けてみるか。
黒フードが歩いていった先には二十人ほどの黒フードたちがいた。
その中にはグラッジと名乗ったやつもいて、ますます何をしているのか分からなくなってしまった。
もしかして幻影でも見せられてる?
いや、そんな兆候は無いよな?
まぁいいか。罠だったらその時だ。
そうだ。人質を見つけないと。忘れるところだった。
どこだ?この部屋にはいないのかな。
途中にあった倉庫にいるのかな?
一度戻ってみるか。
倉庫に戻ると、奥に続く扉を見つけた。
その扉を開けると拐われたアマルダを見つけた。
「あなたは、あの時の。助けに来てくれたんですの?」
「はい、早く逃げましょう。」
「お母様も囚われているのです。お母様も助けてください。お願いします。」
「出来る限りのことはします。外で待っていてください。」
「どうかお願い致します。」
気が重いが、やるしかないか。
黒フードたちがいた広間に戻り、奇襲を仕掛ける。
「な、何だ!」
「ギャア!」
たちまち悲鳴が響き渡るようになった広間に入っていった。
この部屋には黒フード以外の生存者はいないので、結構楽だ。
「なぜお前がここにいる!入口は隠されていたはず!」
「え?あれ隠してたんですか?すごい目立っていたので目印にしてたと思ってたんですけど。」
「暗黒術«怨嗟の陰»!」
「一度見た術は効きませんよ。」
「なぜだ!確かに発動しているはず!」
「完全に無効化するに必要は無い。痛みを緩和してしまえばいいだけこと。あなたは危険です。ここで死んでもらいます。」
「俺はこんなところで死ぬ訳にはいかないんだ!」
「知ったことか。」
抜刀術 «刹那»
「クソ…が。」
胴体を両断されたグラッジは悪態をつき死亡した。
私はグラッジが死んだことを確認して、まだ生き残っているグラッジの部下を尋問することにした。
「色々聞かせてもらいますね。拒否権は無い。」
返り血を浴びているその顔でニッコリと笑っているメイを生き残ってしまった黒フードはただ震えて見ていることしか出来なかった。