85話 守り人
「チャールズさんお連れしました。」
「ありがとう。数日ぶりですね。」
「それで、話とは?」
「お嬢様と奥様を助けていただきたいのです。」
「それはどういう?」
「天理教団と名乗る奴らが屋敷を襲撃したのです。私はすぐにやられてしまい、助けることができませんでした。」
「なぜ私に助けを求めたんですか?」
「以前助けていただいたときの動き、それにその剣、魔剣ではありませんか?」
「そうですけど。」
「魔剣を使いこなせるのは強者の証です。だからこそ、あなたに助けを求めました。どうかお願いします。」
「分かりました。一度関わったことを放っておくのは信条に欠けるので。お嬢様は何か魔道具のようなものを持っていませんか?」
「魔道具は持っていません。ですが、魔宝石のペンダントをしていました。」
「魔宝石ですか。色は?」
「緑です。」
「分かりました。それが分かれば追跡できます。」
「なにとぞお願いします。このままでは守り人の…。」
「守り人の何ですか?」
「い、いえ。何でもありません。」
「話してください。奴らの目的も全部。」
「そ、それは…。はぁ、バーチル商会の先祖は大森林の守り人でした。大森林に住む龍と契約し、森の魔物を外に出さないようにしたのです。一族が死に絶えたり、この地を離れたりすれば契約は無効となる。だからこそお嬢様と奥様が亡くなれば大変なことになるのです。」
「ふーん。それで?天理教団の目的は?」
「森に隠してある古代の兵器が目的でしょう。守り人の先祖は魔物を集めて天然の要塞を森に作ったのです。それの要となるのが龍と守り人の持つ魔宝石なのです。」
「そんなものがあるのですか。正直に話していただきありがとうございます。今日はこれで失礼します。」
「嬢ちゃん、大丈夫なのか?いくら嬢ちゃんが強いって言っても相手は武装した集団だぞ?」
「私は数を揃えただけの集団には負けませんよ。問題はグラッジとか言う幹部の存在ですね。アイツの暗黒術は面倒です。」
「なんで名前知ってるんだよ。」
「本人が名乗ってたからですよ。」
「やっぱり黒フードを殺したのは嬢ちゃんか?」
「そうですよ。」
「なんでそれを言わないんだ。嬢ちゃんはもっと感謝されてもいいはずだ。」
「感謝などされても煩わしいだけです。私は感謝など望んでいない。」
「そうか…。明日はどうするんだ?」
「とりあえず痕跡を追います。」
「痕跡なんてあるのか?」
「魔宝石なんて珍しい物の波長はそう簡単に消えません。」
「手伝いはいるか?」
「いりませんよ。とりあえずどこにいるか見つけてくるだけですから。」
「心配だな。」
「私はこういうことに慣れているので問題ありませんよ。」
翌朝
「本当に一人で行くの?」
「はい、他の人がいても邪魔ですから。」
「ケガしないように気をつけなさい。後、帰ってきたらこの家に顔を出すように。」
「分かりました。」
「メイ、さん。俺も行く。」
「危険ですからダメです。」
「でも!」
「今はまだ、あなたは弱い。でも、今から努力すれば強くなれる。あなたが強くなったとき私を手伝ってください。」
そう言って笑いかけると顔を赤くして固まってしまった。
「どうしたんでしょうか?」
「放っておいてあげて。」
バークスには見つけるだけと言ったが、そんなつもりはまったくない。
リベンジマッチと行こうじゃないか。
魔宝石・・・鉱山で稀に発掘される宝石の一種。
魔石よりも魔力効率が良く、拳大の魔宝石があれば国中を結界で覆うこともできる。