84話 引っこ抜かれた剣
「おはようございます。」
「あら、起こしに行こうと思ってたのに、早起きなのね。」
「そうですか?」
「子どもはもっと寝るのものよ。ピーターとバークスもまだ眠ってるし。」
「ピーター?」
「私たちの息子よ。ヤンチャなのよ。元気なのはいいことなんだけど、よすぎるのも考えものよね。」
「ふぁぁ〜。おはよう、嬢ちゃんもおはよう。」
「おはようございます。」
「おはよう。今日はどうするの?」
「昨日は大変だったからな。まぁ、知り合いまわって、手伝いがいらないか聞いてくるよ。嬢ちゃんはどうるんだ?」
「あの、私の剣を知りませんか?」
「剣?…すまねえ。持って帰ってきてない。」
「メイちゃん剣なんて持ってるんだ。」
「とりあえず、剣を回収しないといけませんね。」
「まぁ、何をするにもご飯食べないとね。」
「今日も美味そうだ。いただきます。」
「ありがとうございます。」
「お礼なんていらないわよ。私はあの寝坊助を起こしてるわ。」
「コラー!いい加減起きなさい!」
「そんなに大声出すなよ!」
「大声出さないと起きないんでしょうが!」
少しして、ピーターが居間に顔をだした。
「だ、誰だよそいつは。」
「俺の命の恩人メイちゃんだ。失礼の無いようにな。」
「どうも、メイです。」
何故か少しの間固まっていた。
「どうかしましたか?」
「い、いや何でもない。オ、オレはピーターだ。よろしく。」
「ほら、早く食べちゃいなさい。」
「分かってるよ。」
「じゃあ、嬢ちゃん行こうか。」
「どこに行くんだ?俺も行きたい!ちょっと待ってくれよ。」
「早くしろよ。」
ときどきチラチラとこちらを見てくるピーター。
得体の知れないやつだと勘ぐっているのか?
いや、普通この歳の子どもが他人を疑ったりしないよな?
「嬢ちゃん、いつなくしたか覚えてるか?」
「人を助けたときは持ってましたね。その後は覚えてないです。」
「それはどっちだ?」
「確かあっちだった気がします。」
「ど、どんな剣なんだ?」
「少し反りの入った長剣ですよ。」
「反りが入るなんて珍しい剣だな。」
「オーダーメイドなので。」
「あれ?あそこに人だかりができてるぞ、何だろうな?」
「行ってみるか。」
人だかりに近づくと、一本の剣を取り囲んでいた。
「何をしてるんだ?」
「あの剣全然抜けないんだよ。」
「フンヌァー!?」
「ほら、力自慢たちが抜こうとしてるのにビクともしないんだよ。」
「次は俺が!」
「抜かなくていいです。」
ズボッと剣を引き抜きそう言う。
「なん、だと…。あれをどうやって抜いたんだ。」
「それじゃあ行きましょうか。」
鞘も無事回収し、行こうとすると、
「ちょっと待て!どうやって抜いたんだ。そしてそれはお前のなのか?」
「力を入れて引き抜きましたよ。それとこの剣は私のです。」
「この剣が嬢ちゃんのだって言うのは俺が証明するぜ。俺は嬢ちゃんがこの剣を持ってるのを見たぞ。」
「そうか、それならいいんだ。」
「申し訳ありません。あなたがメイという少女でしょうか?」
「そうですけど、何か?」
「チャールズという者とお知り合いですか?」
「チャールズ?ああ、知っています。」
「それならよかった。チャールズが話がしたいと言っております。着いてきていただけないでしょうか。」
「分かりました。」
「俺たちもついて行くけど、いいか?」
「はい、同行者がいても問題はありません。」
何の用だろか?