79話 野宿
「チャールズ、もう大丈夫なの?」
「はい、もう大丈夫です。この方に我々を助けていただきました。」
「その少女が?」
「はい、一瞬で賊をバッタバッタとなぎ倒していました。」
「そうなの。…そちらの方、助けていただきありがとうございます。私はバーチル商会の長女のアマルダと申します。」
「バーチル商会っていやここら辺の中で一番の商会じゃないか。その長女とこんなところで会えるとはな。」
「私はメイです。お礼を言われるようなことではありません。」
「ご謙遜を、このお礼をしたいので屋敷にお越しください。」
「先を急ぐので、ごめんなさい。」
はっきり言ってこのお嬢様からは厄介事の臭いしかしないから早く離れたい。
「何言ってんだ嬢ちゃん。受けとくべきだぜ。」
「いりませんから。早く行きますよ。」
「どちらまで行かれるおつもりで?」
「ガーベリアだ。」
「まあ!私どももそこが目的地ですの。一緒に行きませんか?」
「喜んでお嬢様。」
「ちょっと何を勝手に…。」
「それでは行きましょうか。」
「何むくれてるんだよ。喜べよ、あの大商会のバーチル商会からのお礼だぜ。きっととんでもないものをくれるさ。」
「それだけで済めばいいんですけどね。」
「どういうことだ?」
馬車が野営地に着き、野宿の準備を始めた。
「この辺りに村とか無いんですか?」
「あるにはあるが、余所者は居心地が悪くてな。一度泊まらせてもらったことがあるが、二度と行こうとは思わなかったぜ。」
「そうなんですか。」
「嬢ちゃんは野宿大丈夫なのか?」
「今さら聞くんですか。別に気になりはしませんよ。屋根がある方がいいですけどね。」
「まぁ、当然の感性だな。」
「そういえばあのお嬢様はどこに行ったんです?いつの間にかいなくなってるですけど。」
「急用ができたらしくて大急ぎで帰ってったよ。ガーベリアに着いたら顔を出せだとさ。嬢ちゃんテント持ってるか?俺の分の一つしかないんだ。」
「持ってないですね。」
「なんで持って無いんだよ。しょうがねえな。嬢ちゃんがテントを使え。俺は馬車で寝る。」
「体を壊されると困るので私が馬車で寝ますよ。」
「外聞を考えろ。子どもを外で寝かせて、自分だけテントで寝てたなんて知られたら俺は外も歩けなくなっちまう。」
「そこまで言うなら、ありがたく使わせてもらいますけど。」
「ああ、そうしてくれ。じゃあ、おやすみ。」
自分が思っているよりも疲れていたようでその夜はグッスリ眠った。
何事もなく朝を迎えた。生憎の曇り空だ。
雨が降らなければいいのだが。
「嬢ちゃん起きてるか?」
「起きてますよ。」
「飯を用意したから支度ができたら来い。」
「分かりました。ありがとうございます。」
「よし!飯も食ったし、そろそろ出発するか。」
「そうですね。」
ご飯は普通の保存食で、可もなく不可もなくな味だった。
別に不味くはないのだが、今まで一流の料理ばかり食べていたせいで、ちょっと不味く感じた。