78話 世は情け
「嬢ちゃん許可証持ってるのか?持ってないと入れないぞ?」
「そんなものがいるんですか。知りませんでした…。」
「実力もない冒険者が入って行ってたくさん死んだからな。許可制になったんだ。」
「どうしましょう。ここら辺で人がいないところありませんかね?」
「うーん、やっぱり大森林くらいしかないな。この草原も村が点在してるからな。」
「そうですよね。」
「やっぱり聞かせてくれ、どうして大森林に入りたいんだ?」
「呪いを解きたいんです。」
「呪い?」
「呪いを解くためには聖術が必要ですが、聖術は魔物を呼び寄せます。そのため、人がいないところに行かなければいけないんです。」
「だから大森林に行きたがったのか。まぁ、そう気を落とすなよ。何事にも抜け道はあるものさ。というか、大森林に入るための門は三箇所しかない、それ以外の道は時々見回りがあるくらいで警備はザルだ。だから、入ること自体は簡単なんだ。」
「入ること自体は、ですか。」
「森の中には冒険者がいる。それもたくさんな。その冒険者は森の異変をギルドで報告する。そのときにおかしな人間がいたということを報告されるんだ。どこにいるのかも分からない冒険者の視線から逃れるのことは不可能だ。」
「それだけですか。隠れたり見つけたりするのは得意ですよ。」
「子どものかくれんぼじゃねぇんだ。馬鹿なことは言うな。俺と一緒に入るか?」
「え?」
「森に一緒に入るんだよ。それなら何も後ろめたいことはない。」
「それは無理です。さっきも言ったはずです。私がやろうとしていることは魔物を呼び寄せると。危険です。他人を巻き込むつもりはありません。」
「そうは言ってもよ。一人なんてあの森じゃ無理だぜ。」
「無理でもやるしかないんですよ。」
「あんた一人で出来ることじゃ…って前の馬車は山賊に襲われているのか?」
「助けて来ますね。」
「おい!話し終わってない!って行っちまった。」
「お嬢様!お逃げください!ここは死んでも通さん!」
「ヒャハハ!死でもだってよ!死んだら何にもできないって分からねえみたいだぜ。」
「そう言うなって、そいつも必死なんだよ。ってどうした?」
さっきまで笑っていた山賊の首が落ちる。
「何!新手か!?お前ら気をつけろ!」
「意味無いですよ。」
「何?お前は誰だ。」
「もう全員殺しましたから。」
その言葉に衝撃を受け、周りを見渡す山賊。
「お、お前は何者だ!」
「戦意喪失ですか?面白くないですね。ほら、立って、もっと楽しみましょう。フフフ。」
「く、来るな!た、頼む!命だけは助けてくれ!」
「命を助けるか。お前はそう言われたとき助けたか?」
そう聞くと山賊は涙と鼻水を流しながらこちらを見上げた。
「どうなんだ?助けたのか?」
「た、助けた!だから…ゴボッ…ガア!」
私は心臓を刺し、ひねりあげた。
「浅ましい。見ているだけで吐き気がする。…大丈夫ですか?」
「え?あ、ありがとうございます。助かりました。」
「嬢ちゃん!お前速すぎだぞ。馬車が追いつかなかったじゃないか。」
「こちらの方は?」
「この人の馬車に乗せてもらってるだけでそこまで親しいわけではありません。」
「チャールズ、もう大丈夫なの?」