69話 認識の違い
「アイツら新人の冒険者くらいの強さはあるぞ。」
「新人って素人ではないですか。」
「それは違うな。冒険者はな、15歳から新人って言われるんだ。」
「15歳?冒険者は12歳からなれるのでは?」
「12歳にまわされる依頼なんて街の雑用ばかりさ。」
「15歳の前後で魔物の討伐依頼がまわされるんだ。だから、新人って言っても3年やってるやつとか、すでに魔物を倒したことあるやつとかいるんだよ。」
「はぁ、それはほとんど魔物と戦ったことの無い素人ですよね?」
「あー、俺が言いたのは、アレだ。その、そう、学園の試験には十分なんじゃないかってことだ。」
「学園の試験が世界のすべてではありません。彼らには守りたいものを護る力を与えるために私はやってきました。確かに今の彼らでも学園の試験には十分でしょう。しかし、それだけではダメなのです。」
「そういう意図があったのか。分かったよ。俺も厳しくいくことにするよ。アイツらのために。」
「ただ、修学期間中にできるのかと言ったところですね。」
「確かにな、普通に難しいもんな。」
「カイトは無詠唱できるんですか?」
「簡単な魔法ならな。難しいのはそもそも覚えてもないから。嬢ちゃんは?」
「私は一通りできますよ。」
「規格外すぎないか?」
「努力の結果ですよ。なのにみんなして人間じゃないとか規格外とか酷いですよね。」
「だっておかしいじゃないか。」
「カイトも私と同じくらいですよ?」
「嬢ちゃんと一緒にするなよ。」
「同じですよ。強さのことを言ってるなら五十歩百歩ですよ。」
「それは…否定できない。まぁいいか。」
「いいんですか。軽いですね。」
「深く考えても意味ないからな。それよりもさ、嬢ちゃんのその剣気になってたんだ。見せてくれないか?」
「これですか?別にいいですけど。汚さないでくださいね。」
「ありがとうな。って重いなこの剣両手剣だよな。こんなもの片手で振り回してるのかよ。」
「一生ものですから、成長しても使えるようにしてもらったんですよ。」
剣を受け取ったカイトは鞘から剣を出した。
「これは…魔剣か?なんだかあのクズキマイラの魔力も漂ってるし。」
「それは丈夫なだけの剣ですよ。」
「いやいや、これを見てみろよ。」
「これは…魔道具と同じような魔力ですね。」
「そうだ。これの材料は?」
「炎龍の骨と逆鱗です。」
「そんなもの使ってるのかよ。どれくらい使ってる?」
「3年ですね。」
「3年でここまで成長するのか?」
「成長?」
「これは知らないのか?魔剣てのは成長するんだ。使用者や倒した敵の魔力を吸ってな。この剣の効果は一つ【不壊】だ。」
「不快?」
「不快ちゃうわ!不壊だよ。シンプル故に強い剣だ。」
「最近まったく使ってなかったので知りませんでした。キマイラの魔力も吸ったんですね。」
「そうだな。あのキマイラSランクくらいの強さはあったからな。」
「あれSランクなんですか?」
「そうだぞ。冒険者じゃない嬢ちゃんには分からないかもしれんが。あのレベルの魔物が暴れれば国が滅ぶからな。」
「へ〜そうだったんですか。Sランクってもっと強いんだと思ってました。」
「認識の違いがヤバい。」