66話 茶番
「話終わったわよ。」
「どうでした?」
「私を見極めるって。」
「どうしてそんな話に?屋敷で働いてもらうという話では?」
「そういえばそうだったわね。忘れてたわ!」
「はぁ、…サキさん。屋敷ではたらく気はありますか?」
「正直人と話すのは怖いけど、働かせてもらうわ。私でいいなら、お願いします。」
「おお!サキが初対面の人と話している!お兄ちゃん嬉しい!」
「うるさい黙ってて。」
「空気読んでください。」
「扱いが酷い!」
「ほら、あっち行ってましょう。」
「俺に優しいのはお嬢様だけだよ。」
「何があったのかは聞きません。ですが、大丈夫ですか?できるかぎりのフォローはしますよ。」
「ありがとう。極力できることはするつもりよ。でも、ダメそうだと判断したら助けてくれると嬉しい。」
「人と話すのがそんなに怖いですか?私とは普通に話せているようですが。」
「なんだろうね。お嬢様とあなたからは私に何かしようとする感じがしないの。」
「色々利用する気満々ですけど?」
「あなたは利用した後も責任とってくれそうだし。後、変な話だけど、懐かしい感じがするの。」
「懐かしい?会ったことありましたか?」
「無いと思うわ。でも、そう感じるの。」
「不思議ですね。それと話は変わるんですけど、屋敷で働くとき住み込みがいいか、ここから通うのがいいか選んでください。」
「選べるの?住み込みの方がいいとは思ってたけど。」
「すでに話は通ってるので。」
「そうなんだ。」
「では、今から屋敷に来てください。辺境伯様に会っていただきます。」
「今から?急ね。」
「本当は彼に連れてきてもらう予定だったんですけど駄々こねた人がいるので。」
「う…だって嫌だったんだもん。」
「予定も押してるので、今からです。」
教会の礼拝堂にいた二人を回収して屋敷に戻った。
「君がサキくんか、よろしく。」
そう言って辺境伯が手を出したが、
「ヒッ!」
怯えてカイトの後ろに隠れてしまった。
「辺境伯様が腹黒いから怖がっちゃいましたね。」
「腹黒さ関係あるの!?」
「お父様怖、がらせちゃダメじゃない。」
「そんなつもりは無いのだが。」
「サキさんこの腹黒おじさんが雇い主です。困ったことがあればカレンに言いつければ基本解決します。」
「おじさん…。」
「ちょっとショック受けてるぞ。娘と同い年の嬢ちゃんにおじさんって言われて落ち込んでるじゃないか。」
「………。」
「放っておいいですよ。かまって欲しいだけですから。」
「そうなんだ。」
「君たち!雇い主に対して酷すぎないかな!」
「いいですか。こういうときにカレンを頼ればいいんです。」
「ここで私なんだ。なんで後ろに回り込むの?」
「カレンちゃんを盾にするだと!」
「フハハ。これで怒れまい。」
「卑怯な!」
「…なんて酷い茶番なんだ。」
「フムフム…困ればカレン様の後ろに隠れると。」
「真に受けてるけど大丈夫か?」
「私に慣れるまではそうしてもらっても構わないよ。」
「それにしてもお嬢様のコミュニケーション能力高すぎだよな。」
「それは思いますね。」