65話 二人目の友
二人が庭に出ていった後、
「あのサキが初対面の人と少しの間とはいえ、話すことを許すとはな。あのお嬢様は何者だ?」
「何者でもありませよ。ただ、心に闇を抱えている人は彼女に惹かれる。ただそれだけです。」
「なるほどな。優しいだけのお嬢様かと思ってたが、あれだな…慈愛のオーラ的なものを感じるな。」
「そうですね。カレンには裏表がありませんから。あの子の言葉一つ一つが本心からの言葉なんです。それが人を惹きつけるのではないかと思います。」
「アンタらに言われたからやる。くらいに思ってたが、あのお嬢様を見ると、危険な目に合わせたくないと思っちまった。」
「そうですね。私も彼女がいなければここまで入れこむことはなかったでしょう。」
「あの子を気に入ってるのか嬢ちゃん。」
「嬢ちゃんて、まぁいいですけど。気に入ってますよ。でなければここまで世話をやきませんし。」
「違いないな。」
庭に出た二人は、
「あのねサキさん。私と友達にならない?」
「友達?なんで。」
「私友達が一人しかいないの。だからあなたには二人目の友達になってほしい。」
「私は友達なんていらない。友達なんていつか裏切る。それに私が友達になる必要はないでしょう。」
「あるわよ。メイったらあまり人と会わせないようにしてるみたいなの。だから、メイが会うことを許してくれるあなたじゃないとダメなの。」
「何よそれ。あなたあのメイって子の主なんでしょう。それが不満なら文句言えばいいじゃない。」
「文句を言うほど不満に思ってるわけじゃないの。ただ、少し寂しいだけ。でもね、お友達が増えればもっと楽しくなると思うの。」
「だから、私は友達なんていらないの!」
「裏切られるから?」
「そうよ!みんな私が…私たちが一番困っているときに見て見ぬふりをした。私は…一生の親友だと思ってたのに!」
「メイってね。誰に対しても常に警戒しているの。それは私に対しても。メイに何があったのかは分からない。今分かっていることは、メイは今でも私たちを完全に信用しているわけじゃない。あなたもそれでいいの、いつか他人を信頼できるようになってほしい。私と友達になるのはそれの練習よ。」
「…なんでそこまで。」
「言ったでしょ?友達が増えれば楽しくなると思うからよ。」
「それだけなの?そんなことのために私みたいなめんどくさい女を説得したの?」
「それだけよ。それ以外に私の望みは無いわ。」
「そう、なら。あなたを見極めさせてもらうわ。」
「これからよろしくね、サキ。」
カレンが人と会わないのは会わせる価値も無いと判断される人ばかり来るから、メイの独占欲とかではない。