62話 契約の儀式
契約の魔道具がある場所まで移動している最中、
「なぁ、俺の拘束解いても良かったのか?」
「別に問題はありませんよ。それとも縛られたいみたいな性癖ですか?」
「違うわ!俺が逃げようとしたらどうするのかって思っただけだ。」
「あなたとその仲間を殺すだけです。別に逃げてもいいんですよ?」
「もうちょっと躊躇というものを知ろうぜ。殺すばっかり言ってたら冗談に聞こえなくなるぞ。」
「メイくんは基本的に嘘つかないから多分本心だよ。」
「それはそれで怖いんだが。」
「知りませんよ。あなたが私の機嫌を損ねなければ良いだけの話です。」
「気分で殺されるかもしれないとか怖すぎね?」
「気分で殺すことはありませんよ。扱いは雑くなるかもしれませんが。」
「それも怖いんだよな。」
「メイくんは普通の少女と違って怖いんだよ。」
「それは同感すね。」
「本人の目の前でそんな話をするとは余裕ですね。」
「メイくんはこれくらいでは怒らないからね。」
「こんなにか弱い女の子を怖いだなんて、目が節穴なんじゃないんですか?」
「どこがか弱いんだよ。」
「か弱い女の子はキマイラや魔族と戦ったり、怪盗と取引なんてしないと思うよ。」
「命の恩人に向かってよくそんなことが言えますね。」
「その節はお世話になりました。」
「あ、この部屋にあるよ。」
「随分と地下の深いところにあるんだな。」
「魔道具の劣化を防ぐためだよ。」
「ちゃんと理由があるんだな。」
「これがそうだよ。」
「それでは早速やっていきましょう。そういえばあなたの名前を聞いていませんでしたね。」
「俺か?俺はカイトだ、改めてよろしく。」
装置を起動させると、装置に書かれている文字が鈍く光りだした。
それが起動の合図らしい。
「我が名はガイアス・フォン・ヘイミュート。ヘイミュート辺境伯領の者は怪盗シグルとその仲間が新たに犯罪を犯さない限り、処罰することを禁ずることを誓う。」
「えっと、わ…我が名はカイト。俺は、ヘイミュート辺境伯領の安全に力を尽くすことを誓う。」
カイトがそう言った瞬間、装置から光が溢れ二人を呑み込んだ。
光が収まった後、
「これで契約完了だ。」
「何だか変な感じだな。」
「では、一旦帰宅していただいてもいいですよ。明日、仲間の方を連れてきていただければいいです。」
「分かった。何とかして連れてくるよ。」
カイトが帰った後、
「まぁ、好青年といった感じかな?」
「そうですね。カレンと彼が信頼関係を結ぶことが出来れば、少しの間暇をもらってもいいでしょうか?」
「その傷のことかい?」
「はい。不安要素は早めに取り除いておかなければいけませんから。」
「そうか。君が大丈夫だと判断したなら暇を出すことを許そう。」
「ありがとうございます。」




