61話 仮契約
「単刀直入に言います。私の手駒になりなさい。」
「手駒だと?」
「はい。前々から強い手駒が欲しかったのです。あなたはそれにちょうどいいのです。」
「断ったらどうなる。」
「もちろん死んでもらいます。あなただけでなく、あなたのお仲間にもね。」
ビクッ!
「やはりいるのですね。どんな方でしょうか。殺しがいのある方であればいいのですが。」
「やめろ!仲間には手を出すな!」
「なら要求をのんでください。もちろんタダではありません。あなたもあなたのお仲間もこの領地だけになりますが、罪を無かったことにしましょう。」
「ふざけるなよ。そんなことお前たちが守るなんて思えないんだよ。」
「信じていただけませんか。なら、仕方がないですね。」
メイは剣を取り出す。
「ちょ、ちょっと待て。もう少し話し合おうぜ。」
「何が知りたいですか?」
「手駒って何をするんだ。それが分からないことには何も言えないぜ。」
「あなた達には…そうですね。お嬢様の付き人にでもなっていただきましょうか。」
「何?そのお嬢様というのはどんな人なんだ。」
「かわいらしい方ですよ。とてもいい子です。」
「なんでその人の付き人に?」
「私にも色々とやりたい事があるのですが、護衛は私しかいないので、離れることができないんです。」
「それで?」
「あなたのように特Aランクの魔物を一人で抑え込める人はかなり貴重なんです。戦力的には護衛に十分すぎる戦闘力を持っていると思うのです。…だからと言ってすぐにということではありませよ。お嬢様にもあなたに慣れてもらわないといけませんし。」
「そういう事か。他にやらせたいことは?」
「他にもやっていただきたいことはありますが、嫌なら断っていただいて結構です。」
「分かった。それなら…ってちょっと待て。あなた達って言わなかったか?」
「気づかなくていいのに。」
「仲間は関係ないだろ!」
「あなたの仲間にも恩赦が出されます。それがあなた一人の行動と釣り合うわけがないでしょう。あなたの仲間がどんな人かは知りませんが、やっていただくのはあなたと同じですよ。」
「俺の仲間は荒事はできないんだ。護衛は無理だ。」
「男ですか?女ですか?」
「女だ。」
「なら、お嬢様の話し相手にでもなってもらいましょう。」
「アイツは人見知りなんだよ。」
「まぁ、一度会わせてみませんか?無理そうなら無理やりに話し相手にするということはしませんから。」
「それなら、大丈夫か?」
「あなたの仲間はその方だけですか?」
「さあな、お前に教える義理はない。」
「そうですか。残念ですね。」
「それで、お前たちが約束を守るという証が欲しい。」
「証と言われても…、契約の魔道具というものがありましたね。ここにありますか?」
「あるよ。」
「それならどうでしょう?」
「それならいいだろう。」
「では、そういうことで。」