58話 追撃戦
「…気をつけろ。そいつは…バラバラになっても…再生する…ぞ。」
そう言って派手な格好をした男が気絶した。
こんな格好をしてるということはこいつが怪盗シグルなのだろうか?
今はそんなことどうでもいいか。
キマイラは私を見た瞬間空を飛んで逃げようとした。
「逃がすわけないでしょう。」
そう言ってキマイラの背後に移動した私はキマイラを地面に叩きつけた。
グアアア!
結界を展開し、逃げられないようにした。
「これで逃げられませんね。」
逃げることを諦めたキマイラは私に向き直り、威嚇してきた。
ジリジリと私の隙を狙って私の周りを回るが、隙を発見出来ずにいる。
あからさまに隙を作っているが、それに引っかかるわけではない。
戦術というものを分かっているじゃないか。
業を煮やしたキマイラは、爪を振るうために飛びかかって来た。
今さらそんな攻撃が当たるわけないということは分かっているはずだ。
そんなことを考えながら、その攻撃を避け背後にまわった。
背後にまわると、ヘビの尻尾がこちらを向いていて、ガスを放出した。
ガスが放出された瞬間その場から離れたが、少し吸い込んでしまった。
「ゴホッゴホッ…これは毒ガスか。」
かなり即効性が高い毒だな。
解毒が追いつかない。
キマイラはニヤニヤとしながらこちらを見てくる。
毒ガスをこちらに吐いて、それに火花を引火させてきた。
そんな手品で私に勝てると思っているのか?
嵐魔法«竜巻之刃»
ガスと炎両方を散らし、ヘビの尻尾とライオンの頭をズタズタに引き裂く。
グガアァァ!
キマイラは悲鳴をあげるが、すぐさま再生してしまう。
「本当に厄介ですね。」
アイツを倒すなら近づかなければならないが、毒ガスが邪魔をする。
アイツはすぐさま私から離れようとするため、尻尾を排除しても本体に攻撃しようとする頃には剣が届かない場所に逃げてしまう。
めんどくさい。
魂魄魔法なら倒せないことはないが、剣を振るう速度が遅くなってしまうため当てることが難しい。
その時だった。
「カイル流剣術 ファング!」
あの人は!…誰だっけ?
…思い出した。さっき助けた兵士じゃないか。
「なんでこんなところにいるんですか。」
「結界に閉じ込められたんだよ!それに、苦戦してると思ったから!どうだ!尻尾の再生を止めたぞ!」
断面が燃えている。それで再生を止めたのか。
「助かりました。これで倒せます。」
ここでヤギの頭が動いて雨を降らせる。
「ああ!火が消える!」
「身体が濡れていますね。それなら。」
氷魔法«氷結波»
雨に濡れていたキマイラは凍りつく。
「塵になりなさい!」
魂魄魔法«破魂»
動けなくなったキマイラに必殺の一撃を加え、倒すことに成功した。
ついでに、気を失っている怪盗シグルも回収し、その場を兵士とともに去った。
嵐魔法«トルネードスラッシュ»・・・風の刃を回転させ切り裂く魔法。風魔法より効果範囲が広い。




