54話 怨念
ベチャッ！
「アー、アー。」
「それは人間を使ったのですか？」
「そうだ！人間とスライム、そして触手植物のテンタクルスを混ぜ合わせて作り出したクリーチャーだ！」
「だから言ったじゃないですか。人間を使うと気持ち悪いと。うわぁー、近づきたくないですね。」
「おい！あのガキを殺せ！」
「アー？」
「どうしたのだ？おい、こっちにくるな！うわあああ！」
グチャ！
「手駒に食われるとは、マッドサイエンティストにはお似合いですね。」
どうやらこちらに狙いを定めたようだ。
粘液は酸でできているようでクリーチャーが触れた場所から煙が上がっている。
「アー！」
大量の触手を伸ばし私を捕まえようとする。
それを避けて魔法で切り刻む。
クリーチャーは触手を伸ばしても意味が無いと思ったようで、ズリズリと這いよってくる。
「何だあれは！」
兵士がこちらに来てしまったようだ。
「ここから急いで離れてください！」
クリーチャーは兵士に狙いを変えて触手を伸ばした。
「うわあああ！」
「クソ！」
私は兵士の前に移動して触手を防ごうとしたが、間に合わず腕に触手が巻きついてしまった。
ジュウウウ
「ああああ！」
腕を焼かれた痛みで絶叫する。
「大丈夫か！」
「さっさと逃げろ！邪魔だ！」
クリーチャーは他の触手を使って私を動けなくしようとしている。
剣は落としていない。勝負は一瞬だ。
クリーチャーに向かって踏み込み反応される前に剣を振るう。
魂魄魔法«破魂»
「ギャアアアア!?」
全てを呪う、そんな断末魔をあげてクリーチャーは塵となって消えた。
「はぁ、はぁ。この傷は消えないかもしれませんね。」
クリーチャーからつけられた腕の火傷は怨念のようなものがこもり、普通の魔法や治癒術では治らなくなってしまった。
「君はメイ…さんだよね？大丈夫かい？」
「まだです。まだ休んでいる場合ではありません。」
「それってどういう…」
その瞬間大きな爆発が起こった。
「何だ！」
「住民の避難をお願いします。私は行かなければ。」
「待ちなさい！君は戦って、怪我をしている。さっきのやつが毒を持っていたりしたらどうするんだ。君は戦場でどうするつもりなんだ！」
「毒が身体を回ったとしても私は何の問題もありません。自分で解毒できますから。」
「それでも！」
「心配はいりません。早く行かなければたくさんの死人が出てしまう。」
「あ、おい！待て！話は終わってないぞ！クソ！何だよ、もっと人を頼れよ…。まだあんな子供なのに。」
パンッと自分の頬を叩き、
「あんな子供だけに頼っていられるわけないだろ！」
そう言って走り出した。
一人の少女の力になるために。
魂魄魔法«コアブレイク»・・・魂を破壊するというシンプルな魔法。不死の存在であっても魂を破壊することで倒すことができる。掠っただけでも致命的になる。
