53話 マッドサイエンティスト
グガアァァ!
キマイラがこちらを威嚇してくる。
数が多い、分散される前に倒してしまわなければ。
「はあ!」
小型のキマイラに飛びかかり首を切り落とす。
それと同時に他の個体も私に襲いかかってくる。
それを振り向きざまに吹き飛ばし、体勢を崩している個体を切りつける。
傷が浅かったようで、一瞬で回復する。
どうやら再生するようだ。
首を切り落とした個体に目を向けると、首が再生していてた。
これは、Aランク程度の魔物ではないな。
さらに上の特Aランクというやつだろうか?
どちらにしろ脅威という点では同じだ。
少し本気を出さなければならないようだ。
混沌魔法«混沌球»
小型のキマイラならばこれで完全に消滅させることができる。
コイツらはかなり賢いようで、一体が消滅したのを確認すると一体では勝てないということを理解し、複数体で攻撃を仕掛けてきた。
やっかいなヤツらだ。
空を飛んでいるあの一際大きな個体がボスだろうか。
付与魔法を展開し、剣に混沌魔法を付与した。
これでこの剣に切られた物体は消滅することになる。
そして、ボスと思われる個体に向かって突進していった。
他の個体が妨害しようとしてきたが、全てを斬り捨て向かって行った。
ボスは大きな身体に見合わず、俊敏で少し掠っただけだった。
本来ならそれで終わりなはずだが、再生能力の方が上回ったようで致命傷にはならなかった。
ガアアア!
ボスがそう吠えると他のキマイラは一斉にこちらに向かって来た。
そして、ボスは他のキマイラを捨て駒にして全力で逃げて行く。
それを止めようとしたが、数が多く阻止出来なかった。
逃げることもせず、向かってくるだけの雑魚など冷静に戦えばすぐに倒すことができた。
あのキマイラが逃げた方向は…ズイール商会の方だ。
あちらにはたくさんの兵士がいるがあのキマイラに生半可な攻撃は通用しないだろう。
急がなければ死者が大量に出てしまう。
「炎魔法火炎旋風!」
いきなり魔法が放たれてきた。
それを消滅させ、攻撃が飛んできた方を見ると、一人の白衣を着た男が立っていた。
「お前のせいでこの私の計画は台無しだ!どうしてくれる!」
「キマイラを使った計画ですか。ろくなものではなさそうですね。」
「うるさい!天才の私を追放した王都の老害どもに復讐するために作戦を立てていたというのに!」
「人間を拐ったのはキマイラに知能を付けさせるためですか?」
「よく分かったな。その通りだ、キマイラは普通の魔物と違い知能が高い。そこに人間を混ぜ合わせれば最強のキマイラが完成する!」
「天才が聞いて呆れますね。私は専門ではないからそこまで詳しくはありませんが、キマイラはある一定の度合までいくと逆に知能を低下させます。そんなことも知らないのですか?」
「何だと…。どうしてお前はそれを知っている。」
「見たことがあるからです。気持ち悪いだけでまったく強くなかった。」
「嘘をつくな!そんなことあるはずがないだろう!私はそのために人生をかけて研究してきたんだぞ!」
「では、それは無駄だったということですね。」
「…ではお前の言うことが正しいのかどうか、お前が証明して見せろ!」
ベチャッ!
穴の中から身体を粘液で構成されたキマイラが出てきた。