52話 キマイラ
「大変です!」
「どうしたのかな?そんなに慌てて。」
「…実は、修学生たちが誘拐されたかもしれないんです。」
「それはどういうことだ?」
「彼らに朝、お使いをまかせたんです。そしたらまだ帰って来なくて。」
「もう夕方…いや、もう夜だな。確かにこんなに遅いのは不自然だね。予告の時間まで後数時間しかないというのに。」
「私が探します。」
「メイくん、大丈夫かい?」
「問題ありません。この街の地理は頭に入っていますし、私なら彼らの居場所が分かりますから。お使いに行ったのは何人ですか?」
「えっと、3人です。」
「分かりました。それでは行ってきます。」
「頼んだよ。」
「お願いします!」
今この街は王国騎士や辺境伯軍が警戒網を敷いているはずだ、こんな時期に誘拐なんてするのはどこのバカだ?
あいつらは幸いまだ生きているようだ。
この反応は街の端、つまりスラムだ。
まったく、めんどうなことに巻き込まれやがって。
ダンッ!
私は足音を消すことなく、相手にこちらのことを知らせるように屋根に着地した。
「誰だ!」
数人の男が出てくる。
「あなたたちは子供を誘拐しましたね。投降するか死ぬか選びなさい。」
「ガキが!何を言っやがる!お前も商品にしてやるよ!」
「はぁ、めんどくさいですね。」
特に特筆すべきことは無かったので戦闘シーンは割愛する。
「大丈夫ですか?助けに来ましたよ。」
「ムグー!ムグー!」
「どうしました?もしかして後ろに雑魚のことを言っているのでしょうか?」
後ろから剣が振り下ろされるが、私は…(以下略)
「大丈夫ですか?」
「殺したのか?」
「殺すほどの価値もありません。色々聞きたいこともありますし。」
「そ、そうか。」
「さて、起きなさい。」
そうして、誘拐犯からオハナシしていった。
「さて、知りたいことは大体わりましたし、帰りましょうか。どうかしましたか?」
「…いや、何でもないです。」
そうして屋敷に帰ろうとした時、
「これは!あなたたちこっちに来なさい!」
そう言って、結界を張った瞬間。
大規模な魔法陣が発生し、スラムを焼き払った。
「何だよコレ!」
「そんな…。」
「マジかよ。」
「屋敷まで全力で走ってください。あそこなら安全です。」
「お前はどうするんだ。」
「私にはここでやらなければいけないことがあります。」
「あれを見ろ!」
「あれは穴?なんでこんなに大きな穴が?」
「中から何かが出てきたぞ!あれはもしかしてキマイラか?それも一匹じゃないぞ、十匹以上いるぞ!」
「なんでそんな怪物がそんなにたくさんこの街にいるんだよ!」
「上手く地下に隠していたようです。」
「あれと戦うのか。」
「はい。」
「勝てるのか。」
「当然です。」
「そうか。いいか、お前は必ずぶっ飛ばすって決めてるんだ、こんなところで死ぬんじゃないぞ。」
「要らぬ心配ですね。私があの程度の魔物に負けるはずがありません。」
「そうか。じゃあお前ら行くぞ!」
キマイラ・・・魔物を混ぜ合わせて作られる魔法生物。
自然発生はせず、子を作ることは無い。
その強さからもっとも弱い個体でもAランクの強さがあると言われている。キマイラを作ると国家転覆罪で死罪になる。