50話 反省
「マリアくんどうして呼ばれたのか分かるかい?」
「いえ、分かりません。」
「マリアさん、あなたこの部屋にあった書類を読みましたか?」
「それはどのような?」
「闇商人に関する書類です。」
「そ、それは…。」
「私はあなたを糾弾するためにあなたを呼んだわけではありません。確認したいだけです。」
「…はい。見ました。」
「それを他のメイドに話しましたね。」
「はい。」
「その書類はどのように置いてありましたか?」
「床に落ちていました。それを拾うときに内容が見えてしまって。」
「そうですか。分かりましたか、辺境伯様。」
「これは、私が悪かったのかな?」
「分かっていただいたようで嬉しいです。」
「その、迷惑をかけたね。」
「はぁ…辺境伯様、あなたはカレンに物を片付ける様に言っていましたよね。それなのに機密書類すら片付けられないなんて。」
「あ、いや、その。」
「なんですか?何か言いたいことがあるんですか?」
「えっと、その、すいませんでした。」
「マリアさんありがとうございました。今回は見逃しますが、次回この部屋で見たことを漏らせば罪になるのだと覚えていてください。」
「はい。申し訳ありません。」
「下がっていいですよ。」
マリアが部屋から出ていった後、
「本当にすまなかったね。」
「次からは気をつけてくださいね。」
「次は無いと誓うよ。」
「カレンのおかげで犯人が分かったんですよ。カレンには感謝ですね。」
「そうだったのか。あの子はいい子だね。」
「そうですね。よくあんな性格になったのか分からないですからね。」
「それどういう意味かな?」
「そのままの意味ですよ。」
「君遠慮が無くなってきたよね。」
「あんなミスする人に何を遠慮すればいいのでしょうか?」
「…もう反省しました。傷をえぐらないでください。」
「まぁ、ミスはともかく、慣れですかね?戻した方がいいですか?」
「戻す必要はないよ。君からの信頼の証だと思っているからね。」
「し、信頼とかそういのではないですよ。」
「ククク、そうかい。」
「何ですか、そのニヤケ顔は。」
「別に、何もないよ。ああ、そろそろ授業が終わる時間だ。カレンちゃんのところに行ってあげて。」
「はぐらかされた気がしますが、分かりましたよ。」
メイが部屋を出ていった後、
「あの子は純粋な好意に弱いのかもしれないね。そう思うだろう?」
「旦那様もメイ様と同じく弱いのでは?」
「そうかもね。私のような他人に見せられない一面を持っているものは純粋な好意に弱いのだろうね。」
「メイ様もそうだと?」
「あの子がただの小娘でないことくらいすぐに分かる。
特にカレンには見せないようにしようとしているのも。何を隠し持っているのかは分からないけどね。」
「まったく、悪趣味ですな。」
「これは手厳しいね。」