49話 容疑者
「メイ、スパイ探しはどうなってるの?」
「まったく進んでいません。」
「何やってるのよ。メイがだらしがないから私が容疑者を絞ってあげたわ!」
「誰ですか?」
「メイドのマリア、執事見習いのフローレンス、騎士のロイドよ!」
「なるほどこの人たちは違うと。」
「なんでよ!この人たちが怪しいって言ってるの!」
「冗談ですよ。それで根拠は?」
「使用人のみんなにお父様の部屋に入った人のことを聞いたの。マリアは掃除をするために入ったみたい。フローレンスはお父様を探していたみたい。ロイドはハイネスの復興状況を報告に来てたみたい。」
「あの街ですか、炎龍のせいで半壊してましたからね。」
「そうね。私たちが行った時は中心街しかできてなかったものね。」
「その話は置いといて、3人ともちゃんとした理由ですね。」
「そうね。幸いこの話はただの噂だって思われてるみたいだし。」
「新人の方とかいませんでしたよね。」
「いなかったはずよ。」
「なら、その3人の誰かですね。3人を監視しましょう。」
「あの虫を使うのね。」
「虫ではないですよ。ただの魔道具です。」
「だから見せようとしないで!」
「ただ、ボロを出さない可能性があります。」
「どういうこと?」
「情報を漏らしたのがスパイではなかった場合です。部屋に偶然闇商人に関する報告書が置いてあり、それを話のタネにしただけだとすれば、スパイという意識は無いということになります。」
「なるほど。」
「この場合悪いのは機密情報を見える場所に置いていた辺境伯様です。」
「確かにそうね。真相はお父様の管理不足ということかしら?」
「その可能性もあるという話です。調べてみないことには何とも言えませんから。」
「メイはスパイだと思う?」
「可能性は低いと思います。機密情報を漏らしたのですクビになる程度ならば軽い処罰と言えるでしょう。それよりも旨味があることってなんでしょう?」
「ちなみに最悪は?」
「もちろん死刑ですよ。」
「確かに、でもバレる前に逃げるつもりかもしれないわ。」
「そうかもしれませんね。まぁ、私が逃がしませんが。」
「そういえばなんだけど、メイド服はいつ着てくれるの?」
「え?」
「私のメイド服も届いたし、いつ着るのかなって。」
「今は少し無理があります。修学生の彼らに舐められる訳にはいかないのでもうちょっと後です。」
「そうなんだ。あの子たちいい子だと思うけどな?」
「猫被ってるだけです。ただの悪ガキですよ。彼らの性格を矯正することが私の役目ですから。」
「そうなんだ。頑張ってね。私はやらないけど。」
「そんなこと言わずに、カレンもやりましょう?」
「絶対イヤ!あんなの私すぐに倒れちゃうわよ。」
「カレンはもう少し体力をつけた方がいいと思います。」
「運動は苦手なのよ。」
「私に追いつきたいなら体力をつけないと。頑張ってください。」
「そんな〜。」