463話 命尽きるまで
メイがいなくなってからすぐカレンに辺境伯の連絡があった。
『カレンちゃん、そこにメイ君はいるかい?』
「用事を思い出したって言ってどこかに行ってしまったわ。」
『そうか。それなら良いんだ。』
「何かあったんでしょ?」
『カレンには関係ない話だよ。』
「だったら私に連絡してこないでしょ?切羽詰まった状況なんでしょ?教えて」
『はぁ、頑固なのは誰に似たのかな。』
「お父様に似たのかもしれないわよ。」
『私は頑固じゃないさ。』
「そう言う所よ。」
『まあこの話はいい。実は帝国が攻めてきたんだ。』
「でも、準備していたのでしょう?」
『準備はしていたさ。そのために何年も用意したのだからね。でも、S級冒険者のグウィントがいるなら話は変わる。彼は他のS級と比べて頭一つ分抜けているからね。』
「だからメイなのね。」
『そうだ。』
「私も行くわ。」
『ダメだ。』
「私は雑兵に負けるほど弱くないわ。それにこの戦いで負けたらどこにいても同じよ。」
『そうかもしれないが…』
「私は次期ヘイミュート辺境伯よ。震えて隠れている訳にはいかないの。」
『次期だからダメなんだが…何を言っても聞きそうにない。私の傍にいる事が条件だ。いいね。』
「分かったわ。」
『君はあの人に似たのかもしれないね。』
「あの人?」
『君の母だ。』
「そうだったら、嬉しいわね。」
ベヒーモンスに最大の一撃を叩き込んだメイはゼブラス共々木っ端微塵になる事を覚悟していたが、そうはならなかった。
『べ、別にソナタのためじゃないんじゃからね!』
「なぜにツンデレ…」
『それは置いておいて、ここまでがワシに出来るすべてじゃ。』
メイは傷を回復する魔力も無いため、魔力回復薬と回復薬を飲む。
ついでに倒れているゼブラスにも小瓶を口に突っ込んでおいたが、時々ゴフッと吐き出そうとするので多分大丈夫だろう。
「分かっていますよ。これで十分です。」
土煙が晴れると体表にヒビが入ったベヒーモンスがヨロヨロと立ち上がる所だった。
「やはり、倒しきれませんでしたか。おや、再生しない事が不思議なようですね。」
体表に入ったヒビは治る事は無く、戸惑っているベヒーモンスにメイは襲いかかった。
メイは右手にジューンを持ち、左手に神剣を持つ双剣で立ち向かう。
数百kg程度なら片手で振り回す事が出来るメイだからこそ長剣と大剣という二振りを同時に使う事が出来ているのであり、見えない程の速度で剣を振るうのだった。
先程とは違い、攻撃が通るが、その再生力は健在であり、どれだけ攻撃を当てても瞬きする間に再生してしまう。
そしてその質量もそのままのため、一撃が強力である点も変わらない。
「そう簡単にはいきませんね。いいでしょう。私は持久戦は得意ですよ。」
「グギャアア!」
「手を振り回しても、そんな攻撃が当たる訳無いでしょう。」
何度も攻撃を当て、回避し、受け流す。
何度も、それはどちらかが死ぬまで続く。
双方諦めるという選択肢は無いのだった。
 




