462話 共闘
自身のコアに小さな傷がついた事で2人を敵だと認識したベヒーモンスは身体中から蒸気を出して自身の身体を隠すと同時にその熱気で近寄れないようにした。
「あの蒸気、少し離れた所でも火事が起きていますね。」
「ああ、そうだな。ゴホッ、ゴホッ!」
「どうしたんです?血を吐いているじゃないですか!」
「気にするな。」
「無理をしないでください。」
「今無理をしないでどうするって言うんだ。」
「しかし」
「そんな事はどうでもいい。蒸気が晴れるぞ。油断するな。」
「…私が前に出ます。あなたは支援を、いいですね。」
「良いだろう。」
簡単に役割を決め、ベヒーモンスが消えた方向を向く。
高温の蒸気によってガラスのように溶けた地面が徐々に露になる。
その中心に小型化したベヒーモンスが立っていた。
「あれは、人型になったのか?」
「あれが戦闘形態という事ですかね。」
ベヒーモンスはトカゲが人間になったような姿をしており、1歩踏み出すだけで地面が大きく陥没した。
「相当な重さのようだ。あの巨体を人間大になるようにそのまま縮めたのだとしたらすごい密度だ。」
「もしそうだとすれば傷をつけられないほどになっているかもしれませんね。」
「来るぞ!」
膝を曲げ、地面を強く蹴ると、それだけで大量の土砂が後方へ蹴り飛ばされる。
ベヒーモンスはまっすぐ突進して来たが、メイはそれを受け止める事はせず、避ける事で隙を次、攻撃を放った。
「剣で傷がつきませんね。」
「まさかあれほどとはな。」
ゼブラスも破壊魔法を使って攻撃するが、超高密度の鱗や魔力障壁に阻まれ、傷をつける事すら出来なかった。
「小さくなったことで防御力が大幅に上がっているな。」
「小さくなっても質量は変わらないから突進するだけでほとんどの敵は倒せるという事ですかね。まあ、踏み込む時に地面を抉ってしまうので、スピードはそこまででもないという事が唯一の救いでしょうか?」
「そうだな。だが、攻撃が通らないと勝てない。何か案はあるか?」
「私の魔法でもあの防御を貫ける物はありませんね。」
「連携攻撃も警戒しているようだ。」
「大きいままだと勝算があったのですが…」
「どうする?」
「あまり頼りたくはなかったですが、仕方ありませんね。」
メイとゼブラスは聖句を唱える。
「「神よ、敵を打ち払う力を与え給え」」
聖句を唱えた瞬間、強烈な光が出現し、そこから巨大な剣が召喚された。
「俺が時間を稼ぐ。お前はそれに力を溜めていろ。」
ゼブラスはそう言うと最後の力を振り絞り突貫していく。
鈍重だと思っていたが、腕を振るう速度は速く、巨大な質量とスピードにより、受けたとしても大きなダメージを負う事が明白だった。
「私の魔力をすべて注ぎ込めばかなりの威力になるはず。もしこれでダメだったら…。いや、今はそんな事を考えている場合ではありませんね。」
メイは自身の膨大な魔力を神剣に一気に注ぎ込む。
回復した傍から注ぐため、メイは目眩がして、立っているのも辛かったが、気合いと根性で魔力が尽きるまで注ぎ込む。
巨大な魔力を感知したベヒーモンスはゼブラスを無視して神剣を持つメイを攻撃しようとするが、その度に攻撃を受け流し、突進をさせないように踏み込みを邪魔したりと、血反吐を吐きながら全力で時間稼ぎに徹していた。
「まだか!」
「もう少し!まだ!」
「ゴホ、長くは保たないからな!早くしろ!」
ゼブラスはどれだけ戦っているのか分からなくなっていた。
普段なら確実に倒れているような時間であり、なぜ自分は立てているのか不思議なくらいだった。
しかし、今止まれば二度と立ち上がれない事だけは理解していた。
「はぁ、はぁ、俺は…」
「ゼブラス!」
何か呟こうとした所でメイの叫びが聞こえる。
メイは全ての魔力を充填し、とてつもない光を放っている神剣を構えていた。
安堵して力が抜けてしまったゼブラスは飛び退く力が無く、その場に倒れ込んでしまった。
メイはベヒーモンスに避けられないように至近距離から神剣を振るう。
「これで!どうだ!」
極光が剣から溢れ出し、全てを破壊する。
その光は近くにいたメイとゼブラスにも牙を剥き…




