460話 星喰らう魔獣
メイ達が剣姫祭で楽しんでいた頃、ゼブラスは重い決断をしていた。
「陛下...」
「俺は、決めた。兵を招集しろ。1人たりとも逃がすな。この魔王に逆らった事を後悔させてやるのだ。」
「...御意に」
魔神を復活させようと画策している魔族達を反乱者であると認定したゼブラスは彼らのアジトを包囲し、部下を引き連れ自ら討伐に向かった。
「これは一体どういう事だ!」
「貴様らを反逆者として処刑する。連れて行け。」
「なぜだ!我々は魔族ために魔神を復活させようと!」
「貴様らが復活させようとしているのは魔神ではないと俺は言ったはずだ。貴様らの行っていた事は自らの首を絞める事だったのだ。」
「そんなのはウソだ!祭壇からはとてつもない力が溢れていた!あの力があれば魔族は!」
「馬鹿者が、神の力を感じるなど凡人に出来る事ではない。貴様らに感じられた時点でそれは神などでは無い。」
「そんな事、ありえない...」
「神力は凡人が触れるだけでその存在が消滅する危険がある。だから、もし神を封印している遺跡があれば、そこには近付くことすら出来ない。」
「...もう遅い」
「なに?」
「もう、封印を解いてしまった。後は出てくるのを待っている状態だった。」
「チッ、遅かったか。おい、遺跡に行くぞ。」
ゼブラスは腹心の部下を連れてすぐに飛び立った。
「貴様らは付近にいる者の避難をさせろ。俺は遺跡の様子を見る。」
「陛下、危険でございます。」
「こうなってしまったのは俺の失態だ。責任は俺が負わなければならん。言い合いをしている時間は無い。行くのだ!」
「...ご無事を祈っております。」
「フン」
ゼブラスは遺跡の内部へと侵入し、祭壇までやって来た。
「この膨大な魔力、これがベヒーモンスか。俺一人で対処する事は不可能か...」
遺跡の外に出ると部下達からの報告を受ける。
「避難完了しました。」
「良くやった。貴様らも早くこの場所を離れろ。」
「陛下はどうされるおつもりで?」
「俺はアレの監視だ。」
「危険です!」
「貴様らが居たところで同じ事よ。貴様らを守る余裕は無い。」
「しかし」
「何度も言わせるな。」
「...ご武運を」
部下が離れていくのを見届け、敵を倒すための作戦を思案する。
「アレを殺すには長期戦しか無い、か。だが、俺には長期戦なんてものは出来ん。どうしたものか。」
短時間で削りきる事は不可能だと感じたゼブラスは勝率の高い方法を模索する。
そうこうしていると山の岩盤を突き破り巨大な怪物が出現した。
「お出ましか。って、おいおい。どれだけデカいんだよ。」
ベヒーモンスはトカゲのような姿をしていて、既に3つの山を下敷きにしているが、穴からはまだ後ろ足が出てきていない程の大きさがあった。
「近くの村とは反対に誘導しねえと!」
一瞬唖然としていたゼブラスだがすぐに気を取り直し、攻撃しようとする。
だが、その魔力を感じたベヒーモンスがジロリとゼブラスを見やっただけで、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまった。
(動けば死ぬ...俺は、何もできないのか...)
ゼブラスは心が折れそうになってしまったのだった。




