459話 ドン引き
目潰し作戦と金的作戦で勝ち上がって行く2人、卑怯だとか他学年の学生がアドバイスするのはズルいとか色々言われたが、すべてルールには書いてないからでゴリ押した。
「非難轟々だね。」
「あれくらいの搦手を対処出来ないようでは戦場では生き残れませんね。」
「何を想定して何と戦っているの?」
「それは当然、あらゆる事象に対応し、あらゆる敵と戦う事を想定しています。罠とか毒とか使ってないだけ温情だと思うのですが、生き死にがかかった場面で卑怯だというつもりなのでしょうか?」
「そうだよ。目の見えない状態で相手の気配を探れとか言われてきたんだよ!私達は」
「それに急所は1番気を配らなければならない場所です。そうですよね、師匠?」
「その通りです。魔法士であろうと目が潰れた程度で相手を見失っては行けません。」
「何言ってんの?」
「カレンも出来るでしょう?」
「出来るけどさ」
「ともかく、そろそろ対策してくると思うので、次の作戦を考えましょう。」
「次はどんな搦手かしら?」
「それはズバリ…」
メイのアドバイスを受けた2人は次の試合に臨む。
まずはアンが舞台に立った。
「俺には卑怯な作戦は通じないからな!」
剣を持った少年がそう叫ぶ。
「あの程度で戦えなくなる方がおかしいのよ。」
試合が始まり、少年はジリジリと距離を詰める。
普通魔法士との戦いでは魔法を使わせないために一気に距離を詰める事が定石だが、攻撃の予備動作をする時に目潰しをされるとどうしようもないため、まずは様子を見る事を選択したのだった。
だが、今回はそれが裏目に出た。
アンは試合用の木の杖を少年の眉間に全力で投げつける。
魔力で強化された腕から放たれた杖は時速100kmを優に超えており、そのまま当たれば頭蓋骨に突き刺さるほどだった。
魔法士が杖を手放すと考えていなかった少年は慌てて迎撃するが、アンは目の前まで迫っており、思い切り頬にパンチが炸裂した。
「フゴォオ!」
「油断は禁物、もう1発」
「ちょ!ヘブゥ!」
ボコボコに殴られた少年はそのまま敗退したのだった。
「近接戦闘を教えていて正解でしたね。」
「顔が変形しちゃってるじゃない…」
「これは卑怯でもなんでもないよね。」
ちなみに観客達は静まり返り、ドン引きしていた。
「次は私の番だね。頑張って来るよ。」
「応援していますよ。」
「師匠の応援はなんだか怖いなぁ」
「詳しく聞かせてもらえますか?」
「あー、試合が始まりそうだから行ってくるよ。」
「まったく、調子が良いところはクレソンそっくりですね。」
「フフ、そうね。」
ミナの相手は大剣を持った少女だった。
「私にさっきまでの攻撃は効かないですわ!」
「そうかな?前に私がされた時は悶絶したんだけどなぁ。まあ、そんなに自信があるなら食らってみる?」
「遠慮しておきますわ!」
試合が始まり、大剣を振りかぶって攻撃しようとするが、ミナが視線を足元に向けると少女は攻撃をやめてその場から飛び退く。
「警戒しすぎでしょ。」
「卑怯ですわよ!」
「じゃあ運営に抗議すればいいじゃん。まあ、急所を攻撃してはいけないなんて文言どこにも無いから意味無いけどね。」
「この!」
少女はミナの挑発を受け、突進する。
ミナはノールックで地面に段差を作り出し、足を引っ掛けさせる。
「きゃあ!」
ミナはその上に覆い被さり、動けないように関節を固めていく。
「私達はさ、魔法だけじゃなくて格闘術も教えてもらったんだよね。アンは殴ってたけど、私の場合は関節技の方が得意でさ。練習台になってよ。」
「え、ちょっと、お待ちになってぇ!痛い痛い!」
「どうだ、降参する?」
「降参します!ギブですわぁー!」
少女は降参より敗退した。
「師匠、勝ってきたよ。」
「これで卑怯とは言われませんね。」
「でも皆ドン引きしてるんだよね。普通に戦っただけなんだけどな。」
「そうですよ。剣士なんだから防げて当然なのに。」
「師匠やクレソン達なら簡単に対処してたのにね。」
「メイや皆を基準したらダメよ。皆弱く見えちゃうからね。」
「それもそうだね。」




