456話 ツンデレじゃない
剣姫祭が始まり、メインイベントであるトーナメント戦が始まる頃、メイは会場の周りを歩いていた。
「何かしたい事でもあるの?」
「弟子達にちょっかいを掛けに行こうかと思いまして。」
「えっと、フラスとクレソン、アンとミナ、パルスだったかしら。」
「はい。クレソンはよく会いますけど、他はそこまで頻繁に会わないので良い機会かなと。」
「そうね。私も久しぶりに皆に会いたいわ。」
「まずはフラスの所に行きましょう。今回も優勝するつもりでしょうが、少し発破をかけて緊張感を高めて上げましょう。」
「鬼畜師匠の出番ね。」
「誰が鬼畜ですか。」
「でも、フラスが優勝すると思っているのね。」
「ええ、まあ。彼の実力は学生のレベルを遥かに超えていると言っても過言ではないでしょう。足りないのは経験ですかね。」
「結構評価高いのね。」
「本人には言いませんけどね。」
「メイはツンデレだもんね。」
「ツンデレじゃないです。」
「ダメって言ってもお願いしたら折れてくれたりとか、意地っ張りなところとか私、知ってるんだから。」
「何言ってるんですか。私はそんなに甘くはないですよ。」
「そうね。メイは天邪鬼な部分もあるもんね。」
「なんですか。その生暖かい目は。私はツンデレでも天邪鬼でもないですからね!」
「うんうん、分かってるわ。」
「絶対分かってない。」
そんなこんながあり、フラスの控え室に来た2人は扉にノックをして入る。
「師匠とカレン様じゃないか。どうしたんだい?」
「緊張なんてしていたら笑ってやろうかと思って来てみまたした。」
「ちょっと、意地悪言わないの。」
「あはは、緊張なんてしないさ。いつも通りやるだけだからね。」
「そうですか。無様な戦いをしないでくださいよ。」
そう言ったメイは少しの殺気の籠った目をフラスに向けた。
それを見たフラスは一瞬表情を強ばらせたが、すぐに和らげた。
「大丈夫、油断なんかしないさ。油断なんかで優勝を逃したら悔やんでも悔やみ切れないからね。」
「それなら良かったです。カレン、もう行きますよ。」
「え、もう?それじゃあ頑張ってね。」
さっさと控え室を出て行ったメイを追いかけたカレンはあれで良かったのかと問い掛けた。
「はい。フラスは私の言いたい事をキチンと理解してくれました。」
「そうなんだ。次はどうするの?」
「パルスの所に行きましょうか。パルスもフラスと同じようにライバルという存在がいませんから、油断したりしないように注意しなければいけませんね。」
「そんなに実力差があるの?」
「私が見た限りではパルスが1番実力があり、2番目生徒と戦ってもそこまで苦労する事無く勝つ事ができるでしょう。当然、油断していなければですが。」
「そっか。なんだかんだ言って心配なのね。」
「別にそういう訳じゃ…」
「メイは過保護な所もあるんだから。ちょっとくらい見守ってあげてもいいんじゃない?」
「まあ、そうかもしれませんが…あと、過保護ではないです。」
「そんな事どうでもいいわよ。いいから、早く行くわよ!」
「ちょっとカレン、待ちなさい!」
「キャー!」
楽しげな悲鳴を上げながら走って行くカレンを追いかけて行くメイ、賑やかな喧騒がそこにあった。




