44話 黒いアイツ
大変なことになったものだ。
「メイ、どうやって間者を探すの?」
「いつ情報が漏れたのかは分かりませんが、侵入者はいないはずです。」
「どうして?」
「侵入者がいれば分かるようにしてるからです。」
「あなた仕掛けをいくつ用意してるの?」
「まぁ、色々です。」
「またはぐらかして。」
「そういう理由で侵入者がいた可能性は限りなく低いです。つまり、内部犯ということになります。」
「そうね。それでどうするの?」
「後は噂をしているメイドに聞いて回るだけです。怪しい言動をしている人が犯人でしょう。」
「じゃあ早速行きましょう!」
「カレンは来なくていいです。」
「なんでよ。」
「カレンがいたらみんな緊張するからですよ。」
「そんなこと言ったらメイだって怖がられてるじゃない。」
「そうなんですか?」
「そうよ。メイって強いから怖いって思われてるらしいわ。」
「それは知らなかったですね。では、どうしましょう。いきなりつまずいてしまいましたね。」
「メイって魔道具作れたわよね。」
「作れますよ。」
「じゃあ、何か便利なもの作れないの?」
「便利なものと言われても、材料も何もないので厳しいです。心当たりはあるのですけど。」
「それは何?」
「王城で使った魔道具ですね。ただ、まだ動くかが分からなくて。」
「魔道具って動かなくなるの?」
「魔力が無くなれば動かなくなります。あの魔道具の稼動日数は数日なので2年も経ってると動かないかもしれません。」
「なんでそんなに短いの?」
「犯人の目星がついてたので保険だったんですよ。」
「それは再利用出来ないの?」
「試してみないことには何とも言えませんね。」
「それじゃあ試してみましょうか。メイの部屋にあるのでしょう?」
「はい。」
「メイの部屋って物少ないわね。もっと色々買えばいいのに。」
「片付けるのが面倒なので。…この袋の中に入ってるのが魔道具だった物ですね。」
「小さいわね。…きゃあああ!虫!」
「虫じゃないですよ。魔石を加工して、足をはやしただけですよ。ほら。」
「やめて!それを近づけないで!…なんでそんな形にしたのよ。」
「これが一番効率的なんですよ。」
「それで、再利用出来そう?」
「何か怒ってます?」
「怒ってないわよ。」
すごいムスッとしているが、言わぬが花というやつだろう。
「殿下はかなりいい魔石をくれたようです。魔力を込めればこのまま使えるようです。」
「えっ、それそのまま使うの?」
「はい。余計な手は加えない方が誤作動が少ないですから。」
「別にいいけど、私の前には持ってこないでね。」
カレンはこういう虫は嫌いなのか。
発信機付き盗聴魔道具・・・宝物庫にあってもおかしくはないほどの高性能な魔道具。見た目は黒光りするアイツに酷似している。