40話 プロローグ
3章の名前、後で変えると思います。
公爵の反乱から2年が経って10歳になった。
あれから何も起こっていないことが少し不気味に感じる。
「メイ!ハイネスに行きましょう。」
「ハイネスってどこですか?」
「なんで知らないの?あなたの村から一番近い街じゃない。」
「ああ、あの街ハイネスって言うんですか。」
「なんで知らないのよ。」
「興味無かったので。」
「はぁ、まぁいいわ。それでハイネスに行ってお土産買って、それからメイの村に行くの。いいでしょ?」
「いいですね。」
「残念ながらそれは出来ない。」
「どうして?お父様?」
「寄子の子供たちを預かることになったんだ。」
「寄子?」
「ああ、規模が小さかったり、爵位が低い貴族のまとめ役をしているんだけど、その子供たちがキチンとした教育を受けているのか確かめるためのものなんだ。いわゆる修学制度というやつだ。ただ、実際は寄親の子供に専属の従者を見つけさせるのが本来の目的なんだ。」
「従者?メイがいるじゃない。」
「私、従者だったんですか。」
「そうなんだよ。うちにはメイくんという最強の護衛兼メイドさんがいるからいらないいんだけど。慣例的なものでね、やらない訳にはいかないんだ。」
「別に護衛くらいいくらでも引き受けますけど、メイドではないです。」
「何言ってるんだい。クローゼットに手入れされたメイド服が掛けてあるの知ってるよ。」
「なんで知ってるんですか!」
「私はこの屋敷の主だからね。この屋敷のことはなんでも知っているのさ。」
「メイ、メイド服着てよ。私、あなたがメイド服着ているところ一度も見た事ないんだもの。」
「別に見る必要はないです。」
「私ももう一度見たいな、メイくんのメイド服姿。」
「お父様見たことあるの?ずるいわ!お父様ばっかり!」
「私もあの頃よりは成長したのでもう着れませんよ。」
「腕のいい職人なら知っているよ。」
「メイ、着てくれないの?」
「クッ!…分かりましたよ!着ればいいんでしょう!一度だけですからね。」
「やったー!」
「ププ。」
「何笑ってるんですか。辺境伯様にもメイド服着せますよ。」
してやったりみたいな顔しやがって。
「それは勘弁だ。」
そう言って辺境伯は去っていった。
この似た者親子め。
メイド服まだ着れるのかな?
「そうだ、カレン。あなたもメイド服着てみませんか?」
「え?私も?」
「はい。辺境伯様に見せれば喜ぶと思います。」
「お父様が喜ぶか。メイは?メイは喜んでくれる?」
なんだ、この可愛い生物は。
「当然です。カレンは可愛らしいですから。」
「それ褒めてる?私は早く大人になりたいわ。」
「焦る必要はありません。私と一緒に大人になっていきましょう。」
「そうね。メイの言う通りだわ。…私がメイド服を着るなら採寸してもらわないと。メイもやってもらいなさい。」
「えぇ、あの人ですか。やだなぁ〜。」
「何が嫌なの?」
「なんというか、苦手なんですよ。」
はぁ、憂鬱だ。