395話 諦めろって
「やっぱり街中にいる魔物と言えば下水道じゃないか?」
このカイトの一言で下水道に入ることになったカレン達。
メイからの余計な事を言ってくれたなという視線を全力で無視しつつ装備を整えていく。
「どんな物が必要なのかしら?」
「まずは下水道に入るための許可が無いと」
「何言ってるのよ。そんなのもうあるわよ。」
「なぜそんな物が…」
「インフラって言うの?そういうのはウチが担当してるから鍵も許可証も地図もランタンとかも必要な物は揃ってるわよ。」
「職権乱用じゃないですか…」
「俺のせいかもしれないが、諦めた方がいいぞ。」
「カイト、恨みますからね。」
準備をした3人は下水道の扉を開ける。
「扉は結構錆び付いてるな。」
「マスクをしてるのにもうクチャいわね。」
「やはりお世辞にも衛生状態は良いと言えませんね。目や口に下水が入った場合は私に言ってください。清潔な水を用意しますから。」
「よーし、出発!」
カレンはランタンの灯りを頼りに進んでいる。
視界の端を何かが通るたびに小さな悲鳴をあげて辺りを見回している。
「怖いの苦手な癖に」
「う、うるさいわね!2人はどうなのよ!」
「俺たちか?俺たちは暗視が使えるから普段と見え方は変わらないぜ。」
「そんなのズルい!?」
「私は魔法ですけどカイトはどうやって見ているんですか。」
「昔陰キャだったからさ。」
「その理由は苦しいですよ。言いたくないなら無理には聞きませんけど。」
「ま、訓練の成果とだけ言っとくぜ。」
「陰キャ?」
「そうなんだ。俺は昔陰の魔物に…」
「ちょっと!驚かさないでよ!」
「ハハハ、おっと、開けた場所に出たな。吸血コウモリが住みついてるみたいだ。」
「あの種類は魔物に分類されていますけど、あのコウモリの被害報告はありませんし、放っておいてもいいでしょう。」
「それもそうだな。今、下手な藪をつつくのは得策じゃない。」
「さっきのコウモリの他はネズミばかりですね。下水の中にも生物はいないですし、もう少し生物の反応があっても良いと思うんですけど。」
「魔物に食われてるとか?」
「その可能性は高そうです。ネズミくらいの大きさなら出入りできる穴はありますから。」
「結構入り組んでて迷路みたいになっているわね。今日は今いる通路の終点までしか行けなさそうね。」
「そうですね。やはりいくつか魔道具を投入した方が良いですね。3人だけで迷路のような下水道を調査するのは無理がありましたね。」
カレンとメイが話しているとカイトが何かを見つけたらしい。
「なあ、これを見てみろよ。」
「なんですか?少し出っぱったレンガですか?」
「これボタンみたいだ。」
そう言ってカイトがレンガを押すと横の壁が開き、通路が現れた。
「これってなんだと思う?」
「隠し通路ですか。領主が逃げるための通路なのでは?」
「一応閉めておくか。ここも後で調査しないとな。もし領主が逃げるための通路なんだったら中に魔物がいたら危ないしな。」
「そうですね。」
終点まで辿り着いた一行は引き返し、数時間ぶりに陽の光を浴びた。
「地下はジメジメしてたから太陽の光が気持ちいいわね。」
「とりあえず今日は引き上げましょう。魔道具の準備も必要ですからね。」




