385話 練習台
子犬から巨大な狼の姿に変化し、臨戦態勢に移行する魔獣。
「うわ!おっきくなった!」
「魔獣が街の中に入って来ているなんて、この街も危険ですね。」
魔獣はメイに飛びかかると見せかけて土を巻き上げ逃げ出した。
「逃げた!」
「往生際が悪いですね。人目につくとめんどうな事になるんですが。」
メイは魔法の鎖を2本出現させ魔獣を縛りあげる。
「グオオオオ!」
「うるさい」
地面や建物に叩きつけ抵抗力を奪っていく。
「思ったよりも力が強いですね。これくらいですか?」
鎖をさらに締め上げると魔獣は苦悶の声を出し、身体からはミシリと音がなった。
「少し強くしすぎましたね。力加減が難しいです。」
「ガオオオ!」
魔獣は魔法陣を浮かべメイに魔法を撃とうとした。
「呪術返し」
メイが指を鳴らしてそう言うと魔法陣は消え、魔獣はぐったりと倒れた。
「何をやったの?」
「呪術返しをしただけですよ。この呪いの本来の効果は相手の生命力を吸い取るというものでした。しかし、私には魔法が使えなくなるという1部の効果のみが発現したのです。」
「でもこんなに早く効果出るなら使えないんじゃないの?」
「本来は少し疲れたと感じる程度だったのでしょう。しかし、私の魔力を大量に吸った影響で能力にも変化が出たのでしょう。」
「メイって魔法を使う時たくさん魔力を込めるもんね。それ全部吸い取っていたなら確かにこうなるのも納得かも。」
「練習にちょうどいいかと思ったんですけどね。やはり1週間も魔法を使っていないと細かな操作がやりにくくなりますね。」
「魔法の訓練なんていつでもできるじゃない。早く倒しちゃいなさいよ。」
「それもそうですね。«狙撃»」
メイの魔法は寸分違わず魔獣の心臓を貫いた。
「魔獣の心臓なんてよく分かるわね。」
「たくさん相手をして研究していましたから。」
メイとカレンが魔獣の死体の前で話をしていると
「そこで何をしている!」
衛兵に声を掛けられた。
メイはげんなりとした表情を一瞬浮かべたが、すぐに普段の表情に戻り衛兵の方に振り返って答えた。
「魔獣の死体があったので何事かと話していたんですよ。」
「どうしてこんな所に魔獣が?近くに冒険者などは見かけたか?」
「いえ、この路地に入ってから1度も人を見かけていません。」
「そうか。怒鳴ってしまってすまなかった。ところで君たちはどうしてこんな所にいるんだ?」
「この辺りは来たこと無かったので見てまわっていただけです。」
「なるほど、君たちの名前と住所を教えてもらっていいかな?」
「私たちを疑っているんですか?」
「すまないが規則なんだ。君たちを疑っている訳じゃない。」
しぶしぶ身分を明かすと衛兵は驚いた表情して、口調がていねいになった。
「それでは、この件はしっかりと調査しますが、発見した時の証言など聞かなければならない時がありますのでその時はご協力をお願いします。」
「分かりました。でも、大事にはしたくないので学園に来るのはやめてくださいね。」
「了解しました。」
現場を後にしたメイ達を見送った衛兵は他の衛兵と共に現場の保全を始めるのだった。




