366話 約束
メイ達は反皇太子の派閥を作り、そこに事情を知っている者も知らない者もそこに所属させることで皇太子を誤魔化す事にした。
「カンパレスには皇太子殿下の政策に不満を持つ者をリストアップしてもらっている。」
「こうなってしまえば私たちができる事は無いでしょう。これからの事は任せます。」
「任せておけ。年単位で時間があるなら、まったく問題ない。帝国でもっとも力を持つ派閥にしてやる。」
「頼もしいですね。では、また」
メイはこれ以上いても意味が無い事を確認すると、ガルドやカンパレス子爵に後は任せて帰還することにした。
「帝国に残ってもよかったんですよ?」
「せっかく学園に入学手続きしたんだからちょっとは通っておかないとね。どれだけ通えるかは分からないけど。」
「逃げなくてよかったんですか?」
「逃げるのは性にあわないんだ。」
イガレスは強がっているように見えたが、焦りを感じている様子はなかった。
「逃げるのは最後の手段だ。俺が兄貴を倒して、神輿として価値が無くなったって言われない限りは神輿を演じてやる。それで帝国の民が平穏に暮らせるなら、神輿でも道化でも関係ない。ま、むざむざと殺される気はないけどな。」
「あなたは神輿で終わるような皇帝にはならないと思いますよ。もし、裏切られるような事があったら、私が助けてあげますよ。」
「それは頼もしいな。約束だぜ?」
「ええ、約束です。」
少し沈黙が支配した後、気まずく感じたイガレスが話し出した。
「話は変わるけどさ。先輩背が大きくなったか?」
「そうですか?」
「絶対そうだって、王国にいた時は俺の肩くらいに目線があったのに、今は俺の鼻くらいのところに目線があるだろ?」
「確かにそうですね。最近服が小さくて、縮んだのかと思っていたんですが、そういう事だったんですね。」
「なんで縮むんだよ。」
「洗濯を失敗したのかなって。」
「それはないだろ。」
「まあ、支障はあまり無かったので良いんですけど。」
「あるにはあったのか?」
「今履いているスカートなんて元々膝丈のスカートだったのに今は膝上丈になってますからね。大立ち回りとかする時はちょっと困りますよね。」
「それをちょっとと言っていいのか。」
「みんな紳士なので見えそうになっても目を逸らすので私は大丈夫なんですよ。問題はその後の気まずさですかね。」
「気付いてたなら直せよ!俺たちが指摘できる訳ないだろ!?本人はまったく気に掛けてなかったとは…」
「悪い事しましたね。」
「本当だよ。そういうのは気を使うんだからな。気を付けてくれよ。」
「アハハ、すいません。」
その後は無事に関所を抜け、帰還を果たすのだった。




