362話 意外な弱点
ガルドが数日は戻らないと言って出掛けて1日ほど経った頃イガレスがワインを持ってきた。
「先輩、これ飲もうぜ。」
「どこから持ってきたんですか。」
「ガルドの執務室。」
「なんて所から持ってきてるんですか。」
「大丈夫だって、執事に聞いたら定期的に仕入れてるみたいだし、1本もらっていいかって聞いたらOKもらったから。」
「そうですか。」
「実はこのワイン話には聞いてて飲んでみたかったんだよ。」
「有名な品なんですか?」
「処女の血が入ってるとか聞いた。」
「ゲテモノ?」
「やめんかい。まあ、それが本当かどうか飲んでみれば分かるだろ。という訳で1杯どうだ?」
「私暇そうに見えても色々やっているんですけど。」
「酒を飲むとリラックスできるから仕事の能率が上がるぞ。」
「どこ情報ですかそれ。」
「さあ?適当に言ってみた。」
「まったく…1杯だけですよ。」
「やったー、これで先輩も共犯だな。」
「それが目的ですか。」
「へへ」
イガレスは自分のグラスにはなみなみと注ぎ、メイのグラスには気を使ってか半分ほど注いだ。
「乾杯〜」
「乾杯」
「ん、これ口当たりがよくて結構飲みやすいな。血が入ってるかどうかは分からないけど。」
「そうですね。血は入っていませんね。」
「飲んだことあるの?」
「大昔に1度だけ。」
「飲みやすいけどアルコール強いな。」
イガレスがハムをツマミにワインを飲んでいると、ゴンと何かがぶつかる音が聞こえた。
「ん?先輩?机に頭突きしてどうしたんだ?…先輩?」
イガレスが近づくと寝息が聞こえてきた。
「寝てる?1杯だけしか飲んでないんだぞ?そう言えば先輩は毒を急速に分解できるから毒による影響を受けにくいみたいな事言ってたけど、もしかしてアルコールを急速に分解したせいでこうなったのか!?先輩の弱点はアルコールなのか。酒飲んだの初めてみたいだったし先輩も知らなかったんだろうな。悪い事したな。」
イガレスはメイを部屋まで運んで行った。
「ここまで運んで来たのに起きる気配が無いな。ふぁ…俺も寝よう。って先輩、布団はちゃんと被らないと風邪をひくぞ。」
イガレスはメイに布団を被せようと手を伸ばすと、メイが突然腕を引っ張りイガレスを布団に引きずり込んだ。
「え!先輩!?起きてるのか!?…寝てるな。先輩は寝る時に人形とか抱いて寝るタイプか?いや、そんな事はどうでもいい。先輩!離してくれー!」
イガレスが暴れていると、メイは逃さまいとし、腕の力を強めた。
「イダだだだだ!骨がミシミシ言ってるって!ぎゃあああ!」
しばらくして腕の力が緩んだ時にはイガレスの抵抗する気力はなくなっていた。
「…まさか、こんな事になるなんて。先輩に酒を飲ませるのはやめておこう。介抱する人間が死ぬ。」
そう呟いたイガレスは諦めてそのまま寝ることにした。




