360話 目が回る〜
359話にジューンという大会にエントリーした際の偽名を追記しました。
1試合目が終わった後、イガレスは控え室を訪れた。
「先輩、大丈夫だったのか?」
「関係者以外立ち入り禁止なんですけど。」
「バレなきゃいいんだよ。で、ケガは大丈夫か?」
「問題ありません。1番困ったのは彼らの攻撃が弱すぎてまったく痛くなかった所ですよ。あんなにやられてケガ1つ無いのは不自然なのでケガするように頑張りましたね。」
「変なベクトルに努力してるな…」
「鉄の棍棒で殴るくらいしてくれないと痛くないんですよね。」
「あそこまでやられるフリをしなくてもいいと思うぞ。」
「分かりました。もう少し上手くやります。」
「じゃ、見つかる前に俺は行くよ。」
2試合目以降はバトルロイヤルを勝ち残った挑戦者VS闘技場が誇る最強の選手4人との1VS1らしい。
実況の選手紹介に合わせてメイは入場する。
「バトルロイヤルを勝ち残った挑戦者と闘技場の猛者4人とのタイマンバトル!まず入場するのはバトルロイヤルに勝ち残った少女ジューンだ!この小さな身体にどんな力が眠っているのか!ワクワクが止まりません!」
大穴を狙ってメイに賭けた人達から歓声が飛ぶ。
数は多くないが、その中にイガレスの声が混じっていたのをメイは聞き逃さなかった。
「あの人は何やってるんですか…」
「続いて入場してくるのは我らが力の帝王!バイザスだ!当闘技場に何度も足を運んでいらっしゃる皆様なら説明はいらないでしょう!彼にかかればどのような小細工も真正面からぶち破る怪力の持ち主!挑戦者との戦いではどのように力を見せつけてくれるのか!目を離せません!」
舞台に立ったバイザスは相手を観察する。
先程の試合は8人の男を倒したが、結局は漁夫の利を得ただけだと考えたバイザスは負けるはずがないと自信をみなぎらせる。
「おい、俺は女子ども相手でも手加減しねえぞ。」
「こんなか弱い女の子に本気を出すなんて大人気ないですね。もっと油断してくれてもいいのに。」
「か弱い女が闘技場なんかに来るかよ。」
「フフ、正々堂々勝負しましょうね。」
そこで会話は途切れ、ゴングがなった。
バイザスは真正面から飛びかかる。
脇から逃げようとしても捕まえられるように研究されたタックルをメイも正面から受け止めた。
「やるな!だが、軽い!」
メイの腕を逆に掴み、めちゃくちゃに振り回す。
メイがどれだけ小柄であっても普通振り回すことなどできない。
だが、それをできるだけの膂力は力の帝王の名は伊達ではないと言っているようでもあった。
振り回した後は地面に叩きつけるように投げ捨てる。
メイは振り回された影響で目を回して上手く立てないようだ。
「ケガをしているワケじゃないからなかなか治らない…」
フラフラしているメイを見てチャンスだと思ったバイザスは攻撃をしようとする。
しかし、メイが踏ん張ろうと足に力を入れた瞬間地面がヒビ割れ、距離感が分からず適当に振るった拳の風圧を受け、バイザスは思った。
(あれ?もしかしてめちゃくちゃ強いのでは?)と
だが、バイザスも闘技場でスター選手と称されるほど人生を掛けてきた男であり、帝王と謳われるプライドから降参はありえない。
その結果、手加減ができなくなったメイの一撃を受けてノックアウトされたのだった。
しかし、メイの一撃を受けて気絶だけで済んだ彼はさすがスター選手といった所なのではないだろうか。




