356話 激写
「聖神、アレはどういう事ですか。」
「皇太子の事か。帝国にはワシの信者や、教会が無いのじゃ。だから、帝国での情報収集は難しい。ソナタも驚いたかもしれぬが、ワシもあんな事になっているとは予想もしていなかった。」
「人間が魔族化するなんて、ありえるのでしょうか。」
「いくつかやり方はあるが、複雑な儀式がいらない方法は2つじゃ。1つ目は自身の身体にある聖属性のエネルギーを魔属性のエネルギーに置き換えるやり方じゃ。2つ目はやり方は1度死にアンデッドになってから魔族化するという方法。どちらも自我を失ったり魂が消滅する可能性のある方法じゃ。どちらの方法を使ったかは知らぬが、あの者は賭けに勝ったのじゃろう。1つ確実に言える事はあの者はワシの眷属ではなくなっておるという事じゃ。」
「どうすれば彼が魔族になったと証明できるでしょうか?」
「写真機を使えば良い。民衆に広まっていないから知らないかもしれぬが、帝国貴族の間では写真機を持つ事が一種のステータスになっておるのじゃ。」
「写真機ですか。確かにそれなら証拠になりますね。」
「うむ、今回はこれで時間切れじゃな。何か疑問に思った事があればまた聞きに来ればよい。」
「ありがとうございます。」
起床し準備を整えると、魔道具屋に向かい写真機を購入した。
「それを買ってどうするんだ?」
「察しが悪いですね。これで皇太子が魔族であると言う証拠を撮るんですよ。」
「なるほど。でも、どうやって?」
「皇太子は魔道具を使って魔力を制御しています。それならその魔道具を狙えばいいだけの事です。魔族の本来の姿は角があったり肌の色が違ったり、人間とかなり違う容姿をしています。その写真を撮る事が出来れば明確な証拠として提示する事ができます。」
「バレたらダメなんだろ?」
「魔力を制御できないような人にバレる訳ありません。でも、写真機を買ったせいで財布がスッカラカンです。」
「城からなんか盗むか?俺の部屋にある物なら高級品の物も多いし、売られても困らないぞ。」
「最悪それで行きましょう。」
メイ達は再び城に侵入し、皇太子が1人になる所を待つ。
「今は1人ですね。部屋の周りにも人がいないので、邪魔される事もありません。」
メイは皇太子の腰に付けてある魔道具を重力を操作して落とした。
その際に自然に落ちたように見せるために金具を変形させておくのも忘れない。
突然自分の魔力を抑える事が出来なくなった皇太子は驚きながらも苦しむ。
「グアアア!魔道具はどこだ!」
皇太子の額から角が生え、肌は土気色になっていく。
物陰から見張っているメイはその瞬間を写真機で撮り、引き上げる。
「これで証拠は十分ですね。皇太子の顔の魔族が写っている。それだけでも十分な驚きを与える事ができます。」
「魔族ってあんな感じになるんだな。」
「魔族だけが特別おかしい訳ではありません。同じ人類種でもエルフやドワーフも人とは違うでしょう?」
「確かにな。」
「次はあなたの最も信頼できる知り合いに会いに行きましょう。ここからは協力者が必要です。」




