355話 気になる気配
メイ達は騒ぎが収まった事を確認し城に侵入した。
「王城と比べると装飾が簡素ですね。」
「そりゃ、文化の違いってヤツだよ。王国みたいにゴテゴテに飾り付けるよりも帝国は実用的な美を大切にするんだ。」
「ふむ、隣国なのに考え方が違うのは面白いですね。」
「それでどこに行くんだ?」
「実はある気配を察知しているので、そちらに行きます。」
「ある気配?」
「帝国のヘイミュート侵攻の時に察知した気配です。コレが何の気配なのか確認しておきます。」
メイは移動し、気配の人物を探る。
「やはり、人間ではありませんでしたね。」
「あの人の事か?普通の人間に見えるけどな。」
「あの人の事を知っていますか?」
「詳しくは知らないけど、兄貴の側近の1人だったはずだ。」
「あの人の正体は悪魔ですね。暴走しないように完全な契約がなされていますね。しかし、伝わっている悪魔召喚の魔法は欠陥があったはず。誰が教えたのでしょうね。」
「悪魔…そんな物に手を出しているなんて…」
「もう1つ気になる気配があります。モヤがかかっているような不可解な気配なんですけど、魔道具を使っているのでしょうか。」
「今度こそ魔族か?」
「直接見てみなければ分かりませんが、その可能性は高いと思います。」
その気配の持ち主は悪魔のいた部屋から近い部屋の中にいた。
「この部屋って兄貴の部屋じゃないか。何があったんだ。」
「様子を伺ってみましょう。」
部屋の様子を伺うと、気配は1つだけしかなく、中には皇太子1人だけだった。
「皇太子は魔族化しているようです。自力で魔力を抑える事が出来ないから魔道具を使って抑え込んでいるのでしょう。」
「そんな…俺はどうすればいいんだ。」
「人間の魔族化とは、 普通そんな事をすれば死ぬはずなんですが、よっぽど運が良かったのでしょうか?いや、今はそんな事どうでもいいですね。魔族との繋がりを確認できたので一旦引き上げましょう。」
「…」
メイはショックを受け呆然としているイガレスを抱えてその場を後にした。
「後は具体的な証拠が欲しいですね。どうにかできないでしょうか?」
「…」
「いつまで落ち込んでいるんですか。あなたにはまだすべき事があるでしょう。」
「俺は…心のどこかで兄貴が誰かに強要されているんじゃないかって思ってた。でも、本当は誰にも強要されていないどころか率先して魔族に協力しようとしていた。何でだよ。俺も父上も立派な皇帝になる事を願っていたのに。」
「落ち着きなさい。起きてしまった事はもうどうしようもありません。あなたがどうしたいかです。」
「俺は…兄貴を倒す。それが家族としての責任だ。」
「そうですか。後悔の無いようにしなさい。あなたがどんな選択をとろうとも私はあなたを非難しません。」
「ありがとう先輩。俺も心が決まった。」




