351話 偵察
「何事も無く帝都に着いたな。」
「ここで疑われていたら調査どころの話ではないです。というか、これが普通なんですよ。」
「それもそうか。で、どうするんだ?」
「とりあえず、宿でもとりましょうか。何日も歩き詰めで疲れたでしょう。」
「確かに、なんで先輩はあまり疲れてなさそうなんだ?」
「体力には自信がありますから。」
「そういう問題かな?」
「そういう問題です。という訳で行きますよ。」
「今回は普通のグレードなんだな。」
「あえて大通りに面した宿に泊まる事にします。犯罪者は少しでも人の目に触れない場所に行きたがるものですから。」
「こんなに人通りが多いなら出入りする所も見られそうだしな。」
「建物に出入りする人を観察する人はいませんが、何かやましい事がある人は誰かが見ているのではないかと思ってしまうのですよ。」
「そういう経験ある感じ?」
「少しだけ」
「あるんかい!」
「冗談ですよ。」
「その冗談はちょっとキツいよ...」
宿で2部屋借りる事ができ、荷物を置いた後メイの部屋に集まる。
「私は帝城を偵察しに行ってきます。あなたは休憩していてください。」
「俺も行く。俺が世話になった人がどうなったのか知りたいんだ。」
「偵察と言っても中に入りませんけどね。」
「そうなのか?」
「まずは周囲を観察しないといけませんし。」
「でも、帝城の周りは貴族街だから平民が歩いてたら捕まるぜ。」
「それくらい大丈夫ですよ。私が騎士ごときに捕まると思いますか?」
「うーん、先輩は変な所でドジるって聞いたけど…」
「それ誰から聞いたんですか。」
「えーと、先輩の担任の...ダニエルって人とニコラスって人、後はカレンさんだな。」
「あの人達は...カレンはともかく、ダニエル先生とニコラス先生の前でドジった事ないと思うんですけど。帰ったら問い詰める事にします。事の次第によっては許さない。」
「言わない方が良かったかも...」
「とにかく、私は大丈夫ですから。それじゃあ、行ってきます。」
「俺は大人しく待ってる事にするよ。」
メイは貴族街に入り、帝城に近づく。
時間は夕方の6時頃で、辺りは薄暗くなっていた。
「電灯...じゃなかった、魔灯が点き始めましたね。さすが貴族街、大通りは昼間と同じくらい明るいですね。さて、これが帝城ですか。かなり堅牢な造りですね。」
帝城は壁が高く、結界も簡単には破壊できないほど丈夫に作られていた。
「これを壊すには骨が折れそうですね。どこかに綻びがあれば侵入しやすいんですけど。確か、イガレスが言っていましたね。この結界は古代の遺物、アーティファクトによって張られていると。これはアーティファクトを破壊するのが1番楽な気がしますね。」
メイは簡単に入り込む事が出来ないと悟ると、一旦引き上げる事にした。




