350話 旅の目的
「今回の目的を確認しましょうか。」
「先輩は兄上が魔族と繋がっているか調べるため。俺は帝国の中に協力者を作るため。」
「そうですね。期間は一月半です。まずは帝都で証拠を集めます。そして、証拠を見つける事が出来れば地方の領主達に接触します。」
「一月半で出来るか?」
「調べるだけなら何とかなります。そこからはアナタの仕事です。」
「難しい事を言ってくれるね。」
「帝国にはこの偽造したギルド証を使います。手紙を届ける依頼を受けたという体で国境を通ります。」
「俺の分もあるのか。」
「私たちはパーティを組んでいるという設定です。」
「なるほど、確かにそれなら怪しまれなさそうだ。」
「国境の関所が見えてきましたね。」
メイ達は列に並び、順番を待つ。
「結構長いな。」
「色々な人が王国から帝国に行くんですね。」
それから1時間後
「遅い!あれから半分くらいしか進んでないじゃないか!」
イガレスが文句を言っていると、前に並んでいた商人が話しかけてきた。
「なんだい兄ちゃん達、知らないのか?少し前から国境警備が厳しくなってね。出るのも入るのも時間がかかるようになったんだ。」
「それならどうして帝国に行くんですか?」
「俺は帝国じゃなくて都市国家郡に行くのさ。でも、陸路だと帝国を通らないと行けないから、こうして列に並ばないといけないんだ。」
「船を使えばいいのでは?」
「船なんて俺みたいな行商人が使える訳ないだろ。しかも港に泊まる度に船倉をチェックされるらしい。そんな風に足止めされたら馬車で移動するのと対して変わらないよ。」
「そんな事になっていたとは...」
「どうしてそんな事するんだろう?国内に持ち込まれると困る物があるという事か?」
「ともかく、我慢するしかない。」
「教えていただきありがとうございます。」
「いいってことよ。俺も話し相手がいなくて退屈してた所なんだ。」
関所を抜けた所で男とは別れ、帝都を目指す。
「結構簡単に通れて良かったな。」
「この手紙も子どもが家族に向けて書いたという設定の物ですから。暗号が入ってる訳でもない手紙を怪しむ人なんていませんよ。」
「それもそうか。」
「ここから帝都まで歩いて3日ほどの距離ですね。途中の街で休憩しながら行くとしましょう。」
「急がくなくていいのか?」
「急ぐのであればイガレスを抱えて全速力で移動しますけど。」
「それだけは勘弁してください。」
「そうでないなら少し急いだとしても変わりませんよ。」
3日後何事もなく、帝都に到着したメイ達だった。




