349話 胸のつかえ
街へ向かって歩いていると、魔物の群れと遭遇した。
「あれは角ウサギの群れだ。角ウサギは群れないはずなのに何があったんだ?」
「落ち着け、刺激しなければどこかへ行くはずだ。」
「なんかすごく目が合うんだけど...」
「バカ!目を合わせるな!マズイ、角ウサギが地面を叩いているぞ。あれは戦いの合図だ。」
「はぁ、後ろに下がってください。」
「大丈夫なのか?」
「この程度が対処できなくて貴族の護衛は勤まりません。」
メイは角ウサギを睨みつけ威圧する。
そうすると、野生の勘からか勝てないと悟った角ウサギ達はどこかへ去っていった。
「角ウサギが逃げていった。はぁー、良かった。角ウサギって言っても武器や防具が無ければ大怪我する所だったから。」
「角ウサギが群れを作っていたという事はギルドに報告しておいた方がいいですね。」
「街にやっと着いたな。なんかいつよりも遠く感じたぜ。」
「メイさん、ついてきてくれてありがとう。君だけならもっと早く街に到着いただろうに。でも、そのおかげで俺たちは危険な目に遭わずにすんだ。感謝してもしきれないよ。」
「危険な目に遭わなかったのはただの偶然です。それに、私1人だと街への出入りが面倒なので、自分のためです。」
「そうか。それとなんだけどさ…その、小さい時君を仲間外れにして本当にすまなかった!」
「急にどうしたんですか。」
「俺たちずっと謝りたかったんだ。何を今さらって思ってるかもしれないし、ただの自己満足かもしれない。それでも、これが俺たちのケジメなんだ。」
ソルが意を決してそう言うと次々に頭を下げられる。
「別に気にしていませんよ。あの頃は私も他の人と接する気はありませんでしたから、仲間外れにされても関係なかったですし。」
「それじゃあ、俺たちが納得いかないんだ。1発殴られるくらいの事はしたと思ってるんだ。」
メイはおもむろに壁に拳を放つ。
石壁にヒビが入り、砕けるのを見せて一言
「1発殴るですか。」
「.....死を覚悟すべきなのか…」
なぜか全員が悲壮な覚悟を決めてしまった。
「冗談ですよ。本当に私は気にしていません。それでも、気が済まないと言うなら、私の家族に親切にしてあげてください。私の望みはそれだけです。」
「分かった。メイさんへの恩返しだと思う事にするよ。」
「そうしてください。それでは、また会いましょう。」
手を振り、去っていくメイを見送るソル達はスッキリとした顔をしていた。
「先輩遅いよ。何してたんだよ。」
「昔馴染みと仲良くしてました。」
「何かいい事があったみたいだね。こっちでメモ通り準備は整えておいたから、早速出発しようか。」
「はい。今は気分がいいですから。最速で行くとしましょう。」
「それだけは勘弁してくれ...」




