348話 父親
「メイは今日で帰ってしまうのか。パパは悲しいよ。」
「うん、近くの街に待たせている人がいるから。」
「それは女の子だよな?」
「男だけど?」
「ナ、ナニィ!彼氏か?彼氏じゃないよな?」
「彼氏じゃないよ。学園の後輩なんだけ。」
「それならいいが。いいか、メイはまだ子どもなんだから、くれぐれも...くれぐれも!節度を守った交友関係をだな!」
「もう、心配しすぎよ。メイはこんなに可愛いんだから彼氏の1人や2人いてもおかしくないわよ。ね?」
「ダメだダメだ!俺の目が黒い内はメイに彼氏など認めないぞ!」
「そんな事言ってたら婚期逃しちゃうわよ。孫の顔が見れなくてもいいの?」
「ぐぬぬ、孫の顔は見たい。でも、彼氏なんて嫌だ!」
「ワガママ言わないの。」
「グスン、メイ俺を捨てないでくれー!」
「捨てないから、抱きついてくるのやめて」
「メイが冷たい!」
「そんな事されたら誰だって冷たくなるわよ。」
「俺に味方はいないのか!」
何とか2人でなだめ、帰ろうとすると馬車が近くの街に行くために準備されていた。
「よう、俺の事覚えてるか?」
「.....ソルでしたっけ?」
「正解、よく覚えてたな。」
「私を仲間外れにした張本人じゃないですか」
「それも覚えてたか...あの時はすまなかったな。」
「別に気にしてませんよ。それで何か用ですか?」
「その荷物から見るに村から出るんだろ?俺らは近くの街に行くからそれまで一緒に行かないか?一人旅は何かと不便だろうし。」
「そうですね。じゃあお言葉に甘えることにします。」
しばらくすると準備を終えた馬車は出発する。
メイが歩いてついて行っていると
「馬車に乗ってもいいんだぜ?」
「歩くのは嫌いではないので、大丈夫ですよ。」
「そっか、そう言えば王立学園に行ってるんだったよな。どんな事するんだ?」
「勉強したり、訓練したり、色々ですよ。」
「強いのか?」
「そこそこと言っておきましょう。」
「じゃあ、魔物や野盗が出たら頼むな。」
「はい。任せてもらっても大丈夫です。」
街までの途中、休憩をしているとソルは他の同行者達に引っ張られて行った。
「おい、あの子ってメイって子だよな?よく声を掛けられたな。」
「なんと言うか、これを逃したら謝る機会がもう来ない気がしたんだ。」
「それにしても、昔から思ってたけど、綺麗な顔してるよな。」
「昔とあまり変わってないように見えるんだが、なんでだ?」
「身長とかじゃないか?」
「さすがにそれはないだろ。あの子が村を出たのは7歳とかの頃だぞ?成長してるだろ。」
「雰囲気とか?」
「「それだ!」」
「雰囲気がほとんど変わってないんだ。」
「昔よりも柔らかくなったような気がするけどな。」
「でもさ、ちょっと気まずいよな。」
「そりゃあな。俺たちあの子をハブってたんだから罪悪感があって当然だよな。」
「本人は気にしてないみたいだけど、向こうからしたら今さら何言ってのかって事なのかもな。」
「あの」
メイが声をかけるとソル達はビクッと身体を震わせ、心底驚いた様子だった。
「ど、どうした?」
「馬も十分休憩できたようですし、出発しませんか?」
「そ、そうだな。じゃあ、みんな出発するぞ。」
少し離れた場所で話していたとしてもメイは当然聞こえていた。
少しのわだかまりをどうするか考え始めるメイだった。




