346話 里帰り
手紙を読んだメイは実家に帰って行っていた。
「それで、どうしてイガレスがいるんですか。」
「帝国に行くんでしょう?だったら案内役がいると思って。」
「来なくていいんですけど。殿下に頼んで適当な案内役を送ってもらう予定だったのに。どうしてアナタが来たのか…どんな取引をしたんですか。」
「取引をした前提で話をしないで欲しいな。」
「していないんですか。」
「したけど」
「ほらやっぱり。」
「帝国で協力者を作りたいって話をしたんだ。護衛は先輩がいるからね。」
「はあ、今から不安しかないんですが。」
イガレスと途中の街で別れ、実家に戻るメイ。
「ただいま」
「あら、メイじゃない。どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ。弟が生まれたって突然聞かされた私の身にもなってほしいよ。」
「ジービスに会いに来たのね。こっちで寝ているわ。」
「ジービスって名前なのね。」
「手紙に書いたはずなんだけど、読んでいないの?」
「...途中までしか読んでないかも」
「そう、寝てるから静かにね。」
「この子は...」
「どうかした?」
「いや、何でもない...」
「?それよりもどれくらいここにいるつもりなの?」
「今日を含めて3日だよ。これからやる事があって、これ以上時間を掛けられないんだ。」
「そうなの。いつでも帰って来ていいんだからね。」
「うん。ありがとう」
「それにしてもお父さん帰ってくるの遅いわね。ちょっと見てくるわね。ジービスを見ててね。」
「分かった。私に任せて。」
ジービスと2人きりになるとメイは話し出した。
「寝たフリは終わりです。起きているのでしょう。」
『なんだ、バレてるのか。』
「ひと目で分かりましたよ。アナタが転生者である事が。」
『アンタ、何者だ?』
「アナタと同類だと言っておきましょう。もし、私の家族に手を出せば、子どもだろうと容赦しません。分かりましたか?」
『生後1週間くらいしか経ってないが、あの人たちは良い人なんだろうな。俺はそんな人に危害を加えるような事はしない。それに俺は念話と読心ができるだけの赤ん坊さ。心配しなくても危害なんて加えられない。』
「そうですか。少し質問なんですけど、いいですか?」
『なんでも言ってくれ。』
「どうしてそんなにハスキーボイスなんですか?」
『気になる所そこかよ…前世でこういう声だったからだろ。知らんけど』
「まあ、そんなに気になってはいなかったんですけど。」
『じゃあ聞くなよ!読心の魔法が自動で発動するせいで誰かが近づくと勝手に起きるようになっちまった。赤ん坊の頃なんて寝ないと成長出来ないんだけどな。』
「それは困りましたね。起きている時にしか魔法が使えないようにするために少し制限を課しましょうか。」
『そんな事できるのか!』
「ゆっくりおやすみ」
『急に眠気が...Zzzzz…』
「ヨシ、後はお母さん達を待つだけですね。」




